89 / 391
ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】
32
しおりを挟む
気は進まない。気は進まないが、本人に話を聞くのがもっとも手っ取り早い。話をするにしたって、ほんの数分程度であろう。自分に言い聞かせて大東に電話をかけた。
意外なことに、数コール程度で大東が電話に出た。あいつなら、着信相手によっては無視くらいしそうなものなのに。
「あの、一里之だけど」
不審そうな声と共に大東が電話に出た時点で、嫌な予感のようなものがあった。どうやら、それは的中してしまったらしい。名を名乗った途端、舌打ちで返事をされたのが良い証拠だ。
「――誰かと思えば一里之かよ。くそっ、出て損したじゃないか」
相変わらず憎たらしいことを言ってくれる。察するに、そもそも大東は一里之の連絡先をスマホに登録していなかったらしい。知らない電話番号から電話がかかってきたから、とりあえず出てみたのであろう。
「あのさ、ちょっと聞きたいことがあってさ」
こっちだって、話したくて話している相手ではないのだ。妙な敗北感を味わいつつ、しかし我慢して下手に出る一里之。それに対して、大東は偉そうに「なんだよ?」と一言。
「以前、仕事で袴田さんのお宅に伺ったことがあると思うんだけどさ、その時のことを教えてくれないか? お前が行った時、奥さんと会ったのか? 依頼そのものが袴田さんからのものではなかったって本当か?」
なんにせよ、聞き出せるところは聞き出しておかないと。できる限り大東を刺激しないように、あくまで下手に出る一里之。正直、大東の立ち振る舞いに苛立ちのようなものは抱いていた。
「あぁ? どうしてそんなことを聞きたがるのか知らないが、お前に教えてやる義理は――」
「お前、殺したのか? 袴田さんの奥さんを」
大東の反応は想定済み。だからこそ、あえてぶっ込んだ。こちらの状況は分からないだろうが、自分が疑われているというのは面白くないだろう。下手に出つつ、神経を逆撫でするような一言を発する。中々に自分も駆け引きが上手くなったものだ。
「はぁ? どうして見ず知らずの婆さんを殺さなきゃならないんだよ。あの時は警察にも話を訊かれたけど、正直に全部話したんだ。俺が訪問したら奥さんが出てきて――それで、依頼をした本人に確認を取ってもらったら、本人は本人で依頼なんてしてないって言い出す始末だ。家の中はもちろん、風呂場にさえ入ってないんだからよ。そのせいで丸々1日が潰れたし、次の日は会社経由で警察に呼び出されるしで大変だったんだからな」
意外なことに、数コール程度で大東が電話に出た。あいつなら、着信相手によっては無視くらいしそうなものなのに。
「あの、一里之だけど」
不審そうな声と共に大東が電話に出た時点で、嫌な予感のようなものがあった。どうやら、それは的中してしまったらしい。名を名乗った途端、舌打ちで返事をされたのが良い証拠だ。
「――誰かと思えば一里之かよ。くそっ、出て損したじゃないか」
相変わらず憎たらしいことを言ってくれる。察するに、そもそも大東は一里之の連絡先をスマホに登録していなかったらしい。知らない電話番号から電話がかかってきたから、とりあえず出てみたのであろう。
「あのさ、ちょっと聞きたいことがあってさ」
こっちだって、話したくて話している相手ではないのだ。妙な敗北感を味わいつつ、しかし我慢して下手に出る一里之。それに対して、大東は偉そうに「なんだよ?」と一言。
「以前、仕事で袴田さんのお宅に伺ったことがあると思うんだけどさ、その時のことを教えてくれないか? お前が行った時、奥さんと会ったのか? 依頼そのものが袴田さんからのものではなかったって本当か?」
なんにせよ、聞き出せるところは聞き出しておかないと。できる限り大東を刺激しないように、あくまで下手に出る一里之。正直、大東の立ち振る舞いに苛立ちのようなものは抱いていた。
「あぁ? どうしてそんなことを聞きたがるのか知らないが、お前に教えてやる義理は――」
「お前、殺したのか? 袴田さんの奥さんを」
大東の反応は想定済み。だからこそ、あえてぶっ込んだ。こちらの状況は分からないだろうが、自分が疑われているというのは面白くないだろう。下手に出つつ、神経を逆撫でするような一言を発する。中々に自分も駆け引きが上手くなったものだ。
「はぁ? どうして見ず知らずの婆さんを殺さなきゃならないんだよ。あの時は警察にも話を訊かれたけど、正直に全部話したんだ。俺が訪問したら奥さんが出てきて――それで、依頼をした本人に確認を取ってもらったら、本人は本人で依頼なんてしてないって言い出す始末だ。家の中はもちろん、風呂場にさえ入ってないんだからよ。そのせいで丸々1日が潰れたし、次の日は会社経由で警察に呼び出されるしで大変だったんだからな」
0
あなたにおすすめの小説
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
【完結】真実の愛はおいしいですか?
ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。
稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。
王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。
お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。
でも、今は大きくなったので見えません。
―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語
※童話として書いています。
※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜
長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。
朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。
禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。
――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。
不思議な言葉を残して立ち去った男。
その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。
※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる