ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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最終章 真相【過去 赤松朱里】

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 運命で必然なのだ。全く変わっていない彼女の姿に、赤松朱里は声をかけるつもりだった。しかし――彼女はまるで自分のことに気づかなかったのだ。

 あの時ほどショックだったことはない。以前より店の常連だった彼女は、新しいアルバイトとして紹介された赤松朱里のことを見て「はじめまして」と頭を下げたのだ。これが、往年の恨みを増幅させるスイッチとなってしまった。

 確かにマスクはしていたし、学生時代に比べたら痩せたとは思う。でも、あれだけ仲が良かったのだから、一目見て気づいて当然ではないか。

 あぁ、きっと彼女は分かっていて分からないふりをしているのだ。大人になってまで、自分と関与したくはないと。赤松朱里の思考回路は、どんどん間違った方向へと傾倒していった。

 ――この傾倒した思考回路と、短絡的な衝動こそが、すでに過去に何度か悲劇を起こしていた。

 あれは中学校3年生の頃。ミノタウロスの森に遊びに行くという話が上がった時、赤松朱里はちょっとした悪戯を思いついた。もし、みんなミノタウロスの森に本当にミノタウロスがいたら、どんな反応するのだろうか。

 準備自体は、そこまで難しくはなかった。強いて言うのであれば、牛のマスクを調達するのが面倒だった。欲しいと思っても、すぐに手に入るようなものではない。何度も街に通い、ようやくパーティーグッズとして牛のマスクを手に入れた。少々値が張ってしまったが、それらしいものを手に入れることができた。

 体にまとうボロ切れは、家の作業場で見つけた。そして、ミノタウロスの象徴とも言える斧も、作業場の片隅で見つけた。しっかりとカバーがつけられているやつだったから、リュックサックにも収めることができる。

 もろもろの道具を詰め込んだだけでも、リュックサックの容量を食ってしまったが、ビデオカメラとビデオテープを持って行く必要がある。リュックサックの隙間にビデオテープとバッテリーを放り込むと、赤松朱里はビデオを回しながら家を出た。

 約束の時間になっても誰も来なかったから、とりあえず1人でミノタウロスの森へと向かった。

 いざ、ミノタウロスの森に入ろうとすると、入ってすぐのところに人影がふたつ見えた。声と会話の内容から、それが宝田羽衣と谷惇であることは間違いなかった。

 早速驚かしてやろうと、赤松朱里はミノタウロスの森の前で、用意していたミノタウロスセットに着替えた。着替えるといっても、ボロ切れを体に纏い、牛のマスクを被り、斧を用意しただけであるが。
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