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幽霊バスケ部員の正体
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「安東先生、ちょっとお話よろしいでしょうか?」
バスケ部の練習が終わった後、わたしと三橋は帰り支度をする安東先生に声をかけた。
「なんだ、人が帰ろうって時に」
大きな体をした安東先生はわたし達に怪訝な目を向ける。まあ、怪しむ気持ちも十分に分かるんだけど。対応が塩ということもあって、わたしは内心ビビっていた。
だけど、三橋はそうでもないみたいで、割と堂々とした態度で安東先生に接している。
「お疲れのところすいません。ただ、先生にどうしても訊いておきたいことがありまして」
「ああ、それは何だ?」
「今日の練習で出てきた、他校か何かのバスケ部員です」
あの瞬間はバスケ部の全員が見ていたので、さすがにシラを切り通すことはできない。先生の目の奥が軽くゆがむ。
「あいつか。本当に困った奴だよ。どこの学校かは知らんが、あんな風にウチの練習に忍び込んでいるなんてな」
そう言ってため息をつく先生に、三橋はさらに質問していく。
「そうですね。ただ、先生のリアクションを見ていて思ったのですが、あの急に現れた男子生徒……もしかしたら、先生も知っているのではないですか?」
三橋がそう言うと、辺りに沈黙が流れる。それが答えのようなものだった。
「答える前に、なぜそう思った?」
「あの男子が出てきた時、先生のリアクションは信じられないものを見たという印象を受けました。まるで幽霊でも見たようなと言いますか、いてはいけない何かからバスケ部員の注意を逸らそうとしているようにも見えました」
「……まったく、カンのいい生徒がいたもんだよ」
安東先生が観念したかのようにため息をつく。
「まあ、集団で見た幻覚だとは思うが。だから俺がこれから話すことも暑さで頭がおかしくなった上でのデタラメだ。いいか?」
そう前置きして安東先生は続ける。
「あいつはおそらく、ここの生徒だ」
「ということは、やっぱりどこかのクラスにいるということですか?」
「いや、それはない。少なくとも、今の学校にはな」
「……どういうことでしょう?」
三橋がさらに訊くと、先生が遠くを見つめながら答える。
「あいつの名前は杉森慎二。昔の、俺の同級生だ」
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だけど、三橋はそうでもないみたいで、割と堂々とした態度で安東先生に接している。
「お疲れのところすいません。ただ、先生にどうしても訊いておきたいことがありまして」
「ああ、それは何だ?」
「今日の練習で出てきた、他校か何かのバスケ部員です」
あの瞬間はバスケ部の全員が見ていたので、さすがにシラを切り通すことはできない。先生の目の奥が軽くゆがむ。
「あいつか。本当に困った奴だよ。どこの学校かは知らんが、あんな風にウチの練習に忍び込んでいるなんてな」
そう言ってため息をつく先生に、三橋はさらに質問していく。
「そうですね。ただ、先生のリアクションを見ていて思ったのですが、あの急に現れた男子生徒……もしかしたら、先生も知っているのではないですか?」
三橋がそう言うと、辺りに沈黙が流れる。それが答えのようなものだった。
「答える前に、なぜそう思った?」
「あの男子が出てきた時、先生のリアクションは信じられないものを見たという印象を受けました。まるで幽霊でも見たようなと言いますか、いてはいけない何かからバスケ部員の注意を逸らそうとしているようにも見えました」
「……まったく、カンのいい生徒がいたもんだよ」
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「まあ、集団で見た幻覚だとは思うが。だから俺がこれから話すことも暑さで頭がおかしくなった上でのデタラメだ。いいか?」
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「ということは、やっぱりどこかのクラスにいるということですか?」
「いや、それはない。少なくとも、今の学校にはな」
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三橋がさらに訊くと、先生が遠くを見つめながら答える。
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