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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【プロローグ】
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電車に乗り込んで家へと帰る。営業時代は会社に戻って書類の整理やらをしていたが、そもそもお世話係に会社での居場所はない。ゆえに直帰。正々堂々の直帰である。文句がある奴がいるなら出てこい。
自宅の最寄りの駅に到着すると、スマートフォンに着信があったことに気づく。ディスプレイには11桁の番号の羅列。鯖洲の番号はさすがに登録したから、別の人物からの着信があったらしい。流れから察するに、コトリお嬢様だろうか。そんなことを考えつつ、一里之はかかってきた電話番号に折り返した。
ワンコールもしないうちに相手が電話口に出る。コール音が鳴り出す前に電話を取られるというのも、なかなかに不気味というか、やや不愉快だ。まるで、電話が鳴るまで、じっと様子を伺っていたかのようではないか。
「一里之さん。玄界灘です」
てっきりコトリからの電話だと思っていた一里之は、その冷たく、それでいて透き通った声に足を止めた。この時間帯の駅は混んでおり、立ち止まるだけでも周囲に迷惑がかかる。ゆえに、人が少ないところを探しながら歩きつつ、駅の外へと出てしまったほうがいいだろう。
「あ、玄界灘さん。あの、お疲れ様です」
「一里之さん。冥はまだ疲れてなどおりません。労っていただけるお気持ちだけで充分です」
あくまでも社交辞令のようなもので口にした言葉だったが、冥はそれを真に受けたようなリアクションをする。一体、何の用事だろう。一里之が問うよりも早く、電話口の向こう側が淡々と続けた。
「次の事故物件について連絡をさせていただきました。お嬢様にお話をしたところ、大変興味を持たれているようなのですが、その――実際に住めるようになるのはいつくらいなのでしょうか?」
事故物件をこよなく愛し、そこに住みたいと願う超変態的な嗜好をお持ちのお嬢様。窓辺野コトリ。どうやら、今回の事故物件のことを早速気に入ってくれたらしい。
「えーと、これから査定の人間が入って、正確な買値が出てからですね。まだ当分かかりますよ」
契約書を交わすのは簡単だが、取引をするものが家という大きな物件であるため、売値や買値を出すとなると時間がかかる。そちら方面の知識は全くないため、言い方は悪いが後は他人任せだ。
「そうですか。可能であれば今すぐにでも――というお話だったのですが、それは難しいようですね。ただ一里之さん、提案があります」
機械的に、そして業務的に喋る冥に、なぜか圧倒されてしまう。
「は、はい。なんでしょう?」
声が裏返ってしまった。
自宅の最寄りの駅に到着すると、スマートフォンに着信があったことに気づく。ディスプレイには11桁の番号の羅列。鯖洲の番号はさすがに登録したから、別の人物からの着信があったらしい。流れから察するに、コトリお嬢様だろうか。そんなことを考えつつ、一里之はかかってきた電話番号に折り返した。
ワンコールもしないうちに相手が電話口に出る。コール音が鳴り出す前に電話を取られるというのも、なかなかに不気味というか、やや不愉快だ。まるで、電話が鳴るまで、じっと様子を伺っていたかのようではないか。
「一里之さん。玄界灘です」
てっきりコトリからの電話だと思っていた一里之は、その冷たく、それでいて透き通った声に足を止めた。この時間帯の駅は混んでおり、立ち止まるだけでも周囲に迷惑がかかる。ゆえに、人が少ないところを探しながら歩きつつ、駅の外へと出てしまったほうがいいだろう。
「あ、玄界灘さん。あの、お疲れ様です」
「一里之さん。冥はまだ疲れてなどおりません。労っていただけるお気持ちだけで充分です」
あくまでも社交辞令のようなもので口にした言葉だったが、冥はそれを真に受けたようなリアクションをする。一体、何の用事だろう。一里之が問うよりも早く、電話口の向こう側が淡々と続けた。
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「えーと、これから査定の人間が入って、正確な買値が出てからですね。まだ当分かかりますよ」
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「そうですか。可能であれば今すぐにでも――というお話だったのですが、それは難しいようですね。ただ一里之さん、提案があります」
機械的に、そして業務的に喋る冥に、なぜか圧倒されてしまう。
「は、はい。なんでしょう?」
声が裏返ってしまった。
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