ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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最終章 幕引き【現在 七色七奈】

最終章 幕引き【現在 七色七奈】1

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【1】

 きっと、普段は平和で緩やかな時間が流れているであろう田舎の集落は、慌ただしい赤色灯で染まってしまった。これだけの大騒動になって、この辺りの人達が黙っているわけがない。ミノタウロスの森の周りには規制線が張られており、その向こうには権力で大和田をねじ伏せようした人達の姿があった。何やら喚いているようだが、応援として呼ばれた警察の人間は、この辺りの力関係など気にしない。うまい具合に抑えつけていた。

「いやいや――思った以上に大騒ぎになっちゃったなぁ」

 赤松朱里……いや、西尾朱里の身柄を引き渡した大和田は、騒然とする周囲の様子に頭をかきながら呟いた。苦笑いを浮かべてはいるが、しかしその表情は晴々としているように見える。

「本当に良かったんですか?」

 大和田に対しては申し訳なさしかない。余所者の私に関わってしまったがゆえに、この土地に居場所を失ってしまったのだから。

「あぁ、考え方を変えれば大手柄だよ。過去に何人もの人間を殺害した凶悪犯を逮捕できたんだ。こいつは、左遷じゃなくて栄転になるかも」

 大和田はそう言うが、しかし強がっているように見えてしまった。

 身柄を引き渡された西尾朱里は、何人もの警察官に囲まれてパトカーに乗った。そのパトカーが見えなくなるまで見守ると、私は大きく溜め息を漏らした。

 現場は撤収ムードが強まり、警察側の人手が減ったことを、これ幸いにとばかりに、近隣の人間が規制線を越えてこちらのほうへと歩み寄ってきた。いい歳をした大人が、子分達を引き連れてやってくる様は、なんだか子供っぽく見えた。

「駐在! よくも俺の代で騒ぎを起こしてくれたな。お前、こんなことをして、ここで暮らしていけると思っているのか?」

 案の定、大和田に向かって高圧的な態度を見せてくる。しかしながら、吹っ切れてしまった大和田は強かった。どうやら心配は無用らしい。

「――別にここで暮らして行こうとも思っていませんし、暮らしたいとも思いません。ご希望通り、駐在所から出て行くことになるでしょう。こんな田舎クソ喰らえだ」

 その一言が逆鱗に触れたことは間違いなかった。しかしながら、本人が口を開く前に取り巻きが大和田のことを口々に責め立てる。大和田はただ首を横に振ると、低い声で呟き落とした。

「どうやら、過去にこのミノタウロスの森では何人もの人間が亡くなっているようです。それが何故か明るみに出ていない。まさかとは思いますが、犯人には共犯者がいるのかもしれません。私共も全力をあげて捜査をしますので、その際はどうかご協力をお願いします」
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