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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】
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「――心配なさらなくても、ここにもう住み続けるつもりはありませんわ」
売り言葉に買い言葉とばかりに、笑顔を浮かべて言い切ってしまうコトリ。昨日の段階で何かを掴んでいたことは間違いないようだ。
「もう少し確固たる証拠が欲しかったのですけど、どうやらこれが限界みたいですわね。残念だけれども、ここもわたくしが住むには値しない物件みたい」
昨日まではここに住むと意気込んでいたのに、もはやこの物件そのものに興味を失ってしまった様子のコトリ。その冷め方というか、極端すぎる反応には、恐怖心すら抱いてしまう。
「お、これはうまくいけばゴルフの約束に間に合うんじゃないか?」
コトリの反応を見て、別の方向へと希望を見出す鯖洲。どうやら、まだゴルフの約束を諦めてはいないらしい。
「さて、どうでしょうね――」
台所で片付けをしていたはずの冥が、盆にポットやらを乗せて戻ってくる。
「お嬢様、せっかくですからお茶でもいただきながらお話を聞かせていただけませんか?」
食後のお茶――というには、ややお洒落な様相ではあるが、さすがは万能のメイドである。痒いところに手が届くというか、痒くなる前に先回りするような動きには感心するばかりだ。あの作ったようなキャラクターを前面に出してこないから、有能感ばかりが際立つ。
「まぁ、素敵ですわね。アールグレイかしら?」
冥が淹れたお茶の銘柄などは知らないが、コトリが喜んでいることだけは間違いない。残念ながら、執事の株が下がるばかりだ。まぁ、本人は全く気にしていないようだが。
冥がティーカップに人数分のお茶を淹れると、小さなポットをコトリの前へと差し出す。可愛らしいポットの中に入っていたのは、ひとつは角砂糖。そしてもうひとつはミルクらしい。砂糖を入れ、ミルクを垂らすと、冥に手渡されたスプーンでかきまぜながら、コトリは口を開いた。
「かつて、この家で起きた事件。事故や自殺の可能性は考慮されたものの、残念ながら殺人の線はないと断定されてしまったようですわね」
コトリに続いて鯖洲が一言。
「まぁ、捜査にあたった警察が無能だっただけかもしれないがな」
何にせよ、かつてここで起きたことは、殺人事件ではないと判断されたようだ。それをあえて引き合いに出したということは、すなわち――。
「ですが、わたくしが思うにここで起きたことは――第三者による殺人だと思いますの」
そこで言葉を区切ると、コトリはティーカップを手に取った。
「ポイントは……干しかんぴょうですわ」
売り言葉に買い言葉とばかりに、笑顔を浮かべて言い切ってしまうコトリ。昨日の段階で何かを掴んでいたことは間違いないようだ。
「もう少し確固たる証拠が欲しかったのですけど、どうやらこれが限界みたいですわね。残念だけれども、ここもわたくしが住むには値しない物件みたい」
昨日まではここに住むと意気込んでいたのに、もはやこの物件そのものに興味を失ってしまった様子のコトリ。その冷め方というか、極端すぎる反応には、恐怖心すら抱いてしまう。
「お、これはうまくいけばゴルフの約束に間に合うんじゃないか?」
コトリの反応を見て、別の方向へと希望を見出す鯖洲。どうやら、まだゴルフの約束を諦めてはいないらしい。
「さて、どうでしょうね――」
台所で片付けをしていたはずの冥が、盆にポットやらを乗せて戻ってくる。
「お嬢様、せっかくですからお茶でもいただきながらお話を聞かせていただけませんか?」
食後のお茶――というには、ややお洒落な様相ではあるが、さすがは万能のメイドである。痒いところに手が届くというか、痒くなる前に先回りするような動きには感心するばかりだ。あの作ったようなキャラクターを前面に出してこないから、有能感ばかりが際立つ。
「まぁ、素敵ですわね。アールグレイかしら?」
冥が淹れたお茶の銘柄などは知らないが、コトリが喜んでいることだけは間違いない。残念ながら、執事の株が下がるばかりだ。まぁ、本人は全く気にしていないようだが。
冥がティーカップに人数分のお茶を淹れると、小さなポットをコトリの前へと差し出す。可愛らしいポットの中に入っていたのは、ひとつは角砂糖。そしてもうひとつはミルクらしい。砂糖を入れ、ミルクを垂らすと、冥に手渡されたスプーンでかきまぜながら、コトリは口を開いた。
「かつて、この家で起きた事件。事故や自殺の可能性は考慮されたものの、残念ながら殺人の線はないと断定されてしまったようですわね」
コトリに続いて鯖洲が一言。
「まぁ、捜査にあたった警察が無能だっただけかもしれないがな」
何にせよ、かつてここで起きたことは、殺人事件ではないと判断されたようだ。それをあえて引き合いに出したということは、すなわち――。
「ですが、わたくしが思うにここで起きたことは――第三者による殺人だと思いますの」
そこで言葉を区切ると、コトリはティーカップを手に取った。
「ポイントは……干しかんぴょうですわ」
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