ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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エピローグ 【現在 大和田賢治】

エピローグ 【現在 大和田賢治】1

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 彼女――七色七奈を見送ってから、しばらくすると交代要因として本部から人間が派遣されてきた。見知った顔ならばまだ良かったのかもしれないが、全く面識のない若い警察官であり、言わば自分の城である駐在所を任せていいものかと不安に感じた。それでも、本部からの呼び出しである。いささか頼りない人員ではあるが、そこは目を瞑って本部のほうへと赴いた。

 初動捜査的な動きは所轄の警察に捜査本部が置かれる形になる。ゆえに、派出所という派閥の中に生きる大和田にとっては、県の本部――県警のことも本部であるし、捜査本部が置かれることになる所轄署もまた、本部である。ややこしいかもしれないが、大和田を呼びつけたのも、ごくごく近くにある所轄署である。といっても、自転車で20分はかかる距離にあった。

 ここしばらく、移動は七奈の車を頼っていたせいか、自家用車を引っ張り出してまで乗る気にはなれなかった。しばらくメンテナンスをしていないし、ずっと乗っていないから、バッテリーが上がってしまっている可能性は高い。普段は自転時で行動できる範囲でしか生活していないから、そこまで不便に感じたことはなかったのだが、やはりいざという時に車がないと困る。

 ――どうしたものか。迷った挙げ句、大和田はタクシーを呼び、実に片道5千円超えという大枚を叩く羽目になってしまった。自家用車をメンテナンスしている暇はなかったし、自転車で所轄署まで向かう気力がない。バスなんてどれだけ待てば来るのか分からないのが常であり、大枚を叩いてしまったという事実に目を瞑るのであれば、選択肢としては間違ってはいない。

 所轄署に到着すると、事件を担当する警部が出迎えてくれた。もちろん、階級は大和田より遥かに上だ。

「大和田君、悪いね。いくつか君に確認しておきたいことがあるんだ」

 もちろん、近場の警察署であるから、大和田と警部には面識がある。無難な挨拶と握手に留めて、警部は大和田をひとつの部屋へと案内してくれた。わざわざ口にはしなかったが、どうやら取調べ室の一室に通されたらしい。

「さて、座ってくれ。今回の事件についてなんだが――少しばかり要領を得ていなくてね。とりあえず傷害の現行犯ということで拘束させてはもらったが、本人の供述がいまいち的を射ていないんだよ」

 わざわざ警部に椅子を引いてもらい、それに腰をかける。確かに、状況だけを見ても、まるで的を射ていないだろう。現状、西尾朱里を引っ張ることができたのは、七色七奈と大和田に対する傷害なのだから。
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