死せる勇者、魔界で生きる 〜蘇った俺はただ静かに暮らしたい〜

夢乃アイム

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第三章:動乱の魔界

第二話:死せる王と覇を争う者

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 ──魔王崩御の報せは、雷鳴のように魔界を震わせた。

 魔界の中心、黒曜の王城。その最奥にある玉座の間で、漆黒の棺が静かに置かれている。かつて魔界を支配した王の亡骸が納められたそれは、魔界の者たちにとって絶対的な象徴であり、同時に権力の移り変わりを示すものでもあった。

 この棺の前に立つ一人の女──エルミナ・ヴァルグリムは、魔王の娘にして、その血統を継ぐ唯一の存在だった。
 彼女は純白のドレスを纏い、その冷徹な赤い瞳を棺へと向けていた。

(ついにこの時が来たわ……)

 自らの血筋を証明し、魔界の新たな支配者となる時が。
 エルミナは静かに振り返り、王城の広間に集う貴族や将軍たちを見渡す。その誰もが、これから起こるであろう覇権争いを予期し、沈黙していた。

「──諸侯たちよ。父の死は悲しむべきことだが、魔界は前へ進まねばならない。私は魔王の血を継ぐ者として、この王座を受け継ぐ」

 堂々とした宣言。
 だが、広間に集う者たちの反応は冷ややかだった。

 次の瞬間、重々しい足音が響き渡る。
 現れたのは、魔界最大の軍閥を率いる老将軍、アルゼリオン。
 赤黒い甲冑に身を包んだ彼は、長年の戦場経験が刻まれた鋭い眼差しをエルミナに向ける。

「姫よ、貴様がこの王座を継ぐというのか?」
「当然よ、アルゼリオン。私は父の娘、正統なる後継者よ」
「ふん……貴様の母親は何者だった?」

 広間がざわついた。
 エルミナの出生については、謎が多い。確かに魔王の娘であることに違いはないが、その母について知る者は少ない。
 だが、エルミナは一歩も引かず、冷笑を浮かべる。

「私の血統に疑いを抱くの? それとも……」
「疑いなど抱かぬ。ただ貴様のような若輩が魔王を継げば、魔界は衰退する。ならば、ここで俺が新たな王を立てる」

 その言葉と同時に、アルゼリオンの背後に控えていた軍勢が動き出す。
 王城の衛兵たちは動揺し、場の空気は一瞬で緊迫したものへと変わった。

「まさか、クーデターを起こすつもり?」
「魔界には強者が王となる掟がある。俺はこのアルゼリオン、魔界最大の軍を率いる者として、この座を奪う!」

 エルミナは瞳を細め、唇を噛みしめる。
 アルゼリオンは魔界の中でも屈指の実力者であり、さらに圧倒的な軍事力を持つ。彼に対抗するには、エルミナ自身の力だけでは不十分だった。
 だが、彼女には策がある。

「……面白いわ」

 エルミナは静かに笑った。

「ならば、受けて立つわ。この魔界の覇権を賭けて、私と勝負しなさい」

 王座を巡る血戦の幕が、今、上がる──。
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