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第一話 コレクター【プロローグ】
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時代は平成中盤。消費税というものが、ようやく世間に浸透しはじめてはいたが、この頃はまだコイン1枚で飲み物を購入できた時代だった。もっとも、それでも彼の所持金はいささか飲み物の購入には届かなかったわけだが。
ふと前方に気配を感じて自動販売機の影に隠れると、路地の向こう側から男が2人飛び出してきた。
「くっそ……あいつ、どこに逃げやがった? ってか、銀山さんがあそこまでキレてるの初めて見たんだけど」
「キレた銀山さんは手がつけられねぇからな……。それにしてもさ、あいつ――いつか人を殺しそうだとは思ってたけど、よりによって紫衣流ちゃんに手を出すなんてな」
そこまで本腰を入れているわけではないのだろう。言葉を交わしながら、自動販売機のところまでやってくる2人。見つからないように息をひそめる。
「まぁ、ちょっと休もうや。銀山さん、かなりの人数のベル鳴らしたみたいだから、俺達がちょっと手を抜いても問題ないだろ」
男の片割れが小銭を自動販売機に投入する。雨が少しばかり弱まった路地裏には、小銭の無機質な音が響いた。当時、まだ平成の中盤にもいたらぬ時代。若者達の間の連絡ツールといえば、ポケットベルと呼ばれるツールのみ。いわゆるメールの受信機能だけを持ったデバイス。メッセージを送信する際は、いちいち電話機から相手のベルに電話をかけ、まるで暗号であるかのように番号を打ち込まねばならない。とんでもない手間ではあるが、この時代ではデフォルトだった。携帯電話がようやく認識され始めたような時代だから、現代のようにスマホなどという万能なツールはなかった。
「お前、何飲む?」
小銭を投入し終えた男が、連れの男に問う。そこで彼は動くことにした。相手は完全に気を抜いている。それこそ、連れの男に関しては、一服するために煙草をくわえたところだった。そこを彼は見逃さなかった。自動販売機の影から飛び出すと、男の懐に飛び込んでみぞおちへと一発。煙草をくわえたまま器用にうめき声を上げた男は、その場へと崩れ落ちた。
「悪いなぁ。奢って貰っちゃって――」
突然、目の前に現れた彼の姿に、小銭入れを片手に固まってしまう男。目を大きく見開く。
「さ、坂田……」
その先の言葉は聞けなかった。そいつの首根っこを掴むと、その顔を思い切り自動販売機に叩きつけた。たまたまボタンが押されてしまったらしく、取り出し口から重たい音がする。安っぽい電子音が流れて、自動販売機についていたルーレットが止まった。もちろん外れ。当たりつきの自動販売機で当たりが出るなんて、都市伝説ではないだろうか。
「だが、言っとくがよ……。俺は殺ってねぇよ」
ふと前方に気配を感じて自動販売機の影に隠れると、路地の向こう側から男が2人飛び出してきた。
「くっそ……あいつ、どこに逃げやがった? ってか、銀山さんがあそこまでキレてるの初めて見たんだけど」
「キレた銀山さんは手がつけられねぇからな……。それにしてもさ、あいつ――いつか人を殺しそうだとは思ってたけど、よりによって紫衣流ちゃんに手を出すなんてな」
そこまで本腰を入れているわけではないのだろう。言葉を交わしながら、自動販売機のところまでやってくる2人。見つからないように息をひそめる。
「まぁ、ちょっと休もうや。銀山さん、かなりの人数のベル鳴らしたみたいだから、俺達がちょっと手を抜いても問題ないだろ」
男の片割れが小銭を自動販売機に投入する。雨が少しばかり弱まった路地裏には、小銭の無機質な音が響いた。当時、まだ平成の中盤にもいたらぬ時代。若者達の間の連絡ツールといえば、ポケットベルと呼ばれるツールのみ。いわゆるメールの受信機能だけを持ったデバイス。メッセージを送信する際は、いちいち電話機から相手のベルに電話をかけ、まるで暗号であるかのように番号を打ち込まねばならない。とんでもない手間ではあるが、この時代ではデフォルトだった。携帯電話がようやく認識され始めたような時代だから、現代のようにスマホなどという万能なツールはなかった。
「お前、何飲む?」
小銭を投入し終えた男が、連れの男に問う。そこで彼は動くことにした。相手は完全に気を抜いている。それこそ、連れの男に関しては、一服するために煙草をくわえたところだった。そこを彼は見逃さなかった。自動販売機の影から飛び出すと、男の懐に飛び込んでみぞおちへと一発。煙草をくわえたまま器用にうめき声を上げた男は、その場へと崩れ落ちた。
「悪いなぁ。奢って貰っちゃって――」
突然、目の前に現れた彼の姿に、小銭入れを片手に固まってしまう男。目を大きく見開く。
「さ、坂田……」
その先の言葉は聞けなかった。そいつの首根っこを掴むと、その顔を思い切り自動販売機に叩きつけた。たまたまボタンが押されてしまったらしく、取り出し口から重たい音がする。安っぽい電子音が流れて、自動販売機についていたルーレットが止まった。もちろん外れ。当たりつきの自動販売機で当たりが出るなんて、都市伝説ではないだろうか。
「だが、言っとくがよ……。俺は殺ってねぇよ」
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