99 / 178
第二話 Q&A【事件編】
44
しおりを挟む
「それで、どうされたんですか?」
何も知らないまま、しかし目を輝かせている倉科の姿を見て、本題を切り出すことを躊躇してしまう巌鉄。本当に彼を巻き込んでしまっていいのだろうか。引き返させるのであれば今からでも遅くはない。
「……あ、いや。飯でもどうかと思ってな」
とっさに出た言葉とは言え、自分でもあまりにも整合性のない言葉だと思ってしまった。わざわざ誰にも気づかれないように呼び出したというのに、それが食事の誘いだなんて、普通に考えてあり得ない。もちろん、倉科だって馬鹿ではない。あっさりと見抜かれてしまう。
「さっきの電話の様子だと、食事に誘ったとは思えないのですが……。何か隠していませんか?」
いざ本人を目の前にしてしまうと、やはり巻き込んでしまうことに後ろ向きになってしまう。やはり、今一度本人に確認すべきだろう。
「倉科、呼び出してしまっておいて申し訳ないが。これからお願いしたいことは、お前さんのキャリアに関わってくるかもしれない。少なくとも、組織としてはやっちゃいけないことに触れる。勝手で申し訳ないが、ここでもう一度考えて欲しい。こっちが身勝手なことを言っているのは分かっているんだが、捜査一課で頼れそうなのが、お前さんくらいしかいなかったからな。思わず連絡させてもらったんだ」
なんとも卑怯なことであろうか。過去の栄光とはいえ、倉科は過去の巌鉄に憧れを抱いている節がある。それを利用して、さも本人に選択肢を与えているように見せかけておきながら、実のところ巌鉄の思うところに落とそうとしている。もちろん、彼のキャリアに傷はつけたくないが、しかしわらにもすがる思いで倉科に連絡したのも確かだ。
「――もしかして事件の匂いですか?」
人が行き交う場所だから、詳しいことはもちろんここでは言えない。ただ、なんとなくきな臭い話であることは、倉科も気づいてくれたのであろう。ただ、やたらと本人は嬉しそうだ。巌鉄が「あぁ、そう思ってくれて構わん」と返すと、倉科はさらに目を輝かせた。
「研修の間、ずっと思っていたんです。なんというか、刑事ってこんなもんじゃないだろって。もっとこう、派手に立ち回ったりするもんだと思っていたのに、やることは地味なことばかりで」
巌鉄は倉科に悟られぬように、煙草の煙を吐き出すついでに、ため息も漏らした。この倉科という男。決して悪いやつではないのだが、どうにも刑事というものに抱いているイメージが、刑事ドラマ寄りすぎる。実際に刑事ドラマみたいな立ち回りをしたら色々と問題なのであるが、それがまかり通ると思っているのだろう。
何も知らないまま、しかし目を輝かせている倉科の姿を見て、本題を切り出すことを躊躇してしまう巌鉄。本当に彼を巻き込んでしまっていいのだろうか。引き返させるのであれば今からでも遅くはない。
「……あ、いや。飯でもどうかと思ってな」
とっさに出た言葉とは言え、自分でもあまりにも整合性のない言葉だと思ってしまった。わざわざ誰にも気づかれないように呼び出したというのに、それが食事の誘いだなんて、普通に考えてあり得ない。もちろん、倉科だって馬鹿ではない。あっさりと見抜かれてしまう。
「さっきの電話の様子だと、食事に誘ったとは思えないのですが……。何か隠していませんか?」
いざ本人を目の前にしてしまうと、やはり巻き込んでしまうことに後ろ向きになってしまう。やはり、今一度本人に確認すべきだろう。
「倉科、呼び出してしまっておいて申し訳ないが。これからお願いしたいことは、お前さんのキャリアに関わってくるかもしれない。少なくとも、組織としてはやっちゃいけないことに触れる。勝手で申し訳ないが、ここでもう一度考えて欲しい。こっちが身勝手なことを言っているのは分かっているんだが、捜査一課で頼れそうなのが、お前さんくらいしかいなかったからな。思わず連絡させてもらったんだ」
なんとも卑怯なことであろうか。過去の栄光とはいえ、倉科は過去の巌鉄に憧れを抱いている節がある。それを利用して、さも本人に選択肢を与えているように見せかけておきながら、実のところ巌鉄の思うところに落とそうとしている。もちろん、彼のキャリアに傷はつけたくないが、しかしわらにもすがる思いで倉科に連絡したのも確かだ。
「――もしかして事件の匂いですか?」
人が行き交う場所だから、詳しいことはもちろんここでは言えない。ただ、なんとなくきな臭い話であることは、倉科も気づいてくれたのであろう。ただ、やたらと本人は嬉しそうだ。巌鉄が「あぁ、そう思ってくれて構わん」と返すと、倉科はさらに目を輝かせた。
「研修の間、ずっと思っていたんです。なんというか、刑事ってこんなもんじゃないだろって。もっとこう、派手に立ち回ったりするもんだと思っていたのに、やることは地味なことばかりで」
巌鉄は倉科に悟られぬように、煙草の煙を吐き出すついでに、ため息も漏らした。この倉科という男。決して悪いやつではないのだが、どうにも刑事というものに抱いているイメージが、刑事ドラマ寄りすぎる。実際に刑事ドラマみたいな立ち回りをしたら色々と問題なのであるが、それがまかり通ると思っているのだろう。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる