ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

文字の大きさ
14 / 203
第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】

第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】1

しおりを挟む
 人の気配がなく、また街灯の数も少ない道路――いいや、思い返すに農道だったような気もするのであるが、そこをひたすら前方に向かって突き進んでいる場面で、急に砂嵐になってしまった。どうやら、テープが終わってしまったらしい。

 一体、何が目的で、朱里はこんなビデオテープを送ってきたのであろうか。私に対するビデオレターのようなものならば、まだ納得はできるのであるが、いざ見てみたら、中身は朱里がどこかに――いいや、あのミノタウロスの森に向かうまでが映し出されていた。これを見たところで、どうなるというのだろうか。

 急に砂嵐だった画面に静止画が映り込んだ。そして、ビデオの編集ソフトで編集したのか、テロップらしきものが流れる。なんだか、昔のテレビを彷彿させるようなテロップである。

 ――次のテープはここにあるよ。

 静止画として映り込んでいる建物には見覚えがあった。そこは小学校4年生まで通っていた小学校。あのミノタウロスの森がある町の小学校だ。テロップが消えないまま静止画が切り替わり、今度は下駄箱のようなものを映し出した。正面玄関の映像らしい。また静止画が切り替わり、下駄箱をアップに移した。下駄箱はロッカーのように蓋がついており、そこには【赤松朱里】とのネームプレートが挟まっていた。その文字もかすれ始めてしまっていたが。

 またしても砂嵐。砂嵐の画面が再来。まだ何かあるのではないかと思ったのであるが、しかし今度はビデオデッキの中でガチャリと音がして、画面が真っ暗になった。どうやら、ビデオテープはこれで終わりらしい。

「え……なんなの?」

 すでにビールは3本目を空けており、そこそこに酔いも回っているつもりだった。しかしながら、私はビデオの映像から感じた気味の悪さのようなものを無視することができなかった。本当ならば程よく気持ちがいい感じになっているはずなのに、今日は気持ちの悪い酔い方をしているらしい。

 大して仲が良かったわけでもない赤松朱里から届いたビデオテープ。しかも、その続きは――どうやらかつて住んでいた町の小学校にあるらしい。私にだって仕事があるし、あんなところにまで行っている暇などない。けれども、どうにも気味が悪い。赤松朱里が何を思って、こんなものを送りつけてきたのか。そして、ミノタウロスの森に向かった朱里はどうなってしまったのか。見なかった振りをして日常に戻るのは簡単であろう。しかし、それでは胸の奥底に芽生えた気味の悪さは払拭できない。まるで喉に魚の骨が刺さっているような感覚だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-

設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt 夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや 出張に行くようになって……あまりいい気はしないから やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀ 気にし過ぎだと一笑に伏された。 それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない 言わんこっちゃないという結果になっていて 私は逃走したよ……。 あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン? ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 初回公開日時 2019.01.25 22:29 初回完結日時 2019.08.16 21:21 再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結 ❦イラストは有償画像になります。 2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載

名乗るほどの者ではございませんが、チャーシューは大盛りです

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
コールはしがないラーメン屋の息子である。 たとえ父が異世界から転生し、母が魔王の娘であっても、コール自身は何の取り柄もない、普通の少年だ。 それでもこの世界に『ラーメン』という概念を持ち込み、客を笑顔にさせられる両親を尊敬していたし、自分もまた店を立派に引き継いで、可愛い嫁をもらうのが夢だったのだ。 そんなある日、いつものように出前から帰ろうとすると、どこからかラーメンの匂いが漂ってきた。注文を受けた家とは逆方向から、『かわいいオーガスティン』のメロディーと共に。 ※第2回次世代ファンタジーカップ参加作品。「豚飼い王子」をテーマに書きました。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

ワシの子を産んでくれんか

KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。 「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。 しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。 昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。 ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。 救いのような笑顔と、罪のような温もり。 二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

異国妃の宮廷漂流記

花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。 夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。 いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。 これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が、自ら絆を紡ぎ、愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの物語。ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、異国妃のサバイバル宮廷譚。最後はハッピーエンドです。 ※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。 © 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

冷たい舌

菱沼あゆ
キャラ文芸
 青龍神社の娘、透子は、生まれ落ちたその瞬間から、『龍神の巫女』と定められた娘。  だが、龍神など信じない母、潤子の陰謀で見合いをする羽目になる。  潤子が、働きもせず、愛車のランボルギーニ カウンタックを乗り回す娘に不安を覚えていたからだ。  その見合いを、透子の幼なじみの龍造寺の双子、和尚と忠尚が妨害しようとするが。  透子には見合いよりも気にかかっていることがあった。  それは、何処までも自分を追いかけてくる、あの紅い月――。

処理中です...