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第30話
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主に悠理を宥めた後、本格的に見学が始まった。
「まずはこちらです」
言われるがままに廊下を歩いていると、ガラス越しに研究者と思われる人がアスリート体系の男に何か器具を使用していた。
「あれはトレーニングで作用する筋肉の部位を測定する機械やな?」
「流石二宮さん。筋肉の事となると詳しいですね」
「うちもアレに似た機械を使ってるしな。分かって当然や。後、花でええんやで?」
「一応わが社の社員ですから最低限の礼儀は保っておかないと……」
「あんたの会社の社員である以前にウチはあんたの同級生や。気を使う必要はないで」
「そうですね。分かりました。花さん」
例の二宮さんのクラスでもそうだったが、筋肉というただ一つのワードだけで容易く友人を作りやがった。凄いなこの人。
「筋肉は世界を繋ぐ共通言語やからな」
この人、人の心読んでやがる……!?
「筋肉に対する観察眼を極めることが出来ればこんなこと造作もないで」
「さっすが花ちゃん!私の心読める?」
「花ちゃん大好きって思ってるんやろ?うちも環はんのこと大好きやで」
「凄い!大好き!!」
そう言って二人は抱き合っていた。
「多分筋肉関係なくお前の気持ちは読めるぞ」
「ほんとに!?」
小野田さんの感情は恐らく誰でもわかる。
にしても筋肉から人の感情を事細かに読み取る能力か。
はっ!その能力があれば何考えているか分からない加賀美の気持ちも読めるのでは?
「それは無理やな。筋肉に対する自制がかなり強いからな。一定の筋肉レベルに達していないと出来ない芸当だ」
「その程度で私を知ろうだなんて甘いですよ。晴さん」
「はあ。じゃあ次行こう」
諦めて次の所へ行こうと促した。
「ここってアスリートの研究に特化しているわけじゃねえんだな」
研究対象として研究員に調査されていたのはアスリートが一番多くはあったが、子供から老人、やせ型から太っている人まで様々な条件の人がいた。
「筋肉を強化するためには様々なサンプルが必要ですから」
それもそうだな。
「ここに集められている人たちってここの社員さんの親族なんやろ?」
「そうですね。社員の親族の中から筋肉を付けたいと考えている方々を一定数募ってこの実験は行われております」
上手く出来た仕組みだなあ。都会から離れた地に街を作り、そこに住まわせることで社員の効率アップを促し、教育を施すことで後進を育成。そして被験者を効率的に集めることが出来る。
会社にとっても社員にとっても有益な環境だ。
世界一だからこそ出来るって感じだな。
「相変わらず千佳ちゃんの会社凄いね!」
「ありがとうございます」
加賀美は小野田さんの頭を撫でながらそう言っていた。
「そうですね。今から各自好きなところを回ってみませんか?大体の案内は終わったことですし」
「社員の人に迷惑がかかったりはしないのか?」
「問題ありません。あらかじめそう伝えてありますので」
仕事が速いことで。
「じゃあ大丈夫だね!悠里君、行こう!」
早速悠理が小野田さんに連れていかれた。まあ小野田さんはこの会社に何度も来たことがあるようだし何か事件が起こるということも無いだろう。
「じゃあウチも黒須はんの所へ!」
制止することも出来ず、俺は加賀美の元に置いていかれてしまった。
「ふふ。二人っきりですね」
若干照れたような表情をする加賀美。
「はあ。仕方ねえな」
嫌だとは言っても分かれて見学するのも色々問題があるので一緒に回ることにした。
加賀美はここの研究を知り尽くしているので、俺主体で回ることになった。
俺が向かった先は、脳と筋肉の関係を研究している部門だった。
反射神経を何か別のものに転用できないか。そう考えたわけだ。
「よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
俺は言われるがままに装置に入り、検査が始まった。
数分間スキャンやらなんやらされたのちに、開放された。
「それでは、調査の結果なんですが」
俺は研究員の方から、全身において不足している筋肉と、その部分を鍛えた場合どのように脳が活性化されるかの説明を受けた。
しかし、俺の反射神経の因子となるものは見つからなかったようだ。
その話をすると、眼の研究に特化したところに行くと良いと説明された。
「ありがとうございました」
「晴さんのあの異様な強さって喧嘩慣れとかではなく反射神経が理由だったんですね」
「ああそうだ。基本的には誰にも言ってないがな」
単にいう必要が無かっただけではあるが。
「確かに喧嘩慣れしているだけで悠理さんに真っ向勝負して勝つなんてありえませんもんね」
文化祭の時のアレだな。流石に気付くよな。
「あれはお互いに素手じゃなかったから勝てただけだぞ」
そんな会話をしながら目的地に向かう。
辿り着いた先には、誰もいなかった。
「ここに研究者がいるはずじゃねえのか?」
「あいにく今日は休みを取っているようですね。ただこの装置の使い方は分かっているので私が動かしましょう」
いくら加賀美とはいえ素人であるため、若干の不安を覚えつつも中に入った。
眼球や脳波の計測が行われている。眩しくは無いが頭がちかちかする。そんな不思議な感じがした。
「終わりました。これが結果です」
「まずはこちらです」
言われるがままに廊下を歩いていると、ガラス越しに研究者と思われる人がアスリート体系の男に何か器具を使用していた。
「あれはトレーニングで作用する筋肉の部位を測定する機械やな?」
「流石二宮さん。筋肉の事となると詳しいですね」
「うちもアレに似た機械を使ってるしな。分かって当然や。後、花でええんやで?」
「一応わが社の社員ですから最低限の礼儀は保っておかないと……」
「あんたの会社の社員である以前にウチはあんたの同級生や。気を使う必要はないで」
「そうですね。分かりました。花さん」
例の二宮さんのクラスでもそうだったが、筋肉というただ一つのワードだけで容易く友人を作りやがった。凄いなこの人。
「筋肉は世界を繋ぐ共通言語やからな」
この人、人の心読んでやがる……!?
