46 / 203
第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】
4
しおりを挟む
自分で自覚しているよりも、さっきの映像は衝撃的だったのであろうか。お茶を流し込んで気づいたのだが、どうやら喉がカラカラに渇いていたらしい。
正直なところ一本目は実に平和だったと思う。赤松朱里が単独でミノタウロスの森に向かう前で終わるから当然だ。もちろん、二本目に関しても、赤松朱里にいたっては、怪我などはしていたようだが平和だった。
問題は二本目の後半だ。赤松朱里の、のほほんとした感じの映像から一転し、かなりのハイペースであり得ないことが起きてしまった。
登場人物は宝田羽衣という女の子と谷惇という男の子。いや、女の子、男の子と表現するほど幼くはなかったか。映像で見た限り、中学生後半から高校生前半くらいの年齢だろう。使用している移動手段が主に自転車ということから察するに、中学生後半くらいだと推察するのが妥当か。
谷惇は宝田羽衣にいいところを見せようとしたのか、音がした茂みのほうへと先行して捜索へと向かい、そして消息を経ってしまった。残された宝田羽衣も、何者かによって森の奥へと引き込まれてしまった。映像が途切れる直前に見えた牛の顔。まさか、あの森には本当にミノタウロスがいるというのか。だとしたら、宝田羽衣と谷惇はどうなってしまったのだろうか。
「それじゃ、行こうか――」
大和田はそう言うと、カウンターらしきところに白いプレートを立てた。
――不在です。ここでお待ちいただくか、緊急の方は下記電話番号まで。
もはや、これは田舎の駐在所ならではの必殺技ともいえよう。特に何事も起きない田舎だからこそ、駐在所を留守にすることができる。交番ならば、交代要員が絶対にいるだろうし、いざという時のためにも、そこを留守にするなんてことはない。基本的に平和で、何事も起きないことが当たり前の田舎だからこそ、通用するものである。また、これに文句を言う人もいないというのも、田舎らしいと言えよう。良く言えば穏やか。悪く言えば警戒心がまるでない。
「あの、留守にしても大丈夫なんですか?」
一応、社交辞令的なもので聞いておく。当然のように「大丈夫、大丈夫。どうせ何にも起きねぇから」との言葉が大和田から返ってきた。
元より一人で調べて回るつもりでいたが、いざ大和田が力を貸してくれるとなると、やはり一人では心細くなってしまう。しかも、このは小さい頃に住んでいた場所であり、子供心に怖かった場所なども多く存在する。杉谷の神社なんて、それの代表格とも言えるだろう。幼き日の記憶だからこそ、頭の根底にこびりついており、それが良くも悪くも記憶を改竄していたりする。
正直なところ一本目は実に平和だったと思う。赤松朱里が単独でミノタウロスの森に向かう前で終わるから当然だ。もちろん、二本目に関しても、赤松朱里にいたっては、怪我などはしていたようだが平和だった。
問題は二本目の後半だ。赤松朱里の、のほほんとした感じの映像から一転し、かなりのハイペースであり得ないことが起きてしまった。
登場人物は宝田羽衣という女の子と谷惇という男の子。いや、女の子、男の子と表現するほど幼くはなかったか。映像で見た限り、中学生後半から高校生前半くらいの年齢だろう。使用している移動手段が主に自転車ということから察するに、中学生後半くらいだと推察するのが妥当か。
谷惇は宝田羽衣にいいところを見せようとしたのか、音がした茂みのほうへと先行して捜索へと向かい、そして消息を経ってしまった。残された宝田羽衣も、何者かによって森の奥へと引き込まれてしまった。映像が途切れる直前に見えた牛の顔。まさか、あの森には本当にミノタウロスがいるというのか。だとしたら、宝田羽衣と谷惇はどうなってしまったのだろうか。
「それじゃ、行こうか――」
大和田はそう言うと、カウンターらしきところに白いプレートを立てた。
――不在です。ここでお待ちいただくか、緊急の方は下記電話番号まで。
もはや、これは田舎の駐在所ならではの必殺技ともいえよう。特に何事も起きない田舎だからこそ、駐在所を留守にすることができる。交番ならば、交代要員が絶対にいるだろうし、いざという時のためにも、そこを留守にするなんてことはない。基本的に平和で、何事も起きないことが当たり前の田舎だからこそ、通用するものである。また、これに文句を言う人もいないというのも、田舎らしいと言えよう。良く言えば穏やか。悪く言えば警戒心がまるでない。
「あの、留守にしても大丈夫なんですか?」
一応、社交辞令的なもので聞いておく。当然のように「大丈夫、大丈夫。どうせ何にも起きねぇから」との言葉が大和田から返ってきた。
元より一人で調べて回るつもりでいたが、いざ大和田が力を貸してくれるとなると、やはり一人では心細くなってしまう。しかも、このは小さい頃に住んでいた場所であり、子供心に怖かった場所なども多く存在する。杉谷の神社なんて、それの代表格とも言えるだろう。幼き日の記憶だからこそ、頭の根底にこびりついており、それが良くも悪くも記憶を改竄していたりする。
