ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【出題編】

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【2】

「おいおい、こいつは思った以上に難儀なんじゃねぇか?」

 登山口近くの駐車場へと車を停めると、その雄大なる山々の高さに圧巻される。鯖洲はきっと、もっと低い山を想像していたのであろうが、しかし一筋縄ではいかないらしい。

「少しでも山を車で登れたら良かったのに――。本当に、こんなところで山荘なんてやってたんでしょうか?」

 山荘を経営するということは、食材などを定期的に調達する必要があるだろう。そのために、いちいち登山道を往復する必要がある。しかも、車は使えないし、見渡す限り頂上まで続くロープウェイがあるというわけでもなさそうだ。食材ひとつを調達するにも、とんでもない労力がかかってしまうわけだ。きっと、宿泊料金にその分も上乗せしているのであろうが、誰が好き好んで、山奥まで登って山荘に泊まろうとするのだろうか。

「まぁ、山奥の山荘だからこそいい――っていう、意識高い系の馬鹿がいるからだろうよ」

 とんでもない形で山荘の宿泊客を馬鹿にする鯖洲。それはもはや、鯖洲の偏見以外の何者でもないではないか。

「と、登山が趣味な人達の隠れ家みたいなものだったのかもしれませんね」

 棘のある鯖洲の言葉を少しばかり和らげてやると、一里之は改めて山を見上げて溜め息をひとつ。遠くに背景のひとつとして映っている時点で嫌な予感はしていたが、麓まできてみても、その壮大さが手に取るように分かる。きっと、富士山ほどの高さはないのであろうが、それでも素人が思いつきで登れるような山ではない気がする。

「どっちにせよ、分かってることはひとつ。俺達はそれなりの荷物と一緒に、この山を登らにゃならんってことだ。こいつはお嬢とギャラの上乗せ交渉だな」

 一里之は会社員として、会社から給料が支払われているが、鯖洲や冥はコトリに直接雇われているらしい。一体、どれくらいの報酬を得ているのだろうか。もし、自分との差が大きかったら嫌だから知りたくはないが、気になるのも事実だった。

「それじゃ、ぼちぼち行きますか――」

 必要になるであろう荷物は、購入したリュックサックの中に詰めてある。鯖洲と一里之がそれぞれに担いで、山の奥にあるという山荘を目指すわけだ。

「俺が先頭な」

 山登りに適しているかどうかは別にして、急場しのぎで調達した格好に着替えている鯖洲。どこから見ても登山客のように見えるはずだが、あまりにも鯖洲には似合っておらず、なんだか浮いているように見えてしまう。もちろん、本人には言わないが。
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