118 / 203
第四章 ミノタウロスはいる【過去 赤松朱里】
2
しおりを挟む
「この先に山小屋を見つけた。とりあえずそこまで向かおう」
湯川が言い、それに従って朱里は頷いた。ロープはきっと、そこで調達したに違いない。湯川と夏帆の後に続こうと足を踏み出した時、ふと耳に違和感があった。
「――今、何か聞こえなかった?」
朱里の言葉に足を止める湯川と夏帆。両名は顔を見合わせて首を傾げる。
「いや、特に何も聞こえなかったが――」
そんなはずはない。確かにこの耳には聞こえたのだ。女性の悲鳴のようなものが。しかし、それを言い出すと、いつものように空気が読めないということになってしまうかもしれない。だから、あえて自分の意見を引っ込めた。
それに、そんなことを言ってしまったら、中断して帰宅する流れになってしまうかもしれない。それは、なんとしてでも避けたかった。わざわざビデオカメラまで引っ張り出してきたのだ。せめて、記録にしっかりと残せるものを、それなりに残さねば。
もし、すごいものが撮れたら、投稿物のテレビ番組に投稿してやろう。きっとものすごい反響となるだろう。これを全国に向けて発信できるような仕組みがあればいいのに。
ハンディカムビデオが世に普及してしばらく。まさかこの時、ようやく世に出ようとしつつあった携帯電話が、後にハンディカムビデオと同様の役割を果たすことになるだろうとは、誰が予測できたことだろうか。
湯川達についていくことしばらく。いかにもといった感じの山小屋が姿を現した。森が途切れたのは、ほんの少しの間だけで、山小屋は木々の枝に包まれるようにして、その場に佇んでいた。
「それにしても妙だな。みんな、俺達より先に行ったはずなのに、誰かがここにきた形跡がない」
湯川は山小屋を見上げながら呟いた。つられて山小屋を見上げてみる。確かに、先に誰かが足を踏み入れたような形跡は残されていない。
「となると、どこかでばったり会っていてもおかしくないってことだよね?」
「あぁ、基本的にここまでは一本道だ。もちろん、わざとルートを外れてしまえば、俺達とすれ違うこともあり得るが――ごく普通に考えれば、俺達とは必ずどこかで合流するはずなんだ」
しかしながら、実際のところ朱里達は誰とも合流していなかった。この状況は明らかにおかしかった。
「先に来た人達がルートを外れたってこと?」
朱里の言葉を間髪入れずに拾い上げる湯川。夏帆は不安げな表情を浮かべている。
「その通りだな。少なくとも、俺達は正規のルートからは外れていないだろうから、あちらがルートを外れたと考えるべきだ」
湯川が言い、それに従って朱里は頷いた。ロープはきっと、そこで調達したに違いない。湯川と夏帆の後に続こうと足を踏み出した時、ふと耳に違和感があった。
「――今、何か聞こえなかった?」
朱里の言葉に足を止める湯川と夏帆。両名は顔を見合わせて首を傾げる。
「いや、特に何も聞こえなかったが――」
そんなはずはない。確かにこの耳には聞こえたのだ。女性の悲鳴のようなものが。しかし、それを言い出すと、いつものように空気が読めないということになってしまうかもしれない。だから、あえて自分の意見を引っ込めた。
それに、そんなことを言ってしまったら、中断して帰宅する流れになってしまうかもしれない。それは、なんとしてでも避けたかった。わざわざビデオカメラまで引っ張り出してきたのだ。せめて、記録にしっかりと残せるものを、それなりに残さねば。
もし、すごいものが撮れたら、投稿物のテレビ番組に投稿してやろう。きっとものすごい反響となるだろう。これを全国に向けて発信できるような仕組みがあればいいのに。
ハンディカムビデオが世に普及してしばらく。まさかこの時、ようやく世に出ようとしつつあった携帯電話が、後にハンディカムビデオと同様の役割を果たすことになるだろうとは、誰が予測できたことだろうか。
湯川達についていくことしばらく。いかにもといった感じの山小屋が姿を現した。森が途切れたのは、ほんの少しの間だけで、山小屋は木々の枝に包まれるようにして、その場に佇んでいた。
「それにしても妙だな。みんな、俺達より先に行ったはずなのに、誰かがここにきた形跡がない」
湯川は山小屋を見上げながら呟いた。つられて山小屋を見上げてみる。確かに、先に誰かが足を踏み入れたような形跡は残されていない。
「となると、どこかでばったり会っていてもおかしくないってことだよね?」
「あぁ、基本的にここまでは一本道だ。もちろん、わざとルートを外れてしまえば、俺達とすれ違うこともあり得るが――ごく普通に考えれば、俺達とは必ずどこかで合流するはずなんだ」
しかしながら、実際のところ朱里達は誰とも合流していなかった。この状況は明らかにおかしかった。
「先に来た人達がルートを外れたってこと?」
朱里の言葉を間髪入れずに拾い上げる湯川。夏帆は不安げな表情を浮かべている。
「その通りだな。少なくとも、俺達は正規のルートからは外れていないだろうから、あちらがルートを外れたと考えるべきだ」
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
異国妃の宮廷漂流記
花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。
夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。
いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。
これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が、自ら絆を紡ぎ、愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの物語。ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、異国妃のサバイバル宮廷譚。最後はハッピーエンドです。
※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。
© 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる