36 / 203
第二章 動き出す狂気【過去 宝田羽衣】
第二章 動き出す狂気【過去 宝田羽衣】1
しおりを挟む
【1】
「うわぁ、本当に来ちゃったねぇ――」
ミノタウロスの森の入り口までやってきて、気味の悪い色をした鳥居を見上げる。
普段は眼鏡をかけているのだが、今日は思い切ってコンタクトを入れてきた。一応、目的地が目的地であるがゆえに、そこまで可愛らしい格好はできなかったが、しかしその中でも最大限に気を遣い、それっぽくお洒落をしたつもりだ。化粧だってばっちりだ。
「ってか、他のみんな置いてきて良かったのかな?」
彼女の隣にいた角刈りの男子が呟いた。夜――という魔力は不思議なものであり、普段からカッコいいと思っているというのに、その横顔が今日はいつもより男らしく見える。彼からして、自分はどんなふうに映っているのだろうか。
宝田羽衣――。ミノタウロスの森に肝試しに向かうというシチュエーションを利用して、今日こそ片想い中の谷惇と特別な関係になってやろうと思っている。だからこそ、他のメンバーには悪かったが、一足先にここへと来てやったのだ。わざと、谷には集合時間を本来の時間より早いものにして伝えてあった。
「大丈夫だよ。それよりもさ、思った以上に雰囲気出てない?」
どさくさに紛れて、そっと谷のそばへと寄る。いつもなら、絶対にこんなことはできないのであろうが、今日の自分はいつもの自分とは違う。ミノタウロスの森の魔力が味方してくれているのだ。
「まぁ、確かに色々と変な噂がある場所だからな。小さい頃は本当に言いつけを守ってたわけだし――だからかな、変な罪悪感みたいなものはあるよ」
谷は野球をやっていて、その体にはしっかりとした筋肉がついている。それを触るような流れに持っていきつつ、羽衣はとうとう谷と腕を組んだ。
「谷君は鍛えてるから大丈夫だよ。いざとなったら守ってもらおう」
突然の不意打ちとはいえ、女子に頼られる――しかも、腕に胸が当たっているような状況で、嫌な気になる男などいないだろう。どこぞの雑誌で読んだやり方ではあるが、それは谷にも充分すぎるほど通用したらしい。
「ま、まぁ――そういうことなら任せとけ。何が出てくるのかは知らないけど」
まんざらでもなさそうに答える谷は、羽衣の腕を振り解こうともせずに鳥居を見上げている。
「とりあえず、中――入ってみようか」
ここで突っ立っていても仕方がないし、ゆっくりしていると置いてきた奴らが追いついてしまうかもしれない。谷と二人きりでいる必要のある羽衣からすれば、今は一刻も早くミノタウロスの森に入ってしまいたかった。
「うわぁ、本当に来ちゃったねぇ――」
ミノタウロスの森の入り口までやってきて、気味の悪い色をした鳥居を見上げる。
普段は眼鏡をかけているのだが、今日は思い切ってコンタクトを入れてきた。一応、目的地が目的地であるがゆえに、そこまで可愛らしい格好はできなかったが、しかしその中でも最大限に気を遣い、それっぽくお洒落をしたつもりだ。化粧だってばっちりだ。
「ってか、他のみんな置いてきて良かったのかな?」
彼女の隣にいた角刈りの男子が呟いた。夜――という魔力は不思議なものであり、普段からカッコいいと思っているというのに、その横顔が今日はいつもより男らしく見える。彼からして、自分はどんなふうに映っているのだろうか。
宝田羽衣――。ミノタウロスの森に肝試しに向かうというシチュエーションを利用して、今日こそ片想い中の谷惇と特別な関係になってやろうと思っている。だからこそ、他のメンバーには悪かったが、一足先にここへと来てやったのだ。わざと、谷には集合時間を本来の時間より早いものにして伝えてあった。
「大丈夫だよ。それよりもさ、思った以上に雰囲気出てない?」
どさくさに紛れて、そっと谷のそばへと寄る。いつもなら、絶対にこんなことはできないのであろうが、今日の自分はいつもの自分とは違う。ミノタウロスの森の魔力が味方してくれているのだ。
「まぁ、確かに色々と変な噂がある場所だからな。小さい頃は本当に言いつけを守ってたわけだし――だからかな、変な罪悪感みたいなものはあるよ」
谷は野球をやっていて、その体にはしっかりとした筋肉がついている。それを触るような流れに持っていきつつ、羽衣はとうとう谷と腕を組んだ。
「谷君は鍛えてるから大丈夫だよ。いざとなったら守ってもらおう」
突然の不意打ちとはいえ、女子に頼られる――しかも、腕に胸が当たっているような状況で、嫌な気になる男などいないだろう。どこぞの雑誌で読んだやり方ではあるが、それは谷にも充分すぎるほど通用したらしい。
「ま、まぁ――そういうことなら任せとけ。何が出てくるのかは知らないけど」
まんざらでもなさそうに答える谷は、羽衣の腕を振り解こうともせずに鳥居を見上げている。
「とりあえず、中――入ってみようか」
ここで突っ立っていても仕方がないし、ゆっくりしていると置いてきた奴らが追いついてしまうかもしれない。谷と二人きりでいる必要のある羽衣からすれば、今は一刻も早くミノタウロスの森に入ってしまいたかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜
四乃森 コオ
ファンタジー
勇者によって魔王が討伐されてから千年の時が経ち、人族と魔族による大規模な争いが無くなっていた。
それでも人々は魔族を恐れ、いつ自分たちの生活を壊しに侵攻してくるのかを心配し恐怖していた ───── 。
サーバイン戦闘専門学校にて日々魔法の研鑽を積んでいたスズネは、本日無事に卒業の日を迎えていた。
卒業式で行われる『召喚の儀』にて魔獣を召喚する予定だっのに、何がどうなったのか魔族を統べる魔王クロノを召喚してしまう。
訳も分からず契約してしまったスズネであったが、幼馴染みのミリア、性格に難ありの天才魔法師、身体の頑丈さだけが取り柄のドワーフ、見習い聖騎士などなどたくさんの仲間たちと共に冒険の日々を駆け抜けていく。
そして・・・スズネと魔王クロノ。
この二人の出逢いによって、世界を巻き込む運命の歯車がゆっくりと動き出す。
■毎週月曜と金曜に更新予定です。
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
異国妃の宮廷漂流記
花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。
夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。
いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。
これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が、自ら絆を紡ぎ、愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの物語。ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、異国妃のサバイバル宮廷譚。最後はハッピーエンドです。
※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。
© 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる