ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【出題編】

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「えーっと、平成15年に廃業。モーテルタイプの部屋が3棟の物件ですね。北から順番に【い棟】【ろ棟】【は棟】と名前がついているみたいです」

 実際のところ本当にその3棟が並んでいるのかは、辺りが真っ暗であるため、現状で確認できない。それにしても、どうして廃墟となってしまう建物には、不吉な部分が多いのだろう。なんとなくだが、棟の名前がいろは順になっている辺りが意味もなく不気味で不吉である。

「――で? 事故物件になってるのは、どこの棟だ?」

 鯖洲は煙草に火を点けると、ヘッドライトの明かりが届かぬほうへと向かって歩き出した。その先にはおそらく3棟のモーテル型ホテルがあるはずだ。

「えっと……【は棟】になります」

 一里之はそう言いつつ資料をめくる。これもまた、ヘッドライトの明かりを頼りにしているため、実に仕事がやりにくい。

 資料には簡単な現場見取り図があった。峠の中腹ということもあり、ホテルの向こう側は崖となっているようだ。おそらく、ホテルは全てが2階建てになっており、おそらくは1階部分が車の車庫となっており、その車庫から2階に上がった先が部屋となるのだろう。受付――のようなものは存在せず、当時は自動精算機が設置されていたようだ。

「おい、案内しろよ」 

 暗がりの中へと姿を消した鯖洲が、わざわざ戻ってくる。この暗がりの中で案内をしろと主張しているらしい。一里之は明かりの代わりになるようなものを探し、ようやくスマホのライト機能があったことを思い出した。

「……あいつ、まだ下見してねぇのに、来るのが早すぎんだよ」

 鯖洲は分かりやすく舌打ちをすると、一里之のほうへとやってくる。なにかと手間取っていたから、それについてイチャモンのひとつでもつけられてしまうのかと思ったが、そのまま鯖洲は一里之のそばを素通りして道路へと出る。手を振って、峠をのぼってきていたヘッドライトに合図を出した。その手にはスマホが握られている。どうやら、彼の元にメールかなにかで連絡があったのだろう。

 鯖洲が誘導する形で、そのヘッドライトは一里之達の車の後ろへと停車する。その車体の長さに一里之は驚いた。きっと、これだけ車体の長い高級車の実物を見るのは、初めてだろう。リムジンというやつだ。

 運転席から男が降りてくると、後部座席のほうへと回り込み、ドアを開ける。そのドアから降りてきた人物の姿に、一里之は色々な意味で驚いた。
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