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第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】
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「さっきも行った通り、俺が先頭を務める。そこまで警戒する必要はないと思うけど、念のために後ろの警戒を頼む」
おそらくではあるが、ミノタウロスは単独で動いている。だから、注意すべきは、前方のみで構わないはずだ。ただ、高田のように罠にかかってしまう可能性も充分に考慮しなければならないだろう。もちろん、背後からの奇襲だって配慮せねばならない。
「分かった。行きましょう」
私が言うと、大和田は力強く頷き、そしてミノタウロスの森へと視線をやる。
「ここに勝手に入ったことがばれたら、俺もこの辺りにはいられなくなるかもしれないな。ただ、こんなことになるんなら、どこかのタイミングで一度はここに入っておくべきだったと思うよ」
奇妙な色合いをした鳥居の先に広がる森。それはとても薄暗く、先が全く見通せない。朝でこれだけの暗さなのだから、夜ならばまるで見通しがきかなくなるだろう。
「それで、さっきの話に戻るんだが――その、本当に赤松朱里がミノタウロスで間違いないのか?」
鳥居をくぐった途端、空気が急に冷たくなったような気がした。木々に覆われているため、太陽光が届かないからなのか、それとも、この空間が持っている独特の雰囲気のせいなのか。それを払拭するかのように大和田が口を開く。ビデオテープで見た通り、最初は狭い一本道だった。
「えぇ、間違いありませんよ。彼女以外にはあり得ません」
正直なところ、はっきりした確証というものはなかった。けれども、彼女がミノタウロスだと考えなければ、どうにも筋が通らない。私に恨みのようなものを抱く可能性があって、なおかつ身近にいる人物――いいや、身近にいるというわけではないだろうが、動機の面から考えても、赤松朱里がミノタウロスだと考えるのが自然だ。そもそも、それ以外の関係者と私には面識がないのだ。例えば、なんらかの理由で湯川智昭辺りがミノタウロスだったとしたら、なぜ面識のない私が狙われるのか、全く意味が分からなくなる。
「とにもかくにも、答えはこの先――ってことか」
大和田の言葉に、見えないであろうが私は後ろで頷いた。
「それにしても、ここまで暗いとは思いませんでしたね。懐中電灯くらい持ってくれば良かった」
私が言うと、大和田は得意げに腰元に手を伸ばす。
「そう言えば、持ってきていたんだったよ」
大和田の標準装備なのか、腰元には懐中電灯がぶら下がっていた。それを手に取ると、懐中電灯を点ける。
おそらくではあるが、ミノタウロスは単独で動いている。だから、注意すべきは、前方のみで構わないはずだ。ただ、高田のように罠にかかってしまう可能性も充分に考慮しなければならないだろう。もちろん、背後からの奇襲だって配慮せねばならない。
「分かった。行きましょう」
私が言うと、大和田は力強く頷き、そしてミノタウロスの森へと視線をやる。
「ここに勝手に入ったことがばれたら、俺もこの辺りにはいられなくなるかもしれないな。ただ、こんなことになるんなら、どこかのタイミングで一度はここに入っておくべきだったと思うよ」
奇妙な色合いをした鳥居の先に広がる森。それはとても薄暗く、先が全く見通せない。朝でこれだけの暗さなのだから、夜ならばまるで見通しがきかなくなるだろう。
「それで、さっきの話に戻るんだが――その、本当に赤松朱里がミノタウロスで間違いないのか?」
鳥居をくぐった途端、空気が急に冷たくなったような気がした。木々に覆われているため、太陽光が届かないからなのか、それとも、この空間が持っている独特の雰囲気のせいなのか。それを払拭するかのように大和田が口を開く。ビデオテープで見た通り、最初は狭い一本道だった。
「えぇ、間違いありませんよ。彼女以外にはあり得ません」
正直なところ、はっきりした確証というものはなかった。けれども、彼女がミノタウロスだと考えなければ、どうにも筋が通らない。私に恨みのようなものを抱く可能性があって、なおかつ身近にいる人物――いいや、身近にいるというわけではないだろうが、動機の面から考えても、赤松朱里がミノタウロスだと考えるのが自然だ。そもそも、それ以外の関係者と私には面識がないのだ。例えば、なんらかの理由で湯川智昭辺りがミノタウロスだったとしたら、なぜ面識のない私が狙われるのか、全く意味が分からなくなる。
「とにもかくにも、答えはこの先――ってことか」
大和田の言葉に、見えないであろうが私は後ろで頷いた。
「それにしても、ここまで暗いとは思いませんでしたね。懐中電灯くらい持ってくれば良かった」
私が言うと、大和田は得意げに腰元に手を伸ばす。
「そう言えば、持ってきていたんだったよ」
大和田の標準装備なのか、腰元には懐中電灯がぶら下がっていた。それを手に取ると、懐中電灯を点ける。
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