ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【解決編】

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「一体どこに帰ったの? その頃には、珍しく大雪になっていたはず。それなのに徒歩で峠をくだったというのかしら?」

 久方ぶりの煙草の煙は、随分と美味かった。本当に味としてどうなのか――と問われれば、きっと返答に困ってしまうのであろうが、とにもかくにも体が欲していたものだから美味いものは美味い。見事にニコチンに支配されているわけだ。

「それにくわえて、もうひとつおかしな点がありますわ。それは、首を吊った女性が何者かと部屋を利用する前に利用した方々――ホテルを後にする頃には、きっと雪が積もっていたはずですわ。それなのに、どうやって帰ったの? オーナーが4WDの車でやっと来ることができたような峠道なのに。それと同時に、もうひとつ。どうやって首を吊った女性は、ここまで車でやって来たのか。ここに来る頃には雪も降り積もっていたはずですわ。それなのに、峠をのぼってなんて来れるかしら?」

 実は一里之の地元は、日本でも有数の豪雪地帯。ちょっと世間的に大雪になると、すぐにニュースで中継されてしまうような地域だ。ゆえに、雪が多少降ったところで、この程度の峠道なら問題なく走れると思ってしまう。しかしながら、雪国の人間は雪道が当たり前になっているから、購入する車はほとんどが4WD――4輪駆動であるし、かなり早い段階でスタッドレスタイヤに履き替えるのが常識になっている。それにくわえて除雪の体制も整っているからこそ、当たり前のように生活できるのだ。

 地元にいた頃、雪が降っているのにラジアルのタイヤの駆動輪だけにチェーンを巻いて走っている県外車を見たことがあるのだが、あんなもの雪国の人間からすれば自殺行為だ。ほんのわずかな傾斜の坂であっても、雪が積もればのぼれない。つまり、当時の峠も同じような状況にあったのではないか。

「首を吊った女性の車が、たまたま4WDで、スタッドレスを履いていた――としても、道路の除雪が間に合わないか。どちらにせよ、ここまでやって来ることは不可能だった」

 これは雪国出身の人間だからこその意見だった。雪があまりにも身近にあるから、こちらの地域にきて、膝下程度の雪で大雪だと騒いだ時には、随分と驚いた。しかしながら、その程度の雪でも交通は麻痺を引き起こしたのだ。どれだけ用意が周到であっても、道路が雪で塞がれてしまっては意味がない。

「その不可能を可能にする方法が、たったひとつだけありますわ」
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