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第一話 コレクター【事件編】
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店内は開店前ということもあり、実に薄暗かった。新山が必要最低限の電気を点けて回るが、そもそもバー仕様の暖色系であるため、ほんのりと辺りが明るくなっただけ。それでも木目調を基本とした店内は清潔感があった。雨立街にある店といえば、街を体現したかのような胡散臭さが漂っているのだが、ここだけは違った。だからこそ、銀山達もここを溜まり場にしていたのであろう。元は坂田と楠野の秘密基地のような場所だったのに。
「随分と綺麗にされているな。ここで殺しがあったなんて信じられない」
きっと、巌鉄の想像する店舗とはかけ離れていたのであろう。薄暗い店内を見回しながら感心の言葉を漏らす。ブラインドを閉じているから店内が薄暗く感じるのかもしれないが、実際のところブラインドを開けたところで、そこまで明るくはならない。街を取り囲むようにして連立しているビル群の影が、太陽の光を遮ってしまうからだ。この街では日照権という言葉は使えない。
「本当は今日くらい店を閉めてもいいんだけどね。ほら、この街には食べたくても食べられない子達もいるでしょう? それどころか、自分の居場所さえない子もいるわ。だからこそ、お店を開けてあげなきゃ」
この新山の信念――彼を突き動かしている思いこそが、店を雨立街の中で繁盛店にしているのであろう。銀山達が居座っても、文句も言わずに場所を提供し続けてきたのも、別に銀山達を恐れていたのではなく、新山なりの考えがあったからだろう。
「あんた見た目によらず――ってのは偏見になるか。随分と立派なことをしてるんだな。俺には真似できん」
カウンターに歩み寄りつつ巌鉄。新山は厨房へと続く廊下への扉に手をかけつつ。
「私は自分に正直に、自分のやりたいことをやってるだけよ。自分を抑えつけるのはやめにしたの」
なんだか新山が言うと説得力がある。そんな彼は廊下に出ると「コーヒー淹れてくるわね」と姿を扉の向こう側へと消した。
「……で、早速で悪いが遺体はどの辺にあった? お前達はどこにいたんだ?」
新山の背中を見送ると、刑事のスイッチを入れる巌鉄。現場はすでに片付けられており、当然ながら位置関係なども分からなくなっていた。
「確か、紫衣流はこの辺りにいたな」
坂田はカウンターに歩み寄り、紫衣流が突っ伏して眠っていた席を指差す。それに続いて楠野は自分がいた位置を示した。
「で、俺がここで、坂田は確か――あの辺りです」
銀山に勘違いされたら面倒であるため、両者共に必要以上に紫衣流と距離を取って、互いにテーブル席で眠った。別に銀山を恐れていたわけではなく、単に面倒な相手だからだ。結局、その面倒なことになっているわけだが。
「随分と綺麗にされているな。ここで殺しがあったなんて信じられない」
きっと、巌鉄の想像する店舗とはかけ離れていたのであろう。薄暗い店内を見回しながら感心の言葉を漏らす。ブラインドを閉じているから店内が薄暗く感じるのかもしれないが、実際のところブラインドを開けたところで、そこまで明るくはならない。街を取り囲むようにして連立しているビル群の影が、太陽の光を遮ってしまうからだ。この街では日照権という言葉は使えない。
「本当は今日くらい店を閉めてもいいんだけどね。ほら、この街には食べたくても食べられない子達もいるでしょう? それどころか、自分の居場所さえない子もいるわ。だからこそ、お店を開けてあげなきゃ」
この新山の信念――彼を突き動かしている思いこそが、店を雨立街の中で繁盛店にしているのであろう。銀山達が居座っても、文句も言わずに場所を提供し続けてきたのも、別に銀山達を恐れていたのではなく、新山なりの考えがあったからだろう。
「あんた見た目によらず――ってのは偏見になるか。随分と立派なことをしてるんだな。俺には真似できん」
カウンターに歩み寄りつつ巌鉄。新山は厨房へと続く廊下への扉に手をかけつつ。
「私は自分に正直に、自分のやりたいことをやってるだけよ。自分を抑えつけるのはやめにしたの」
なんだか新山が言うと説得力がある。そんな彼は廊下に出ると「コーヒー淹れてくるわね」と姿を扉の向こう側へと消した。
「……で、早速で悪いが遺体はどの辺にあった? お前達はどこにいたんだ?」
新山の背中を見送ると、刑事のスイッチを入れる巌鉄。現場はすでに片付けられており、当然ながら位置関係なども分からなくなっていた。
「確か、紫衣流はこの辺りにいたな」
坂田はカウンターに歩み寄り、紫衣流が突っ伏して眠っていた席を指差す。それに続いて楠野は自分がいた位置を示した。
「で、俺がここで、坂田は確か――あの辺りです」
銀山に勘違いされたら面倒であるため、両者共に必要以上に紫衣流と距離を取って、互いにテーブル席で眠った。別に銀山を恐れていたわけではなく、単に面倒な相手だからだ。結局、その面倒なことになっているわけだが。
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