0
あなたにおすすめの小説
僕《わたし》は誰でしょう
紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※表紙イラスト=ミカスケ様
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
『 ゆりかご 』
設楽理沙
ライト文芸
- - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - -
◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
――――
「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語
『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』
過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、
そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。
[大人の再生と静かな愛]
“嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”
読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。
――――
・・・・・・・・・・
芹 あさみ 36歳 専業主婦 娘: ゆみ 中学2年生 13才
芹 裕輔 39歳 会社経営 息子: 拓哉 小学2年生 8才
早乙女京平 28歳 会社員
(家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト)
浅野エリカ 35歳 看護師
浅野マイケル 40歳 会社員
❧イラストはAI生成画像自作
【完結】佐渡ヶ島のエレーナ少佐 (近未来戦記①)
✿モンテ✣クリスト✿
ライト文芸
2025年初冬、ロシア連邦東部軍管区は佐渡ヶ島に侵攻した。
2025年初冬、ウクライナ戦役が膠着状態の中、ロシア連邦東部軍管区(旧極東軍管区)は突如北海道北部と佐渡ヶ島に侵攻。総責任者は東部軍管区ジトコ大将だった。北海道はダミーで狙いは佐渡ヶ島のガメラレーダーであった。これは中国の南西諸島侵攻と台湾侵攻を援助するための密約のためだった。同時に北朝鮮は38度線を越え、ソウルを占拠した。在韓米軍に対しては戦術核の電磁パルス攻撃で米軍を朝鮮半島から駆逐、日本に退避させた。
その中、欧州ロシアに対して、東部軍管区ジトコ大将はロシア連邦からの離脱を決断、中央軍管区と図ってオビ川以東の領土を東ロシア共和国として独立を宣言、日本との相互安保条約を結んだ。
佐渡ヶ島侵攻(通称サドガシマ作戦、Operation Sadogashima)の副指揮官はジトコ大将の娘エレーナ少佐だ。エレーナ少佐率いる東ロシア共和国軍女性部隊二千人は、北朝鮮のホバークラフトによる上陸作戦を陸自水陸機動団と阻止する。
※このシリーズはカクヨム版「サドガシマ作戦(https://kakuyomu.jp/works/16818093092605918428)」と重複しています。ただし、カクヨムではできない説明用の軍事地図、武器詳細はこちらで掲載しております。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
出ていけ、と言ったのは貴方の方です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
あるところに、小さな領地を治める男爵家がいた。彼は良き領主として領民たちから慕われていた。しかし、唯一の跡継ぎ息子はどうしようもない放蕩家であり彼の悩みの種だった。そこで彼は息子を更生させるべく、1人の女性を送りつけるのだったが――
※コメディ要素あり
短編です。あっさり目に終わります
他サイトでも投稿中
新しい家族は保護犬きーちゃん
ゆきむらさり
エッセイ・ノンフィクション
〔あらすじ〕📝🐶初めて保護犬ちゃんを迎え入れる我が家。
過去の哀しい実情のせいで人間不信で怯える保護犬きーちゃん。
初日から試行錯誤の日々と保護犬きーちゃん
がもたらす至福の日々。
◇
✴️保護犬ちゃん達の過去・現在の実情の記述もあります🐾
✴️日々の些細な出来事を綴っています。現在進行形のお話となります🐾
✴️🐶挿絵画像入りです。
✴️拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇♀️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる