ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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プロローグ

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 オートロックを解除して、自分の部屋へと向かう。私の部屋は5階にあった。もちろん賃貸であり、月々それなりの家賃も払っていた。安いに越したことはないのであるが、安心を買うという意味では、やや高い経費を払うことも仕方なしだと思っている。もっとも、郵便物に対する防犯意識のようなものは低い。エントランスに集合ポストがあるくらいだから。まぁ、それを引っくるめて、それなりの家賃ということに落ち着いているのであろう。

 部屋の鍵を開けると、その先には誰もいない殺風景な部屋が広がっている。形式的には2LDKになるのだろうが、私には少し広すぎる。一応、寝室なんてものを作ってはみたものの、リビングのソファーで寝落ちしてしまうことも多い。こういうところは、我ながら中々にズボラだなと思うことがあった。

 帰宅してすぐにシャワーを浴びる。シャワーから出ると、まだ乾いていない髪の毛をタオルで拭きつつ、冷蔵庫からビール缶を取り出す。基本的に徒歩で帰ってくるものだから、家に到着する頃には喉が渇いている。水分を補給したいところを堪えてシャワーへと向かい、シャワーからあがると同時にビールを流し込む。これが堪らない――と言ったら同僚に「おっさんか」と突っ込まれた。おっさんではなかろうとも、私に賛同してくれる人は世の中に沢山いることだろう。

 今日も今日とてビールで喉の渇きをうるおし、生きていることを実感する。アルコールは体にとってデメリットしかないと分かっているのに、身を削って生きていることを実感するなんて、中々にハードボイルドである。

 ビール缶を片手に、冷蔵庫の中にあったもので簡単に料理をする。できあがったのは野菜炒めと冷や奴。追加のビール缶を手に取ると、リビングテーブルの上に料理と一緒に並べた。

 ――晩酌の時間こそが至福の時である。

 SNSで俗に【映える】とかいう写真ばかり貼りつけているキラキラ女子に言いたい。どこぞの並ばないと食べられないスイーツより、どこぞのお洒落なランチより、晩酌こそが映える。私的に映える。酔っ払った勢いで何度かSNSにアップしたことがあるのだが、見ず知らずのおじ様達からのコメントが数件つく程度だ。

 2本目を開けようとして、本田さんから借りてきた機材のことを思い出す。いつもならば、定額映像サービスなどで映画でも観て過ごすのであるが、今日は少し特別な映像があるではないか。酔っ払ってからでは設置に手間取りそうだから、今のうちに設置し、晩酌がてらに8ミリビデオテープの中身を確認してみよう。
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