119 / 203
第四章 ミノタウロスはいる【過去 赤松朱里】
3
しおりを挟む
本当にそう思ってるのだろうか。だって、ここまでのルートは基本的に一本道。ルートを外れるにしても、意図的に藪の中にでも入って行かない限り、それは不可能に近い。すなわち、単純に別のルートに向かうためには、心理的、物理的な障害が発生するのだ。
「それって、意図的にルートから外れたって考えるべきなのかな?」
別働隊は他のルートを選択した。それゆえに、自分達とはすれ違いにならなかった。湯川の推測があまりにもお粗末で、どうにも着地点として納得できない朱里は、あえて湯川に疑問を投げかける。
「意図的じゃなければ、必ず俺達とすれ違うはずなんだよ。ここまでのルートを見る限り、わざとルートを外れようとでもしない限り、別ルートへ入ることはありえない。意図的じゃなくても、何かしらの理由で別ルートに向かわざるを得なくなったのかもしれない」
湯川の言っていることは、そのほとんどが憶測というやつである。確証があって言ってることは皆無と言えよう。
「本当にそうだとしたらどうする? 助けに向かったほうがいいんじゃない?」
ルートを変更せざるを得ない理由。それは様々かもしれないが、その理由を考えれば、助けにいかなければならない状況であることは明白だろう。
それなのに、何を湯川は呑気なことを言っているのか。
「赤松。お前の言いたいことは分からなくはない。ただ、現状から推察して、そんな理由でお前達にリスクを背負わせたくないんだ。この森がどれだけ広いのか分からないし、どこに危険が潜んでいるかも分からない。少しルートを外れたら、その先が渓谷ってことだって充分にあり得るんだよ。だから、今は正規のルート以外を探索するわけにはいかないんだ」
そう言う湯川にビデオカメラを向けると、本人は少し嫌そうな顔をして、カメラに手をかざした。
「赤松、お前は迷わないように周囲を撮影してくれればいい。俺を撮る必要はない」
湯川は極めて冷静だった。そして、幼馴染の夏帆は、湯川がこのような時に頼りになることを知っているのだろう。こんな状況なのに、随分と余裕がありそうだ。
「それじゃあ、改めて山小屋の中で話し合おう。もし、他の連中が見つからなかったら、大人達に助けを求めなければならないからな」
大人に助けを求める。それはすなわち、親からこっぴどく叱られることを意味する。だからミノタウロスの森には行くなと言ったはずだ――なんて叱責されるに違いない。
「それって、意図的にルートから外れたって考えるべきなのかな?」
別働隊は他のルートを選択した。それゆえに、自分達とはすれ違いにならなかった。湯川の推測があまりにもお粗末で、どうにも着地点として納得できない朱里は、あえて湯川に疑問を投げかける。
「意図的じゃなければ、必ず俺達とすれ違うはずなんだよ。ここまでのルートを見る限り、わざとルートを外れようとでもしない限り、別ルートへ入ることはありえない。意図的じゃなくても、何かしらの理由で別ルートに向かわざるを得なくなったのかもしれない」
湯川の言っていることは、そのほとんどが憶測というやつである。確証があって言ってることは皆無と言えよう。
「本当にそうだとしたらどうする? 助けに向かったほうがいいんじゃない?」
ルートを変更せざるを得ない理由。それは様々かもしれないが、その理由を考えれば、助けにいかなければならない状況であることは明白だろう。
それなのに、何を湯川は呑気なことを言っているのか。
「赤松。お前の言いたいことは分からなくはない。ただ、現状から推察して、そんな理由でお前達にリスクを背負わせたくないんだ。この森がどれだけ広いのか分からないし、どこに危険が潜んでいるかも分からない。少しルートを外れたら、その先が渓谷ってことだって充分にあり得るんだよ。だから、今は正規のルート以外を探索するわけにはいかないんだ」
そう言う湯川にビデオカメラを向けると、本人は少し嫌そうな顔をして、カメラに手をかざした。
「赤松、お前は迷わないように周囲を撮影してくれればいい。俺を撮る必要はない」
湯川は極めて冷静だった。そして、幼馴染の夏帆は、湯川がこのような時に頼りになることを知っているのだろう。こんな状況なのに、随分と余裕がありそうだ。
「それじゃあ、改めて山小屋の中で話し合おう。もし、他の連中が見つからなかったら、大人達に助けを求めなければならないからな」
大人に助けを求める。それはすなわち、親からこっぴどく叱られることを意味する。だからミノタウロスの森には行くなと言ったはずだ――なんて叱責されるに違いない。
0
あなたにおすすめの小説
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
マインハールⅡ
熒閂
キャラ文芸
天尊との別れから約一年。
高校生になったアキラは、天尊と過ごした日々は夢だったのではないかと思いつつ、現実感のない毎日を過ごしていた。
天尊との思い出をすべて忘れて生きようとした矢先、何者かに襲われる。
異界へと連れてこられたアキラは、恐るべき〝神代の邪竜〟の脅威を知ることになる。
――――神々が神々を呪う言葉と、誓約のはじまり。
〈時系列〉
マインハール
↓
マインハールⅡ
↓
ゾルダーテン 獣の王子篇( Kapitel 05 )
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら
フオツグ
恋愛
「私、異世界でも推しを愛でます!」
大好きな女性向けスマホゲーム【夜空を彩るミルキーウェイ】の世界に、聖女として召喚された日本の女子高生・イオリ。
イオリの推しは敵のゾンビ男子・ノヴァ。不良そうな見た目でありながら、真面目な努力家で優しい彼にイオリは惚れ込んでいた。
しかし、ノヴァはチュートリアルで主人公達に倒され、以後ストーリーに一切出て来ないのであった……。
「どうして」
推しキャラ・ノヴァを幸せにすべく、限界オタク・イオリは異世界で奮闘する!
限界オタク聖女×拗らせゾンビ男子のピュアラブストーリー!
※この作品は小説家になろうにも掲載中です。
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる