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第五章 時を越えた禁忌【現在 七色七奈】
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ふと、真っ暗だった画面が元に戻る。それは、どうやら山小屋の中のようであり、カメラは行くことができなくなってしまった2階を見上げるようにしている。画面の外からは、女性の泣き声のようなものが聞こえた。
私と大和田。また改めて映像が出るとは思っていなかったからこそ、きっとはたから見ても凄い食いつきだったに違いない。事実、食い入るように画面を眺める私と大和田がいた。
しばらくは、全く同じ画面を映したままだった。まるで静止画を見せられているような感覚であるが、画面の向こう側で聞こえる泣き声は、多少なりとも変化というか抑揚があり、それのおかげで時間がしっかり流れていることを確信することができた。
どれくらい、同じ角度で、同じところを映し続けていたのだろう。急に画面の目の前に白い手が伸びて来たと思ったら、それはカメラを拾い上げ、そして目を真っ赤に腫らした赤松朱里を映し出した。自撮りするかのように自分へとカメラを向ける赤松朱里は、多少の化粧をしているからか、私の知っている彼女より大人びていた。もっとも、涙でアイラインなどがぐしゃぐしゃになってしまっていたが。
「どうしよう……どうしよう」
まるで、画面の外にいる私達に助けを求めるかのごとく、小声で何度も同じ言葉を繰り返す。その姿を見て、私は彼女の性格を思い出した。あぁ、確か何か困った時は、このような態度を見せて、誰かに「どうかしたのか?」と声をかけられるのを待つような子だった。困ったことがあったら、自ら助けを求めればいいのに、どこか遠回しな子だったのだ。
「どうしよう……」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を歪ませる赤松朱里の様子は、尋常ではないことが起きていることを暗に示唆していた。これがテレビ電話だったら、今すぐにでも周囲を見せろと言っていたことであろう。当然ながら、私の声なんて届きやしないし、どうこう言ったところで、きっと赤松朱里の涙顔しか見ることができないのであろう。
このまま湯川が帰ってくるまで待つしかないのだろうか。これでは、ずっと真っ暗な画面が映っていた状況と、さほど変わらないのではないか。いいや、まだ真っ暗な画面のままのほうがいい。少なくとも、もどかしかさは感じないだろうから。
赤松朱里はしばらくすると、ビデオかめらを持ち替えたようだった。画面が素早く一回転すると、その先にとんでもないものを映し出した。
――それは、血の海の中に倒れる丸山夏帆の亡骸だった。
私と大和田。また改めて映像が出るとは思っていなかったからこそ、きっとはたから見ても凄い食いつきだったに違いない。事実、食い入るように画面を眺める私と大和田がいた。
しばらくは、全く同じ画面を映したままだった。まるで静止画を見せられているような感覚であるが、画面の向こう側で聞こえる泣き声は、多少なりとも変化というか抑揚があり、それのおかげで時間がしっかり流れていることを確信することができた。
どれくらい、同じ角度で、同じところを映し続けていたのだろう。急に画面の目の前に白い手が伸びて来たと思ったら、それはカメラを拾い上げ、そして目を真っ赤に腫らした赤松朱里を映し出した。自撮りするかのように自分へとカメラを向ける赤松朱里は、多少の化粧をしているからか、私の知っている彼女より大人びていた。もっとも、涙でアイラインなどがぐしゃぐしゃになってしまっていたが。
「どうしよう……どうしよう」
まるで、画面の外にいる私達に助けを求めるかのごとく、小声で何度も同じ言葉を繰り返す。その姿を見て、私は彼女の性格を思い出した。あぁ、確か何か困った時は、このような態度を見せて、誰かに「どうかしたのか?」と声をかけられるのを待つような子だった。困ったことがあったら、自ら助けを求めればいいのに、どこか遠回しな子だったのだ。
「どうしよう……」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を歪ませる赤松朱里の様子は、尋常ではないことが起きていることを暗に示唆していた。これがテレビ電話だったら、今すぐにでも周囲を見せろと言っていたことであろう。当然ながら、私の声なんて届きやしないし、どうこう言ったところで、きっと赤松朱里の涙顔しか見ることができないのであろう。
このまま湯川が帰ってくるまで待つしかないのだろうか。これでは、ずっと真っ暗な画面が映っていた状況と、さほど変わらないのではないか。いいや、まだ真っ暗な画面のままのほうがいい。少なくとも、もどかしかさは感じないだろうから。
赤松朱里はしばらくすると、ビデオかめらを持ち替えたようだった。画面が素早く一回転すると、その先にとんでもないものを映し出した。
――それは、血の海の中に倒れる丸山夏帆の亡骸だった。
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