ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第五章 時を越えた禁忌【現在 七色七奈】

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「鏑木孝義、細川茜の襲撃に関して、この3人にはアリバイがあるね。ちなみに、他には誰がいたっけ?」

 大和田の言葉に、私はチョークを走らせる。

「誰よりも先にミノタウロスの森にやってきたであろう、宝田羽衣と谷惇です。この2人に関しては、生存が曖昧な感じになっています。谷惇は忽然と宝田羽衣の目の前から姿を消した。そして、宝田羽衣自身は、ミノタウロスと思われる人物と遭遇した場面が最期で、それ以降、この両名は登場していません。宝田羽衣は死んだと考えていいでしょうけど」

 現時点で登場している人物は、これで全員だ。宝田羽衣はほぼ死亡していることが確定。谷惇については微妙ではあるが、まだ生存している可能性はゼロではない。

 書き出した登場人物の名前は全員で9人。このうち、死亡がほぼ確定しているのは、依田由美香、細川茜、鏑木孝義、宝田羽衣の4人。生存が定かではないのが高田富臣と谷惇の2人。生存が確定しており、なおかつアリバイが確実にあるのが、赤松朱里、湯川智昭、丸山夏帆の3人だ。

「となると、ミノタウロスではないことが確定するのは、すでに殺されてしまったと思われる依田由美香、細川茜、鏑木孝義、宝田羽衣の4人だけか」

 大和田がふらりと奥のほうに姿を消したと思ったら、新しい缶ビールを片手に戻ってきた。

「赤松朱里、湯川智昭、丸山夏帆にもアリバイがありますから、この3人もミノタウロスではないでしょう」

 おそらく犯人ではない人間の名前に丸をつけていく。最終的に名前が丸で囲われなかった人物は2人。すなわち、高田富臣と谷惇の2人である。この2人のどちらかがミノタウロスということになってしまう。

「高田富臣か谷惇のどちらかがミノタウロス――ってことになるか。もしかすると、全く関係のない第三者が犯人って可能性もゼロじゃないだろうが」

 大和田の言葉に頷く。確かにB級のホラーなんかではありそうな展開ではある。しかしながら、そうなると、ミノタウロスの正体を問うこと自体がアンフェアになってしまう。

 ――あの設問をするということは、それなりの根拠があるに違いない。まるで根拠もなしに、ミノタウロスの正体を問うのは、あまりにもお粗末である。

「ビデオテープを見ている限り、おそらくミノタウロスが第三者という着地点にはならないのではないかと私は考えています」

「――となると、改めて明日調べてみないとね。湯川智昭は実在したし、しかもミノタウロスの森で人が死んでいることも認めた。だったら、事件として扱われている可能性が高いはず」
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