ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第二章 動き出す狂気【過去 宝田羽衣】

第二章 動き出す狂気【過去 宝田羽衣】1

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【1】

「うわぁ、本当に来ちゃったねぇ――」

 ミノタウロスの森の入り口までやってきて、気味の悪い色をした鳥居を見上げる。

 普段は眼鏡をかけているのだが、今日は思い切ってコンタクトを入れてきた。一応、目的地が目的地であるがゆえに、そこまで可愛らしい格好はできなかったが、しかしその中でも最大限に気を遣い、それっぽくお洒落をしたつもりだ。化粧だってばっちりだ。

「ってか、他のみんな置いてきて良かったのかな?」

 彼女の隣にいた角刈りの男子が呟いた。夜――という魔力は不思議なものであり、普段からカッコいいと思っているというのに、その横顔が今日はいつもより男らしく見える。彼からして、自分はどんなふうに映っているのだろうか。

 宝田羽衣たからだうい――。ミノタウロスの森に肝試しに向かうというシチュエーションを利用して、今日こそ片想い中の谷惇たにじゅんと特別な関係になってやろうと思っている。だからこそ、他のメンバーには悪かったが、一足先にここへと来てやったのだ。わざと、谷には集合時間を本来の時間より早いものにして伝えてあった。

「大丈夫だよ。それよりもさ、思った以上に雰囲気出てない?」

 どさくさに紛れて、そっと谷のそばへと寄る。いつもなら、絶対にこんなことはできないのであろうが、今日の自分はいつもの自分とは違う。ミノタウロスの森の魔力が味方してくれているのだ。

「まぁ、確かに色々と変な噂がある場所だからな。小さい頃は本当に言いつけを守ってたわけだし――だからかな、変な罪悪感みたいなものはあるよ」

 谷は野球をやっていて、その体にはしっかりとした筋肉がついている。それを触るような流れに持っていきつつ、羽衣はとうとう谷と腕を組んだ。

「谷君は鍛えてるから大丈夫だよ。いざとなったら守ってもらおう」

 突然の不意打ちとはいえ、女子に頼られる――しかも、腕に胸が当たっているような状況で、嫌な気になる男などいないだろう。どこぞの雑誌で読んだやり方ではあるが、それは谷にも充分すぎるほど通用したらしい。

「ま、まぁ――そういうことなら任せとけ。何が出てくるのかは知らないけど」

 まんざらでもなさそうに答える谷は、羽衣の腕を振り解こうともせずに鳥居を見上げている。

「とりあえず、中――入ってみようか」 

 ここで突っ立っていても仕方がないし、ゆっくりしていると置いてきた奴らが追いついてしまうかもしれない。谷と二人きりでいる必要のある羽衣からすれば、今は一刻も早くミノタウロスの森に入ってしまいたかった。
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