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第四章 ミノタウロスはいる【現在 七色七奈】
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おそらくは、ビデオの登場人物とは別人。さしずめ、私達が俯瞰視点で観る映像は、再現映像のようなものか。赤松朱里だけは本人だと思うのだが。
「それで湯川さん、その――亡くなられた友人って?」
ほぼ初対面であり、赤松朱里と面識があるだけの私が、果たしてこんなことを聞いていいのだろうか。そんな疑問はあったものの、なによりも目の前に、ビデオの中に出てくる登場人物がいるという事実のほうが強かった。
「たくさん亡くなりましたけど、やっぱり一番身近だった幼馴染が亡くなったのは、俺の人生を変えたと思います。あの時、俺が勝手な行動を取らなきゃ、あいつは助かったかもしれない。今でも夢に見るんだ。あの時のことを」
湯川はあえて名前を出さなかったが、しかし幼馴染という設定の登場人物は一人しかいなかったはずだ。
――丸山夏帆。おそらく、湯川が言っている幼馴染は、その人物とイコールになっているはずだ。
「他には誰が? そもそも何人で――」
追いかけるようにして大和田が問うた時のことだった。湯川のほうから電話の着信音らしきものが鳴り始める。湯川が「すいません」と断ってからスマホを取り出し、今しがたの口調とはまるで違うよそ行きの声で対応する。接客業ゆえの職業病のようなものだろう。
湯川の電話が終わるのを待つ私達。しばらくすると、湯川が電話を切る。
「申し訳ないけど、店に至急戻らないと。ミノタウロスの森については――店が終わってからでも?」
こちらから詳しく話を聞かせてもらう流れに持って行きたかったが、こちらからの申し出もなしに、湯川は時間を作ってくれるようだ。私は名刺を取り出した。
「あの、それじゃあ、時間ができたら連絡ください。こっちから伺いますから」
私の名刺を受け取ってくれた湯川は「こちらに記載されている番号に連絡すれば?」と私に問うてくる。私は小さく頷くと、最後に「お願いします」と付け足した。
目的意識を失いつつあることを見透かされたかのごとく、ほとんど偶然という形で出会うことになった湯川智昭。彼の言い草では、どうやら犠牲者は一人ではないらしい。
「それじゃあ、店が終わったら連絡させてもらいます」
湯川はそう言うと、オカモチを片手に駐在所を出て行ってしまった。
「こういうのを巡り合わせって言うのかもしれないな――」
そう言いつつ、湯川はラーメンの蓋代わりにかぶせられているラップを器用に外す。
「とりあえず麺がのびる前に食べちまおう。ここのは、配達でも充分に美味いから」
「それで湯川さん、その――亡くなられた友人って?」
ほぼ初対面であり、赤松朱里と面識があるだけの私が、果たしてこんなことを聞いていいのだろうか。そんな疑問はあったものの、なによりも目の前に、ビデオの中に出てくる登場人物がいるという事実のほうが強かった。
「たくさん亡くなりましたけど、やっぱり一番身近だった幼馴染が亡くなったのは、俺の人生を変えたと思います。あの時、俺が勝手な行動を取らなきゃ、あいつは助かったかもしれない。今でも夢に見るんだ。あの時のことを」
湯川はあえて名前を出さなかったが、しかし幼馴染という設定の登場人物は一人しかいなかったはずだ。
――丸山夏帆。おそらく、湯川が言っている幼馴染は、その人物とイコールになっているはずだ。
「他には誰が? そもそも何人で――」
追いかけるようにして大和田が問うた時のことだった。湯川のほうから電話の着信音らしきものが鳴り始める。湯川が「すいません」と断ってからスマホを取り出し、今しがたの口調とはまるで違うよそ行きの声で対応する。接客業ゆえの職業病のようなものだろう。
湯川の電話が終わるのを待つ私達。しばらくすると、湯川が電話を切る。
「申し訳ないけど、店に至急戻らないと。ミノタウロスの森については――店が終わってからでも?」
こちらから詳しく話を聞かせてもらう流れに持って行きたかったが、こちらからの申し出もなしに、湯川は時間を作ってくれるようだ。私は名刺を取り出した。
「あの、それじゃあ、時間ができたら連絡ください。こっちから伺いますから」
私の名刺を受け取ってくれた湯川は「こちらに記載されている番号に連絡すれば?」と私に問うてくる。私は小さく頷くと、最後に「お願いします」と付け足した。
目的意識を失いつつあることを見透かされたかのごとく、ほとんど偶然という形で出会うことになった湯川智昭。彼の言い草では、どうやら犠牲者は一人ではないらしい。
「それじゃあ、店が終わったら連絡させてもらいます」
湯川はそう言うと、オカモチを片手に駐在所を出て行ってしまった。
「こういうのを巡り合わせって言うのかもしれないな――」
そう言いつつ、湯川はラーメンの蓋代わりにかぶせられているラップを器用に外す。
「とりあえず麺がのびる前に食べちまおう。ここのは、配達でも充分に美味いから」
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