死せる勇者、魔界で生きる 〜蘇った俺はただ静かに暮らしたい〜

夢乃アイム

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第二章:魔界式スローライフ

第二十話:魔界の野菜は手強い

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 畑仕事にも慣れてきたセリオは、今日は収穫を行うことにした。
 以前植えた作物のいくつかが十分に成長し、収穫の時期を迎えている。

 しかし、ここは魔界。
 当然ながら、人間界の野菜とは勝手が違った。

「さて……どれから収穫するか」

 セリオは畑を見渡しながら、最初に目をつけたのは黒紫色の大きな実をつけた植物だった。
 見た目はナスに似ているが、微かに魔力が漂っており、ツルの動きがどこか意思を持っているようにも見える。

(……まあ、ナスみたいなものだろう)

 慎重に近づき、茎を掴んで実を摘み取ろうとした瞬間——

 ブンッ!

「っ!?」

 目の前で実が突然動き、鋭いツルが勢いよく伸びてきた。
 セリオは反射的に身を引く。

 バシッ!!

「……防衛本能があるのか?」

 どうやらこの魔界ナス(仮)は、自分を収穫されまいと抵抗する性質を持っているらしい。
 試しに再度手を伸ばすと、ツルがピクピクと動き、今にも襲いかかろうとしている。

(なるほど……普通に収穫するのは難しそうだな)

 セリオは少し考えた後、手早くツルを避けながら、根本から一気に切る作戦をとることにした。
 鍬を逆手に持ち、素早く動く。

 ザシュッ!

「……よし」

 茎を切断すると、魔界ナスはピクリと動きを止め、そのまま地面に落ちた。
 どうやら収穫できたらしい。

「……思った以上に骨が折れるな」

 セリオが拾い上げた実を観察していると、背後からクスクスと笑う声が聞こえた。

「勇者、相変わらず力技……」

 振り返ると、畑の端で植物系の魔族たちが興味深そうにこちらを見ていた。

「魔界の作物は、ただ摘むだけでは収穫できないものも多い……」
「知恵が必要……」
「例えば、その実は……気絶させると大人しくなる」
「先に、茎を優しく撫でてみるといい……」

 魔族たちは口々にそう言うと、手本を見せるように別の魔界ナスへ近づいた。
 細長い指でツルを撫で、魔力を込めて優しくさする。

 すると——

 パタリ。

 魔界ナスのツルがしおれ、力なく垂れ下がった。

「……なるほど」

 セリオは魔界の作物に対する知識がまだまだ足りていないことを痛感した。
 ここでの農業は、ただの力仕事では済まされない。

「勇者、次はどれを収穫する……?」

 植物系の魔族たちが期待するような目でこちらを見つめている。
 どうやら、彼らにとってもこれは面白い見世物になっているようだ。

(……仕方ない、もう少し付き合ってやるか)

 セリオは次の作物へと手を伸ばした。
 魔界の野菜との格闘は、まだまだ続きそうである。
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