ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第二話 Q&A【事件編】

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「それで、どうされたんですか?」

 何も知らないまま、しかし目を輝かせている倉科の姿を見て、本題を切り出すことを躊躇してしまう巌鉄。本当に彼を巻き込んでしまっていいのだろうか。引き返させるのであれば今からでも遅くはない。

「……あ、いや。飯でもどうかと思ってな」

 とっさに出た言葉とは言え、自分でもあまりにも整合性のない言葉だと思ってしまった。わざわざ誰にも気づかれないように呼び出したというのに、それが食事の誘いだなんて、普通に考えてあり得ない。もちろん、倉科だって馬鹿ではない。あっさりと見抜かれてしまう。

「さっきの電話の様子だと、食事に誘ったとは思えないのですが……。何か隠していませんか?」

 いざ本人を目の前にしてしまうと、やはり巻き込んでしまうことに後ろ向きになってしまう。やはり、今一度本人に確認すべきだろう。

「倉科、呼び出してしまっておいて申し訳ないが。これからお願いしたいことは、お前さんのキャリアに関わってくるかもしれない。少なくとも、組織としてはやっちゃいけないことに触れる。勝手で申し訳ないが、ここでもう一度考えて欲しい。こっちが身勝手なことを言っているのは分かっているんだが、捜査一課で頼れそうなのが、お前さんくらいしかいなかったからな。思わず連絡させてもらったんだ」

 なんとも卑怯なことであろうか。過去の栄光とはいえ、倉科は過去の巌鉄に憧れを抱いている節がある。それを利用して、さも本人に選択肢を与えているように見せかけておきながら、実のところ巌鉄の思うところに落とそうとしている。もちろん、彼のキャリアに傷はつけたくないが、しかしわらにもすがる思いで倉科に連絡したのも確かだ。

「――もしかして事件の匂いですか?」

 人が行き交う場所だから、詳しいことはもちろんここでは言えない。ただ、なんとなくきな臭い話であることは、倉科も気づいてくれたのであろう。ただ、やたらと本人は嬉しそうだ。巌鉄が「あぁ、そう思ってくれて構わん」と返すと、倉科はさらに目を輝かせた。

「研修の間、ずっと思っていたんです。なんというか、刑事ってこんなもんじゃないだろって。もっとこう、派手に立ち回ったりするもんだと思っていたのに、やることは地味なことばかりで」

 巌鉄は倉科に悟られぬように、煙草の煙を吐き出すついでに、ため息も漏らした。この倉科という男。決して悪いやつではないのだが、どうにも刑事というものに抱いているイメージが、刑事ドラマ寄りすぎる。実際に刑事ドラマみたいな立ち回りをしたら色々と問題なのであるが、それがまかり通ると思っているのだろう。
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