159 / 203
第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】
13
しおりを挟む
高田富臣達がミノタウロスの森に入った日と、湯川智昭達がミノタウロスの森に入った日は同日ではない。おそらく、同じ時期ではあるのだろうが、まるで違う日に入っているのだ。いや――下手をすると、異なる年の同じ日という可能性が高い。
「あのビデオテープは、登場人物が総勢で9人になる物語ではなく、登場人物はそれぞれその半分ずつの――いや、待ってくれ。そう考えると矛盾が生じないか?」
途中までは納得したかの様子だった大和田であるが、ふと何かに気づいたのか、小さく溜め息を漏らし続く続ける。
「湯川智昭達は道中の途中で赤松朱里に会っている。そんな彼女のことを、高田富臣達は作業小屋から眺めて馬鹿にしていただろ? となると、たまたま湯川智昭達と高田富臣達が合流できなかっただけ――とは考えられないか?」
もう、そこまで行けば答えは目前だというのに。大和田のすっとぼけた姿に、私はもどかしさを覚える。
これらの物語の登場人物は、おそらく4人ずつ。湯川智昭、丸山夏帆、宝田羽衣、谷惇でひとつのグループ。もうひとつのグループが高田富臣、依田由美香、鏑木孝義、細川茜。集合写真から察するに、湯川智昭達は――赤松朱里にとって中学校時代の同級生なのであろう。となると、高田富臣達は高校時代の同級生か。
「赤松朱里が基準になってしまっているから、異なる時系列で起きていたものが、まるで同系列で起きていたことのように感じられるんですよ。つまりです――赤松朱里に限っては、別時系列で行われていた、ふたつの物語に参加しているんです。もっと分かりやすく言えば、ビデオテープに残されていた物語は、湯川智昭、丸山夏帆、宝田羽衣、谷惇、そして赤松朱里の5人でひとつの物語。高田富臣、依田由美香、鏑木孝義、細川茜、赤松朱里の5人で、もうひとつの物語になっているんです」
懸命な説明のおかげで、ようやく大和田にも私の意図が伝わったらしい。納得したかのように頷くと、おそらく自分の中で整理するためだろう。ぽつりと呟き落とす。
「赤松朱里が共通の登場人物になっていたから、ふたつの物語が同系列で進行しているように見えたのか」
私は大和田の言葉に力強く頷いた。
「その通りです。そう考えると、赤松朱里のアリバイが崩れることになると思いませんか?」
赤松朱里は途中から湯川智昭達と一緒にいた。そして、その間に鏑木孝義と細川茜がミノタウロスに襲撃されている。一見してアリバイが完璧に成立する状況であるが、それぞれで起きた日が異なるのであれば話も変わってくる。
「あのビデオテープは、登場人物が総勢で9人になる物語ではなく、登場人物はそれぞれその半分ずつの――いや、待ってくれ。そう考えると矛盾が生じないか?」
途中までは納得したかの様子だった大和田であるが、ふと何かに気づいたのか、小さく溜め息を漏らし続く続ける。
「湯川智昭達は道中の途中で赤松朱里に会っている。そんな彼女のことを、高田富臣達は作業小屋から眺めて馬鹿にしていただろ? となると、たまたま湯川智昭達と高田富臣達が合流できなかっただけ――とは考えられないか?」
もう、そこまで行けば答えは目前だというのに。大和田のすっとぼけた姿に、私はもどかしさを覚える。
これらの物語の登場人物は、おそらく4人ずつ。湯川智昭、丸山夏帆、宝田羽衣、谷惇でひとつのグループ。もうひとつのグループが高田富臣、依田由美香、鏑木孝義、細川茜。集合写真から察するに、湯川智昭達は――赤松朱里にとって中学校時代の同級生なのであろう。となると、高田富臣達は高校時代の同級生か。
「赤松朱里が基準になってしまっているから、異なる時系列で起きていたものが、まるで同系列で起きていたことのように感じられるんですよ。つまりです――赤松朱里に限っては、別時系列で行われていた、ふたつの物語に参加しているんです。もっと分かりやすく言えば、ビデオテープに残されていた物語は、湯川智昭、丸山夏帆、宝田羽衣、谷惇、そして赤松朱里の5人でひとつの物語。高田富臣、依田由美香、鏑木孝義、細川茜、赤松朱里の5人で、もうひとつの物語になっているんです」
懸命な説明のおかげで、ようやく大和田にも私の意図が伝わったらしい。納得したかのように頷くと、おそらく自分の中で整理するためだろう。ぽつりと呟き落とす。
「赤松朱里が共通の登場人物になっていたから、ふたつの物語が同系列で進行しているように見えたのか」
私は大和田の言葉に力強く頷いた。
「その通りです。そう考えると、赤松朱里のアリバイが崩れることになると思いませんか?」
赤松朱里は途中から湯川智昭達と一緒にいた。そして、その間に鏑木孝義と細川茜がミノタウロスに襲撃されている。一見してアリバイが完璧に成立する状況であるが、それぞれで起きた日が異なるのであれば話も変わってくる。
0
あなたにおすすめの小説
冷たい舌
菱沼あゆ
キャラ文芸
青龍神社の娘、透子は、生まれ落ちたその瞬間から、『龍神の巫女』と定められた娘。
だが、龍神など信じない母、潤子の陰謀で見合いをする羽目になる。
潤子が、働きもせず、愛車のランボルギーニ カウンタックを乗り回す娘に不安を覚えていたからだ。
その見合いを、透子の幼なじみの龍造寺の双子、和尚と忠尚が妨害しようとするが。
透子には見合いよりも気にかかっていることがあった。
それは、何処までも自分を追いかけてくる、あの紅い月――。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
異国妃の宮廷漂流記
花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。
夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。
いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。
これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が、自ら絆を紡ぎ、愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの物語。ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、異国妃のサバイバル宮廷譚。最後はハッピーエンドです。
※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。
© 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる