17 / 178
第一話 コレクター【事件編】
10
しおりを挟む
「確かに、紫衣流に関しては銀山が殺ったって可能性もあんだろう。だが、他の犠牲者に関しては、銀山は顔が効きすぎだ」
銀山は曲がりなりにも、ひとつのチームのリーダーだ。元は居場所のない者同士がつるんでいただけだったのが、いつしかひとつのチームになっていただけなのだが、しかしそこを牛耳っているのが銀山なのも紛れもない事実だった。それこそ、この街で銀山の名前を知らない人はいないだろう。
「銀山はある意味、雨立街を取り仕切きるチームのリーダーだ。別に俺はなんとも思わねぇが、本気でやつにビビってる連中もいるんだよ。さて、そんな有名人がよ、家出して数日しか経っていないお嬢さんの前に現れた。雨立街に出入りしたばかりで日の浅い彼女達は、どんな反応を見せるだろうなぁ」
銀山は曲がりなりにも、この街で有名である。むろん、それは悪い意味で捉えたほうがいいだろう。
「少なくとも警戒はするだろうな――。簡単に懐には入れねぇよ」
「だが、死体に残された傷は、いずれも腹部に集中してる。着衣の乱れなんかもなかった。このことから、被害者は誰もが全く警戒せず、まんまと油断していたところを犯人から襲われていることが分かる。紫衣流は別にして、この街で顔が効きすぎている銀山に、他の犠牲者となった女がまるで警戒しないというのは奇妙な話だ。だから、犯人は雨立街の関係者でありながら、そこまでネームバリューがない人物。なおかつ、初対面の女が簡単に気を許してしまう程度には丁寧で親切だと思われる」
普段は馬鹿な話しかしない坂田が、妙に活き活きとしているように見える。小難しいことばかりを口にするのもまた、違和感しかなかった。
「この雨立街にそんな紳士がいるかねぇ――。それにしても、お前、なんか凄いな。情報もそんなに多くはないのに、犯人がどんなやつか分かるなんて」
腕っぷしが強く、時に自己中心的なところを見せたりはするものの、一定の気に入った人間に対する仲間意識は強い。それでいて群れることは絶対にせず、良くも悪くもやることには筋が通っている。これが、楠野の知る坂田仁であり、事件をこと細かに分析するような印象はまるでなかった。
「分かってなんていねぇよ。可能性を絞り込んだだけだ。なんだかんだで、素人には限界ってもんがあるんだよ。だから、頼るべきところはしっかりと頼ってやろうぜ」
ふと、坂田の視線がファミレスの出入り口に向けられていたことに気づいた。そこにはスーツを着た、いかにもな――雨立街の人間ならば、裸足で逃げしてしまうような雰囲気をまとった男がいた。坂田が軽く手を挙げると、店員の案内を断り、楠野達のいるテーブルへとやってくる。その光景を眺めつつ、坂田は気味の悪い笑みを浮かべた。
「遅ぇんだよ。巌鉄のおっさん」
銀山は曲がりなりにも、ひとつのチームのリーダーだ。元は居場所のない者同士がつるんでいただけだったのが、いつしかひとつのチームになっていただけなのだが、しかしそこを牛耳っているのが銀山なのも紛れもない事実だった。それこそ、この街で銀山の名前を知らない人はいないだろう。
「銀山はある意味、雨立街を取り仕切きるチームのリーダーだ。別に俺はなんとも思わねぇが、本気でやつにビビってる連中もいるんだよ。さて、そんな有名人がよ、家出して数日しか経っていないお嬢さんの前に現れた。雨立街に出入りしたばかりで日の浅い彼女達は、どんな反応を見せるだろうなぁ」
銀山は曲がりなりにも、この街で有名である。むろん、それは悪い意味で捉えたほうがいいだろう。
「少なくとも警戒はするだろうな――。簡単に懐には入れねぇよ」
「だが、死体に残された傷は、いずれも腹部に集中してる。着衣の乱れなんかもなかった。このことから、被害者は誰もが全く警戒せず、まんまと油断していたところを犯人から襲われていることが分かる。紫衣流は別にして、この街で顔が効きすぎている銀山に、他の犠牲者となった女がまるで警戒しないというのは奇妙な話だ。だから、犯人は雨立街の関係者でありながら、そこまでネームバリューがない人物。なおかつ、初対面の女が簡単に気を許してしまう程度には丁寧で親切だと思われる」
普段は馬鹿な話しかしない坂田が、妙に活き活きとしているように見える。小難しいことばかりを口にするのもまた、違和感しかなかった。
「この雨立街にそんな紳士がいるかねぇ――。それにしても、お前、なんか凄いな。情報もそんなに多くはないのに、犯人がどんなやつか分かるなんて」
腕っぷしが強く、時に自己中心的なところを見せたりはするものの、一定の気に入った人間に対する仲間意識は強い。それでいて群れることは絶対にせず、良くも悪くもやることには筋が通っている。これが、楠野の知る坂田仁であり、事件をこと細かに分析するような印象はまるでなかった。
「分かってなんていねぇよ。可能性を絞り込んだだけだ。なんだかんだで、素人には限界ってもんがあるんだよ。だから、頼るべきところはしっかりと頼ってやろうぜ」
ふと、坂田の視線がファミレスの出入り口に向けられていたことに気づいた。そこにはスーツを着た、いかにもな――雨立街の人間ならば、裸足で逃げしてしまうような雰囲気をまとった男がいた。坂田が軽く手を挙げると、店員の案内を断り、楠野達のいるテーブルへとやってくる。その光景を眺めつつ、坂田は気味の悪い笑みを浮かべた。
「遅ぇんだよ。巌鉄のおっさん」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる