ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

文字の大きさ
141 / 391
ケース3 山奥の事故物件【出題編】

19

しおりを挟む
「なぁ――俺はもうお嬢に付き合って数年になるんだが、いつまでこの仕事ができるんだろうなぁ。金はかなりの額をもらってるんでね。細く長く続いて欲しいんだが」

 喫煙者同士というのは、妙な親近感が生まれるものだ。特に肩身が狭くなった最近ならばなおさらだ。鯖洲がぽつりと本音を漏らしたのも、一里之に対する親近感が湧いたからなのかもしれない。

「それは分かりませんけど……俺、ちょっと調べてみたんです。お嬢様の近辺で起きた事件について」

 コトリは姉を亡くしている。そして、その姉が発見されたところが事故物件だったがゆえに、彼女は事故物件に固執するようになってしまった――と一里之は思っている。

「あんまり、お嬢の前でその話には触れんなよ。もちろん、本人に問い質そうなんてもってのほかだ。世の中、知らなくていいことは山ほどあって、お嬢が事故物件に固執する理由も、その知らなくていいことの一角にすぎない。お嬢のお世話係を続けたいなら、そのことには触れるなよ。実際、お前の2人前のやつは……」

 そこで見計らったかのごとく鯖洲がむせた。煙草の煙がおかしなところに入ってしまったのだろうか。それにしても唐突というか、あまりにもわざとらしいように見えた。

「玄界灘。そろそろいいか? さすがにもう着替えも終わってるだろうよ」

 玄関先をがっちりガードしている冥のほうに視線をやる鯖洲。冥は「確認して参ります」とだけ残すと、山荘の中へと姿を消した。

 コトリの姉の事件。図書館で調べられることには限度があり、どこかのタイミングで鯖洲か冥に詳しく話を聞こうと思っていたのだが、しかし今日は難しいらしい。何よりも、少し離れたところで一里之達のやり取りに耳を傾けていた寺山の顔が怖かった。コトリの運転手として近くにいるだけに、何か知っているのかもしれない。もちろん、だからといって本人に聞くような真似はできないが。

「もう大丈夫です。どうぞ、中に」

 コトリの姿を確認してきたのであろう。ようやく山荘に入る権利が男性陣に与えられた。とりあえず荷物をどこかに置いて、シャワーが無理ならば体を拭く程度のことはしたい。

 玄関から中に入ると、まずその空間は談話室だったに違いない。暖炉のある広間が一里之達を出迎えた。階段の下にカウンターらしきものがあり、おそらくそこが受付カウンターになるのだろう。錆びついた呼び鈴がカウンターに寂しそうに佇んでいた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真
恋愛
クローディアは十年ぶりに祖国の土を踏んだ。婚約者だったローレンス王子が王位を継承したことにより元々従兄弟同士の関係だったクローディアが王太子となったからだ。 十年前に日本という国から来たサオリと結婚する為にクローディアとの婚約を破棄したローレンスには子供がいなかった。 異世界トリップの婚約破棄ものの十年後の悪役令嬢クローディアの復讐と愛はどうなるのか!! まだストックが無いので不定期に更新します よろしくお願いします

偽装結婚を偽装してみた

小海音かなた
恋愛
「家借りるときさぁ、保証人が必要だと困るとき来そうで不安なんだよね」 酒の席で元後輩にそんなことをグチったら、旦那ができました――。 降って湧いたような結婚話を承諾したら、そこにはすれ違いの日々が待っていた?! 想いを寄せている相手の気持ちに確信が持てず、“偽装”を“偽装している”夫婦のモダモダ遠回り生活。 苦くてしょっぱくて甘酸っぱい、オトナ思春期ラブストーリー第2弾。 ※毎日19時、20時、21時に一話ずつ公開していきます。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

魔法のいらないシンデレラ

葉月 まい
恋愛
『魔法のいらないシンデレラ』シリーズ Vol.1 ーお嬢様でも幸せとは限らないー 決められたレールではなく、 自分の足で人生を切り拓きたい 無能な自分に、いったい何が出来るのか 自分の力で幸せを掴めるのか 悩みながらも歩き続ける これは、そんな一人の女の子の物語

その後の愛すべき不思議な家族

桐条京介
ライト文芸
血の繋がらない3人が様々な困難を乗り越え、家族としての絆を紡いだ本編【愛すべき不思議な家族】の続編となります。【小説家になろうで200万PV】 ひとつの家族となった3人に、引き続き様々な出来事や苦悩、幸せな日常が訪れ、それらを経て、より確かな家族へと至っていく過程を書いています。 少女が大人になり、大人も年齢を重ね、世代を交代していく中で変わっていくもの、変わらないものを見ていただければと思います。 ※この作品は小説家になろう及び他のサイトとの重複投稿作品です。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...