ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第二話 Q&A【事件編】

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「お前さぁ! そこからこっちの素性までばれたらどうするつもりなの? なぁ? なぁ!」

 倒れた舞香の急所――腹部を執拗に蹴ってくる。その度に呼吸が止まりそうになり、そのまま息が二度とできないのではないかと不安になった。

「ったく、こっちはもう人を殺してんだよ? お前も千秋みたいになりたい?」

 髪の毛を鷲掴みにされ、無理矢理に半身を起こされる。

 最初はただの保身だったと思う。クスリを使っていた事実を隠蔽したいという、そんな浅はかな保身。それが結果的に、この人物の犯行を隠蔽することになるとは。いや、最初から分かっていたのだ。クスリを……スマイルを盾にされている時点で、自分は捨て駒にすぎないと。

「まぁ、お前も殺してるかもな。相手が錯乱したみたいなことを言ってるのだって、お前の自己申告でしかないからな」

 引っ張られた髪の毛が、ぶちぶちと音を立てて千切れる。それでも舞香は首を横に振った。

「私は殺してない。勝手に相手がキマり過ぎただけです!」

 そう、自分は殺してなどいない。ただ、ちょっとだけ世の中からはグレーとされている脱法のクスリを渡しただけのこと。本当なら、クスリで記憶が曖昧になっているところで、偽りの既成事実を作り上げるつもりだったのに。

「それにしても詰めが甘いというか、穴だらけの計画だなぁ。仮にお前のやり方がうまくいったとして、男が逮捕されたとしよう。男がクスリの使用を喋らないという保証はあったか?」

 舞香の目的は、事件を付きまといのせいにして、その付きまといの人間をでっち上げることだった。つまり、まず男は舞香への暴行で連行されることになる。

「暴行で捕まった挙句に、クスリの使用を認めてしまったら、罪がさらに重くなる。だから、クスリのことは喋らないと思って……」

 思い切り顔面を殴られてしまったようで、そこまでしか喋れなかった。目の前がチカチカとするし、耳鳴りまでしてきた。

「あのさぁ、最終的にその相手は千秋の殺害容疑までかけられるわけ。そうなったら必死に自分が無関係だって主張するでしょう? クスリだって、そいつの意思でやったわけじゃないだろうしさ! もうちょっと後先のことを考えろって!」

 相次ぐ暴力に、とうとう意識が飛びそうになった。いや、実際にほんの数秒かもしれないが、意識が飛んでいたのかもしれない。
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