ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】

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【2】

 お互いに着替えを済ませて車に乗り込んだ。寝起きの状態から、慌てて車に乗り込んだものだから、文字通り着の身着のまま――という状態である。それでも、財布が入ったバックとスマホだけは忘れないのだから、大したものだと自分で褒めてやりたい。

「この時間なら問題ないが、この辺りの人達に見つかったら、ミノタウロスの森に入ることは難しいかもしれない。あくまでも、あそこに入ることは禁忌であって、快く思う人なんていないと考えておいたほうがいい」

 警察官の格好に着替えた大和田は、助手席のシートベルトを締めながら言う。本当ならコンビニに寄って、朝食を――なんて話をしていた大和田であるが、あそこの店員さんをきっかけに情報が流出するのはまずいと考えたのであろう。もはや、朝食の話は出てこなくなっていた。

 いくら緊急事態であったとしても、腹が減ってはなんとやら――というやつだ。確かに小腹は空いているし、朝食が目の前にあったら、ぺろりと食べてしまうことだろう。しかしながら、今はそれどころではない。私のことをミノタウロスが待っているのかもしれないのだから。

 エンジンをかけると、まだ朝の雰囲気漂う集落の中を走り出した。

「それで、全く説明がなくて分からないんだけど、ミノタウロスが誰か分かったって?」

 外の景色を眺めつつ大和田が問うてくる。ハンドルを握る私は、どこから話すべきか迷ったが、とりあえず直感的に抱いた推測を披露することにした。

「えぇ、簡単な消去法なんです。それをすることで、ミノタウロスが誰なのかは分かります」

「いや、その考え方をすると、ミノタウロスは安否が定かではなく、またアリバイのない谷惇ということになるんじゃ――」

 普通に考える消去法とは、それが可能だった人物を洗い出して、ミノタウロスと照らし合わせる手法だ。しかしながら、私はあの写真で気づいてしまったのだ。そもそもの大前提から間違っていることに。

「いいえ、違うんです。そうじゃないんです」

 私がそう返すと、大和田は小さく溜め息を漏らした。

「でも、それ以外の人間は、ミノタウロスに殺されてしまったか、他の人間と一緒に行動していることで、俗にいうアリバイというものがある。こればかりはゆるぎのない事実だ」

 これまで見てきたビデオテープ。それを素直に見るのであれば、確かにそれはゆるぎのない事実になってしまうのかもしれない。しかし――そこに、ある考え方を加えると、状況は劇的に変化してしまう。
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