「筋肉に対する観察眼を極めることが出来ればこんなこと造作もないで」
「さっすが花ちゃん!私の心読める?」
「花ちゃん大好きって思ってるんやろ?うちも環はんのこと大好きやで」
「凄い!大好き!!」
そう言って二人は抱き合っていた。
「多分筋肉関係なくお前の気持ちは読めるぞ」
「ほんとに!?」
小野田さんの感情は恐らく誰でもわかる。
にしても筋肉から人の感情を事細かに読み取る能力か。
はっ!その能力があれば何考えているか分からない加賀美の気持ちも読めるのでは?
「それは無理やな。筋肉に対する自制がかなり強いからな。一定の筋肉レベルに達していないと出来ない芸当だ」
「その程度で私を知ろうだなんて甘いですよ。晴さん」
「はあ。じゃあ次行こう」
諦めて次の所へ行こうと促した。
「ここってアスリートの研究に特化しているわけじゃねえんだな」
研究対象として研究員に調査されていたのはアスリートが一番多くはあったが、子供から老人、やせ型から太っている人まで様々な条件の人がいた。
「筋肉を強化するためには様々なサンプルが必要ですから」
それもそうだな。
「ここに集められている人たちってここの社員さんの親族なんやろ?」
「そうですね。社員の親族の中から筋肉を付けたいと考えている方々を一定数募ってこの実験は行われております」
上手く出来た仕組みだなあ。都会から離れた地に街を作り、そこに住まわせることで社員の効率アップを促し、教育を施すことで後進を育成。そして被験者を効率的に集めることが出来る。
会社にとっても社員にとっても有益な環境だ。
世界一だからこそ出来るって感じだな。
「相変わらず千佳ちゃんの会社凄いね!」
「ありがとうございます」
加賀美は小野田さんの頭を撫でながらそう言っていた。
「そうですね。今から各自好きなところを回ってみませんか?大体の案内は終わったことですし」
「社員の人に迷惑がかかったりはしないのか?」
「問題ありません。あらかじめそう伝えてありますので」
仕事が速いことで。
「じゃあ大丈夫だね!悠里君、行こう!」
早速悠理が小野田さんに連れていかれた。まあ小野田さんはこの会社に何度も来たことがあるようだし何か事件が起こるということも無いだろう。
「じゃあウチも黒須はんの所へ!」
制止することも出来ず、俺は加賀美の元に置いていかれてしまった。
「ふふ。二人っきりですね」
若干照れたような表情をする加賀美。
「はあ。仕方ねえな」
嫌だとは言っても分かれて見学するのも色々問題があるので一緒に回ることにした。
加賀美はここの研究を知り尽くしているので、俺主体で回ることになった。
俺が向かった先は、脳と筋肉の関係を研究している部門だった。
反射神経を何か別のものに転用できないか。そう考えたわけだ。
「よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
俺は言われるがままに装置に入り、検査が始まった。
数分間スキャンやらなんやらされたのちに、開放された。
「それでは、調査の結果なんですが」
俺は研究員の方から、全身において不足している筋肉と、その部分を鍛えた場合どのように脳が活性化されるかの説明を受けた。
しかし、俺の反射神経の因子となるものは見つからなかったようだ。
その話をすると、眼の研究に特化したところに行くと良いと説明された。
「ありがとうございました」
「晴さんのあの異様な強さって喧嘩慣れとかではなく反射神経が理由だったんですね」
「ああそうだ。基本的には誰にも言ってないがな」
単にいう必要が無かっただけではあるが。
「確かに喧嘩慣れしているだけで悠理さんに真っ向勝負して勝つなんてありえませんもんね」
文化祭の時のアレだな。流石に気付くよな。
「あれはお互いに素手じゃなかったから勝てただけだぞ」
そんな会話をしながら目的地に向かう。
辿り着いた先には、誰もいなかった。
「ここに研究者がいるはずじゃねえのか?」
「あいにく今日は休みを取っているようですね。ただこの装置の使い方は分かっているので私が動かしましょう」
いくら加賀美とはいえ素人であるため、若干の不安を覚えつつも中に入った。
眼球や脳波の計測が行われている。眩しくは無いが頭がちかちかする。そんな不思議な感じがした。
「終わりました。これが結果です」
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