~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A

文字の大きさ
32 / 87

32話

しおりを挟む
「というわけで無事に合格したよ!」

「ああ、そう」

 リビングで勉強をしていた杏奈さんにその報告をしたのだが、あまりにも反応が薄かった。

「Bランクなんですけど!?」

 探索者の8割が到達できずに終わるとされているBランク探索者の試験に合格したんですが。

「受かることが最初から分かりきっている試験に合格されたところで驚くことも何もないわよ」

「それはそうだけどさ。何か言葉をくれても良いじゃん」

 少しくらい労いをくれても良いと思います。3日でFからBは結構頑張ったんだからね。

「ああ、あの言葉が欲しかったのね。今からダンジョンに行きましょうか」

「そうじゃなくて!」

「準備は事前に済ませてあるからそのまま向かいましょうか」

 最初からダンジョンに行くことが目的だと察したけれど、もう全て手遅れだった。


 流石に試験を受けてきたことを配慮してか、既に攻略済みで近場にあったBランクダンジョンを選んでくれたけれど、そういう問題ではない。


 それから1週間後、

「これで10種類目ね」

「うん」

 遂にBランクダンジョンを累計で10種類攻略することに成功した。

 目標は20種類なのでようやく折り返し地点に付いたことになる。

「というわけでAランク昇格の試験を受けてみましょうか」

「え?」

 20種類攻略してからAランクに行くって聞いていたからてっきりそのタイミングでAランク昇格試験を受けるものだと思っていたんだけれど。

「何鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのよ。既に受験資格を得たでしょう?」

「Bランクダンジョン十種を攻略していることが資格だけどさ。杏奈さんのレベルは今いくつ?」

「47ね」

「Aランクの適正レベルは?」

「50以上」

「だからもう少しレベルを上げようよ」

 受験資格は確かに満たしているけど、レベルが足りないんですよ。50以上が目安だけど50でクリアできる人は合格者の1割くらいなんですよ。

「大丈夫。あなたの攻撃力とスピードはレベル50を優に超えているし、私はレベル47だけど実力は57レベル相当はあるから」

「だからその理論はさ……」

「それに、今までの昇格試験と違って死の危険は無いわ。だから受けるだけ得よ」

「Bランクは初回だけは無料だったけどさ、今回の試験はお金がかかるでしょ……」

「お金ならあるわ。10個のダンジョンを攻略してきたのよ?」

 杏奈さんは口座の残高を見せつけながら言った。

「確かに……」

 杏奈さんが見せてきた口座の残高は、1000万を軽く超えていた。



 3日後、俺たちはAランク昇格の試験を受けるべく、いつもの役所ではなく探索者管理本部にやってきていた。

「本当にやってきたよ……」

 俺はこれから行われる試験の事を想像し、憂鬱な気分になっていた。

「大丈夫よ。私たちなら受かるわ」

「自信満々で良いね……」

 一方の杏奈さんはAランクに受かることがさも確定事項であるかのような自信をお持ちである。

「そりゃあ私は強いもの。さっさと入るわよ」

 と言い切った杏奈さんに無理やり背中を押され、受付に向かった。

「はい、今日はどうされましたか?探索者カードの再発行でしょうか?」

「いえ、Aランク昇格試験を受けに来た卯月と如月です」

「え!?ああ、そうでしたか。では右手にあるトレーニングホールに向かってください」

 受付の人は杏奈さんが出した俺たちの身分証と予約が書かれているであろうPCの画面を何度も見返しながら案内してくれた。

「「分かりました」」

「それでは、頑張ってください」

 身分証を返してもらった後、俺たちはトレーニングホールに向かった。


「滅茶苦茶広い……」

 トレーニングホールは一切装飾の無い、真っ白な壁と床に囲まれた空間だったが、その分尋常じゃないほどに広かった。

 冗談抜きでサッカーグラウンド一つ分の広さはある気がする。

 ここなら本当に何でも出来るのではないか、そう思わせられるレベルだ。

「まあ、Aランク昇格試験だからこれくらいは無いと困るわよね」

「ああ、そうだな!二人の記念すべき試験の日なんだからな!!!!」

 杏奈さんの言葉に元気よく返した声は俺ではなく、後から聞こえてくる女性のものだった。

 振り返ると、黒髪ロングで長身の女性が両手を腰に当て、豪快に笑っていた。

「試験官の方ですか?」

「ああ!私は卯月麗奈、可愛い可愛い杏奈の姉だ!!!!」

 その女性の正体は、なんと杏奈さんのお姉さんだった。

「麗奈姉が試験官なの?」

「ああ!とは言っても如月の方だけだがな!流石に杏奈の試験官を務めるのは駄目だと言われた!」

「家族同士なのに許されるわけがないでしょう。馬鹿なの?」

 と杏奈さんは麗奈さんの発言に対してあきれ果てた表情で答えていた。

「馬鹿ではない!私は天才姉だ!」

 すると、麗奈さんは謎の発言と共に杏奈さんの正面に回り、力強く抱きしめていた。

「うぐっ……ぐぐぐぐ」

 杏奈さんの身長は別に低いわけでは無いのだが、麗奈さんは女子どころか男と比べても身長が高いため、杏奈さんの顔が麗奈さんの胸に抑え込まれており、息苦しそうにもがいていた。

「久々に会えて私はとても嬉しいぞ!」

 麗奈さんはその様子に一切気づいていないらしく、より一層抱きしめる力を強めているように見えた。

「あの……そのままだと杏奈さんが窒「で、飛鳥!私の可愛い妹に付き合ってくれていてありがとう!!!」

「うぐっ!!!!!!」

 杏奈さんが危険なので止めようとしたら、俺まで巻き込まれて同じく鼻と口を塞がれてしまった。

「いやあ、二人で頑張っているんだろう?半年足らずで二人ともAランク昇格試験を受けられるまでに成長するなんてすばらしいな!!!!」

 そしてテンションが上がっているのか、さらに抱きしめる力が強まった。『師走の先』のギルドマスターなだけあって、ちょっとやそっとではびくともしない。

「んんんんんんん!!!!」

 しかし、これをどうにかしなければ杏奈さんが危険なので、全力を振り絞って両手を引き剥がそうと力を入れる。

「ん?」

 力には自信があったのだが、それでも軽く腕を動かす程度だった。

 そしてこれだけ力を入れているのに麗奈さんは意図に気づく様子が無く、抱きしめる力を抑えることは無かった。

 しかし、刻一刻と杏奈さんのタイムリミットが迫っている。ずっと聞こえ続けていた杏奈さんのタップ音が徐々に小さくなってきたのだ。

 姉に抱きしめられて窒息死というなんとも馬鹿馬鹿しい死因で杏奈さんを死なせるわけにはいかない。

 そう思い一層力を強めるも、一切歯が立たない。

 万事休すかと思ったその時、

「卯月さん、そのままだと二人とも窒息してしまいますよ」

 と麗奈さんに声を掛ける男性の声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。 次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。 これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。 しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。 これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ
ファンタジー
毎日ドタバタ、でもちょっと幸せな日々。 家事を終えて、趣味のゲームをしていた主婦・麻衣のスマホに、ある日突然「スキル習得」の謎メッセージが届く!? 主婦のスキル習得ライフ、今日ものんびり始まります。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...