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ざわつくバスケ部
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「あいつは、何なの……?」
思わず漏れるひとり言。シックスマンと呼ばれるイケメン幽霊は、ボールをドリブルしながら高速で壁へと溶けていった。
見ようによっては笑える光景に見えなくもないけど、彼のドリブルはそれを許さないというか、向き合った者にちょっとした恐怖を感じさせるぐらいの迫力があった。
「なんなの、あいつ……」
二度目のつぶやきが漏れると、それに三橋が反応する。
「どうやら、彼がくだんの幽霊みたいだね」
「うん。でも、急に出てきてドリブルをしだしたと思ったらそのまま消えて、本当に意味が分からない」
わたしは率直な感想を漏らす。
幽霊が化けて出るのであれば、もっと何か脅すとか怨むとか、攻撃しないにしても何かを訴えてくるぐらいのことはしてくるはずだ。
だけど、あの幽霊は言ってみれば現役選手のように愚直というか、サムライみたいな真剣さでバスケをしているように見えた。なんて言うか、怨霊でもないし何か主張するわけでもないから、幽霊の中でも相当な変人に見えた。
彼の姿は霊視の使えるわたしでなくても見えたようで、他のバスケ部員たちが「今の見たか?」とか「あれってガチで幽霊なの?」といくらか興奮気味に喋っていた。
どちらかと言えば、道端で偶然オオクワガタを見つけたような、興奮気味の口調に見えた。男子ってやっぱりバカだなって思う。
それはそれとして、わたしにはもう一つ気になっていることがあった。
顧問の安東先生が、明らかに動揺した目で幽霊の消えていった壁を眺めていた。デビルでもお化けは苦手っていうこともあるのだろうか?
いや、わたしのカンが「それ以上の何かがある」と言っている。現に部活に集中していないと即雷を落とすタイプの安東先生が我を忘れて何も言わないでいる。
「安東先生は何か知っているのかもしれないね」
わたしの表情から読み取ったのか、三橋が小声で囁く。さすが鋭いというか、よく見てるなって感心する。
わたし達の視線を感じ取ったのか、さっきまでフリーズしていた安東先生がハッとしたように我に返る。
「おい、あんな変な奴に構っていないで、さっさと練習するぞ!」
明らかに壁をすり抜けた男子へのリアクションがそんなのでいいのかと思ったけど、体育会のさがなのか、部員たちは何事も無かったかのように練習へと戻っていく。
結局それからシックスマンが練習中に現れることは無かった。
思わず漏れるひとり言。シックスマンと呼ばれるイケメン幽霊は、ボールをドリブルしながら高速で壁へと溶けていった。
見ようによっては笑える光景に見えなくもないけど、彼のドリブルはそれを許さないというか、向き合った者にちょっとした恐怖を感じさせるぐらいの迫力があった。
「なんなの、あいつ……」
二度目のつぶやきが漏れると、それに三橋が反応する。
「どうやら、彼がくだんの幽霊みたいだね」
「うん。でも、急に出てきてドリブルをしだしたと思ったらそのまま消えて、本当に意味が分からない」
わたしは率直な感想を漏らす。
幽霊が化けて出るのであれば、もっと何か脅すとか怨むとか、攻撃しないにしても何かを訴えてくるぐらいのことはしてくるはずだ。
だけど、あの幽霊は言ってみれば現役選手のように愚直というか、サムライみたいな真剣さでバスケをしているように見えた。なんて言うか、怨霊でもないし何か主張するわけでもないから、幽霊の中でも相当な変人に見えた。
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どちらかと言えば、道端で偶然オオクワガタを見つけたような、興奮気味の口調に見えた。男子ってやっぱりバカだなって思う。
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