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最終章 真相【過去 赤松朱里】
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「……どうして西尾さんが?」
この状況においても、まだ気づいていないのか。自分がかつての友人である赤松朱里であると。あくまでも、彼女は西尾という人物像で自分のことを見るのだろうか。
「西尾? 確かに今の私は西尾かもしれない。でも、旧姓は――もっとあなたに所縁のある名前だよ」
いい加減気づいてくれてもいいようなものなのに、どうして気づいてもらえないのか。それとなくヒントを出しつつ、七奈が自分のことに気づいてくれるのを待つ。
大丈夫だ。彼女達は中学校にも行っているはずだし、そこでビデオテープを受け取っている。すなわち、赤松朱里が残したメッセージも、あの担任から受け取っているはずだ。自分とミノタウロスが結びつくのは時間の問題だ。
「――ちょっと駐在所まで来てもらいましょうかね」
七奈からの返事を待っているというのに、そこで大和田が前に出てくる。
お前に用事はない。ある意味、彼女のサポーターとしてうまい具合に動いてくれたのだろうが、用事があるのは七奈のほうだけだ。
「うるさい。お前は黙ってろ」
静かに言い放つ。斧は取り落としてしまっていたし、明らかに彼女達のほうが優位に立っている。しかし、朱里は物怖じとしない態度であり続けた。この状況に持ってくるまでに、どれだけの時間をかけたか。これだけの労力を要したのに――どうして気づいてもらえないのか。
「どうしてこんなことをしたんですか? 私、西尾さんにこんなことをされるようなことをしました?」
だから、西尾ではない。お前の良く知っている赤松朱里だ。たどり着くためのヒントは馬鹿みたいに出ていたはずだし、分からないほうがおかしいくらいだ。それなのに、あくまでも自分のことを西尾として扱ってくる七奈の姿に苛立ちが募る。
「それは自分の胸に聞いてみれば分かるはずだ」
思い切り七奈のことを睨みつけてやった。もはや、この場面で気づけないなんて、馬鹿としか言いようがない。少なくとも自分の記憶の中では、そこまで馬鹿ではなかったはずなのだが。
「自分の胸――と言われても。私、お店に行ってもあまり西尾さんとはお話しもしなかったし、そこまで親しいというわけでもない。私の何かが気に障ったのならないけど謝ります。だから、こんな悪戯はやめにしませんか?」
「――悪戯?」
自分は本気なのに、それを悪戯扱いされてしまった朱里。なんだか馬鹿にされたような気分になった。
この状況においても、まだ気づいていないのか。自分がかつての友人である赤松朱里であると。あくまでも、彼女は西尾という人物像で自分のことを見るのだろうか。
「西尾? 確かに今の私は西尾かもしれない。でも、旧姓は――もっとあなたに所縁のある名前だよ」
いい加減気づいてくれてもいいようなものなのに、どうして気づいてもらえないのか。それとなくヒントを出しつつ、七奈が自分のことに気づいてくれるのを待つ。
大丈夫だ。彼女達は中学校にも行っているはずだし、そこでビデオテープを受け取っている。すなわち、赤松朱里が残したメッセージも、あの担任から受け取っているはずだ。自分とミノタウロスが結びつくのは時間の問題だ。
「――ちょっと駐在所まで来てもらいましょうかね」
七奈からの返事を待っているというのに、そこで大和田が前に出てくる。
お前に用事はない。ある意味、彼女のサポーターとしてうまい具合に動いてくれたのだろうが、用事があるのは七奈のほうだけだ。
「うるさい。お前は黙ってろ」
静かに言い放つ。斧は取り落としてしまっていたし、明らかに彼女達のほうが優位に立っている。しかし、朱里は物怖じとしない態度であり続けた。この状況に持ってくるまでに、どれだけの時間をかけたか。これだけの労力を要したのに――どうして気づいてもらえないのか。
「どうしてこんなことをしたんですか? 私、西尾さんにこんなことをされるようなことをしました?」
だから、西尾ではない。お前の良く知っている赤松朱里だ。たどり着くためのヒントは馬鹿みたいに出ていたはずだし、分からないほうがおかしいくらいだ。それなのに、あくまでも自分のことを西尾として扱ってくる七奈の姿に苛立ちが募る。
「それは自分の胸に聞いてみれば分かるはずだ」
思い切り七奈のことを睨みつけてやった。もはや、この場面で気づけないなんて、馬鹿としか言いようがない。少なくとも自分の記憶の中では、そこまで馬鹿ではなかったはずなのだが。
「自分の胸――と言われても。私、お店に行ってもあまり西尾さんとはお話しもしなかったし、そこまで親しいというわけでもない。私の何かが気に障ったのならないけど謝ります。だから、こんな悪戯はやめにしませんか?」
「――悪戯?」
自分は本気なのに、それを悪戯扱いされてしまった朱里。なんだか馬鹿にされたような気分になった。
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