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策士の薄笑い
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わたしは三橋と一緒に帰りながら、トイレの花子さんこと森本さんの話をした。それと同時に、彼女を助けたい話も。
「そうか。何年もの間片思いで居続けるっていうのもなかなか大変だね」
「でしょう? だからわたしは彼女を助けてあげたいの」
「でも、森本さんは女子トイレから出られないんだよね?」
「そうなの。それでどうやって二人を会わせようか考えているんだけど……」
「難しいかもしれないね。今のご時世だと、男性教員が女子トイレに入ったというだけで大騒ぎされる可能性があるから」
「そうなんだよね。その問題があるんだよね」
三橋の言う通り、織田先生を森本さんに会わせるためには大きな障害がある。
まず、男性は一般的に女子トイレには入れない。先生であれば、余計にそうだ。この問題が大きく立ちはだかる。
何がなんでも森本さんを助けるとは決めたものの、実際問題何をすれば織田先生を彼女に引き合わせられるのか分からない。
正直なところ、織田先生を女子トイレに連れて行くのは相当にハードルが高い。当時がどうだったか知らないけど、今は教師の性暴力がどうこうとかすごく厳しい時代だ。
きっと教師たちの中でそういう緊張感も高まっていて、うかつに女子トイレに織田先生が入るというのは考えにくいところがある。
そうなるとどうすればいいのか。妙案を思いつかないので三橋の頭脳に頼ろうと思った。
だけど、今回は三橋もお手上げなのか、難しい顔をしている。しばらくその表情を見守っていると、三橋が「ふっ」と笑いはじめた。
「どうしたの」
「いや、ちょっと自分で思いついた案に笑ってしまってね」
そう言って三橋は悪そうな笑いを浮かべながら夕日を見つめていた。こいつの性格からして、ろくでもない悪だくみでも思いついたに違いない。
「ちょっとばかり強引だけど、一つ方法があるよ」
「本当に?」
「うん。まあ、ただ失敗したら大目玉を食らうだろうけどね」
なんだか嫌な予感しかしない気もするけど、三橋的には何か解決策が浮かんだようだった。繰り返し、本当に嫌な予感しかしないんだけど。
「まあ、上手くいけば何でもいいよ」
三橋がどんな手を使うつもりかは知らないけど、わたしも腹を決めることにした。
幽霊と単独で交渉して来いとか無茶ブリをしてきただけに、今さら何があったところで驚かない。きっとろくでもない手を使おうとしているんだろうけど、わたしだって森本さんを助けるためには何だってするって決めたんだ。ここで覚悟を決めないと。
でも、一人で作戦をまとめている三橋はずっと半笑いだった。その笑顔がどこか不気味なんだけど、本当に大丈夫なんだろうか。
なんだか不安になってきたけど、今は三橋にゆだねるしかない。
待っていてよ、森本さん。あなたのことは、絶対にわたしが助けるからね。
「そうか。何年もの間片思いで居続けるっていうのもなかなか大変だね」
「でしょう? だからわたしは彼女を助けてあげたいの」
「でも、森本さんは女子トイレから出られないんだよね?」
「そうなの。それでどうやって二人を会わせようか考えているんだけど……」
「難しいかもしれないね。今のご時世だと、男性教員が女子トイレに入ったというだけで大騒ぎされる可能性があるから」
「そうなんだよね。その問題があるんだよね」
三橋の言う通り、織田先生を森本さんに会わせるためには大きな障害がある。
まず、男性は一般的に女子トイレには入れない。先生であれば、余計にそうだ。この問題が大きく立ちはだかる。
何がなんでも森本さんを助けるとは決めたものの、実際問題何をすれば織田先生を彼女に引き合わせられるのか分からない。
正直なところ、織田先生を女子トイレに連れて行くのは相当にハードルが高い。当時がどうだったか知らないけど、今は教師の性暴力がどうこうとかすごく厳しい時代だ。
きっと教師たちの中でそういう緊張感も高まっていて、うかつに女子トイレに織田先生が入るというのは考えにくいところがある。
そうなるとどうすればいいのか。妙案を思いつかないので三橋の頭脳に頼ろうと思った。
だけど、今回は三橋もお手上げなのか、難しい顔をしている。しばらくその表情を見守っていると、三橋が「ふっ」と笑いはじめた。
「どうしたの」
「いや、ちょっと自分で思いついた案に笑ってしまってね」
そう言って三橋は悪そうな笑いを浮かべながら夕日を見つめていた。こいつの性格からして、ろくでもない悪だくみでも思いついたに違いない。
「ちょっとばかり強引だけど、一つ方法があるよ」
「本当に?」
「うん。まあ、ただ失敗したら大目玉を食らうだろうけどね」
なんだか嫌な予感しかしない気もするけど、三橋的には何か解決策が浮かんだようだった。繰り返し、本当に嫌な予感しかしないんだけど。
「まあ、上手くいけば何でもいいよ」
三橋がどんな手を使うつもりかは知らないけど、わたしも腹を決めることにした。
幽霊と単独で交渉して来いとか無茶ブリをしてきただけに、今さら何があったところで驚かない。きっとろくでもない手を使おうとしているんだろうけど、わたしだって森本さんを助けるためには何だってするって決めたんだ。ここで覚悟を決めないと。
でも、一人で作戦をまとめている三橋はずっと半笑いだった。その笑顔がどこか不気味なんだけど、本当に大丈夫なんだろうか。
なんだか不安になってきたけど、今は三橋にゆだねるしかない。
待っていてよ、森本さん。あなたのことは、絶対にわたしが助けるからね。
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