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第一章 好奇心の代償【過去 赤松朱里】
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きっと、ご飯ができたことを伝えたかったのであろう。仕方がないといった様子で、母は勝手口から外へと出ていった。それと同時に居間の時計が鳴る。鳴った音は7回。そろそろ待ち合わせのためにでかけなければならない時間だ。
母には事情を話してオッケーをもらってあるし、父親が戻ってきた際、急にNGを出されても困る。朱里は自分の部屋へと戻ると、荷物を詰めるだけ詰めたリュックサックを背負う。
両親が家を離れている間に出かけるつもりだったから、念のために充電しておいたバッテリーをリュックサックに放り投げるのと引き換えに、ハンディカムビデオカメラを取り出す。録画ボタンを押す前に、髪の毛だけ整えた。電源を入れて録画ボタンを押す。
「はい、時刻はもう7時になりました。これから、待ち合わせ場所へと向かおうと思いまーす」
遠い将来、これを見ることになる人なんているのだろうか。もしかすると、数年後の自分がテープを見つけて引っ張り出し、この時のことを恥ずかしがりながら見るのかもしれない。中学の終わりに行う、ちょっとした禁忌破り。今だからこそ許される究極の火遊びだ。
玄関でスニーカーを履くと、まだ両親が戻ってきていないにも関わらず「行ってきまーす」と呟いた。もちろん、返事はない。鬼の居ぬ間になんとやら――さっさと出かけてしまおう。朱里は玄関から外に出ると、脇の車庫に停めてある自転車のほうへと向かう。辺りは基本的に田畑ばかりだから真っ暗。家の前の道は、一定の間隔で置かれた街灯が照らしている。季節は5月であるが、夜になると少し肌寒い。やはりパーカーを羽織ってきて正解のようだ。
自転車のカゴにハンディカムビデオカメラを入れる。前方を撮影するように位置を調整すると、重しの意味も込めてリュックサックをカゴの中に押し込んだ。これでカメラは固定されるし、荷物はカゴに収まるしで一石二鳥だ。
「はい、今からミノタウロスの森の近くにある公民館に向かいまーす」
カメラに向かって手を振ると、自転車にまたがる朱里。真っ暗な闇の中に、ぽつりぽつりと家の明かりが灯っているが、家と家の距離が基本的に離れているため、他の家の人の生活が身近にあるようには感じられない。同じ町の中なのに、闇の中の対岸によその家があるように感じられてしまう。ここから公民館までの道のりで、果たして何軒の家の前を通ることになるのか。おそらく、数えるくらいしかない。
回しっぱなしのビデオカメラと、荷物を詰め込んだリュックサック。勢いよくペダルを蹴り出した朱里は、待ち合わせの場所へと急いだのであった。
母には事情を話してオッケーをもらってあるし、父親が戻ってきた際、急にNGを出されても困る。朱里は自分の部屋へと戻ると、荷物を詰めるだけ詰めたリュックサックを背負う。
両親が家を離れている間に出かけるつもりだったから、念のために充電しておいたバッテリーをリュックサックに放り投げるのと引き換えに、ハンディカムビデオカメラを取り出す。録画ボタンを押す前に、髪の毛だけ整えた。電源を入れて録画ボタンを押す。
「はい、時刻はもう7時になりました。これから、待ち合わせ場所へと向かおうと思いまーす」
遠い将来、これを見ることになる人なんているのだろうか。もしかすると、数年後の自分がテープを見つけて引っ張り出し、この時のことを恥ずかしがりながら見るのかもしれない。中学の終わりに行う、ちょっとした禁忌破り。今だからこそ許される究極の火遊びだ。
玄関でスニーカーを履くと、まだ両親が戻ってきていないにも関わらず「行ってきまーす」と呟いた。もちろん、返事はない。鬼の居ぬ間になんとやら――さっさと出かけてしまおう。朱里は玄関から外に出ると、脇の車庫に停めてある自転車のほうへと向かう。辺りは基本的に田畑ばかりだから真っ暗。家の前の道は、一定の間隔で置かれた街灯が照らしている。季節は5月であるが、夜になると少し肌寒い。やはりパーカーを羽織ってきて正解のようだ。
自転車のカゴにハンディカムビデオカメラを入れる。前方を撮影するように位置を調整すると、重しの意味も込めてリュックサックをカゴの中に押し込んだ。これでカメラは固定されるし、荷物はカゴに収まるしで一石二鳥だ。
「はい、今からミノタウロスの森の近くにある公民館に向かいまーす」
カメラに向かって手を振ると、自転車にまたがる朱里。真っ暗な闇の中に、ぽつりぽつりと家の明かりが灯っているが、家と家の距離が基本的に離れているため、他の家の人の生活が身近にあるようには感じられない。同じ町の中なのに、闇の中の対岸によその家があるように感じられてしまう。ここから公民館までの道のりで、果たして何軒の家の前を通ることになるのか。おそらく、数えるくらいしかない。
回しっぱなしのビデオカメラと、荷物を詰め込んだリュックサック。勢いよくペダルを蹴り出した朱里は、待ち合わせの場所へと急いだのであった。
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