ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】

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 高田富臣達がミノタウロスの森に入った日と、湯川智昭達がミノタウロスの森に入った日は同日ではない。おそらく、同じ時期ではあるのだろうが、まるで違う日に入っているのだ。いや――下手をすると、異なる年の同じ日という可能性が高い。

「あのビデオテープは、登場人物が総勢で9人になる物語ではなく、登場人物はそれぞれその半分ずつの――いや、待ってくれ。そう考えると矛盾が生じないか?」

 途中までは納得したかの様子だった大和田であるが、ふと何かに気づいたのか、小さく溜め息を漏らし続く続ける。

「湯川智昭達は道中の途中で赤松朱里に会っている。そんな彼女のことを、高田富臣達は作業小屋から眺めて馬鹿にしていただろ? となると、たまたま湯川智昭達と高田富臣達が合流できなかっただけ――とは考えられないか?」

 もう、そこまで行けば答えは目前だというのに。大和田のすっとぼけた姿に、私はもどかしさを覚える。

 これらの物語の登場人物は、おそらく4人ずつ。湯川智昭、丸山夏帆、宝田羽衣、谷惇でひとつのグループ。もうひとつのグループが高田富臣、依田由美香、鏑木孝義、細川茜。集合写真から察するに、湯川智昭達は――赤松朱里にとって中学校時代の同級生なのであろう。となると、高田富臣達は高校時代の同級生か。

「赤松朱里が基準になってしまっているから、異なる時系列で起きていたものが、まるで同系列で起きていたことのように感じられるんですよ。つまりです――赤松朱里に限っては、別時系列で行われていた、ふたつの物語に参加しているんです。もっと分かりやすく言えば、ビデオテープに残されていた物語は、湯川智昭、丸山夏帆、宝田羽衣、谷惇、そして赤松朱里の5人でひとつの物語。高田富臣、依田由美香、鏑木孝義、細川茜、赤松朱里の5人で、もうひとつの物語になっているんです」

 懸命な説明のおかげで、ようやく大和田にも私の意図が伝わったらしい。納得したかのように頷くと、おそらく自分の中で整理するためだろう。ぽつりと呟き落とす。

「赤松朱里が共通の登場人物になっていたから、ふたつの物語が同系列で進行しているように見えたのか」

 私は大和田の言葉に力強く頷いた。

「その通りです。そう考えると、赤松朱里のアリバイが崩れることになると思いませんか?」

 赤松朱里は途中から湯川智昭達と一緒にいた。そして、その間に鏑木孝義と細川茜がミノタウロスに襲撃されている。一見してアリバイが完璧に成立する状況であるが、それぞれで起きた日が異なるのであれば話も変わってくる。
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