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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【出題編】
ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【出題編】1
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【1】
――辞令。一里之純平殿。本社人事部お嬢様お世話係を命ずる。
毎年恒例である春の人事異動。入社して3年目だから、そろそろ自分に白羽の矢が立つのではないかと思っていたが、まさか本当に辞令が出るとは思わなかった。しかしながら彼こと一里之純平は、その辞令に首を傾げた。いや、人事部に異動となるのは百歩譲って理解できる。しかし、お嬢様お世話係とは、これいかに。
同期の連中に話を聞いてみたが、誰もそんな係のことは知らないとのこと。先輩社員や上司は、とりあえず異動のことを「おめでとう」と言うばかりで、やはり肝心のお嬢様お世話係については何も教えてもらえなかった。送別会は妙に周囲が優しいし、最後は万歳三唱からの胴上げで見送られた。なんだかこれに似た光景を知っているなぁ――と思っていたが、それがなんであるかをようやく思い出した。白黒の映像で見たことのある第二次世界大戦の映像。列車で戦地に向かう兵士を大勢で見送るシーンだ。
年度末になり、これまでお世話になった営業部を去ることになった。結局、最後まで新たな異動先については触れられなかったし、誰も教えてはくれなかった。ただ、同期の大東瑛里人だけは、最後の最後まで嫌味ったらしかった。
大東は某有名大学卒業であり、鳴り物入りとして一里之と一緒に営業部の支店へと配属された。最初からいけ好かないタイプであるとは思っていたが、その予感は的中。俗にいう学歴主義者というやつであり、とにかく学歴でしか人を見ない。明らかに仕事のできる上司でさえ、自分より学歴が低いと知ると否や、反抗的な態度をとる始末。そのくせ、仕事は大してできない。口癖は「これは某大学卒の自分の仕事じゃない」であり、仕事を放り投げるのが得意技だ。一度、上司のさらに上から咎められたのであるが、その時は「高卒の人に仕事を与えている」と、平社員のくせにほざいて周囲を呆れさせた。特に高卒でコネ入社の一里之のことを面白く思っていないらしく、事あるごとに突っかかられていた。
「やあ、一里之。どうやらお仕事ができない人間は、島流しの刑に処されるようだねぇ」
営業部を去る間際、廊下で会った大東の勝ち誇った顔は、今思い出しても腹が立つ。
「お仕事ができないのはどっちだか――。これからは仕事を放り投げる相手がいなくなって困るんじゃね? まぁ、お前のおかげで、ある程度の仕事ができるようになったから感謝してるわ」
売り言葉に買い言葉というやつだ。大東のあまりにも勝ち誇った顔がむかついて、一里之は逆に言い返してやった。
――辞令。一里之純平殿。本社人事部お嬢様お世話係を命ずる。
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同期の連中に話を聞いてみたが、誰もそんな係のことは知らないとのこと。先輩社員や上司は、とりあえず異動のことを「おめでとう」と言うばかりで、やはり肝心のお嬢様お世話係については何も教えてもらえなかった。送別会は妙に周囲が優しいし、最後は万歳三唱からの胴上げで見送られた。なんだかこれに似た光景を知っているなぁ――と思っていたが、それがなんであるかをようやく思い出した。白黒の映像で見たことのある第二次世界大戦の映像。列車で戦地に向かう兵士を大勢で見送るシーンだ。
年度末になり、これまでお世話になった営業部を去ることになった。結局、最後まで新たな異動先については触れられなかったし、誰も教えてはくれなかった。ただ、同期の大東瑛里人だけは、最後の最後まで嫌味ったらしかった。
大東は某有名大学卒業であり、鳴り物入りとして一里之と一緒に営業部の支店へと配属された。最初からいけ好かないタイプであるとは思っていたが、その予感は的中。俗にいう学歴主義者というやつであり、とにかく学歴でしか人を見ない。明らかに仕事のできる上司でさえ、自分より学歴が低いと知ると否や、反抗的な態度をとる始末。そのくせ、仕事は大してできない。口癖は「これは某大学卒の自分の仕事じゃない」であり、仕事を放り投げるのが得意技だ。一度、上司のさらに上から咎められたのであるが、その時は「高卒の人に仕事を与えている」と、平社員のくせにほざいて周囲を呆れさせた。特に高卒でコネ入社の一里之のことを面白く思っていないらしく、事あるごとに突っかかられていた。
「やあ、一里之。どうやらお仕事ができない人間は、島流しの刑に処されるようだねぇ」
営業部を去る間際、廊下で会った大東の勝ち誇った顔は、今思い出しても腹が立つ。
「お仕事ができないのはどっちだか――。これからは仕事を放り投げる相手がいなくなって困るんじゃね? まぁ、お前のおかげで、ある程度の仕事ができるようになったから感謝してるわ」
売り言葉に買い言葉というやつだ。大東のあまりにも勝ち誇った顔がむかついて、一里之は逆に言い返してやった。
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