146 / 391
ケース3 山奥の事故物件【出題編】
24
しおりを挟む
「ほら、ここをご覧なさい? 昨日の雨がね、小屋の地面にまで滲みてしまっていますわ」
掘立て小屋は思ったよりも簡素であり、床なんてものはない。柱となる太い木が数本、直接地面に打ち付けてあるだけで、地面が丸出しなのだ。地面は文字通り地続きなのだから、雨だって滲みたりするだろう。
「そりゃ、これだけ適当な作りならそうなるだろうな。さすがは素人仕事だぜ。とりあえず支柱となる木を数本打ち込んで、壁を張って屋根を取り付けた感じだな。よくも朽ちずに残っていたもんだ」
作業小屋は思った以上に狭い。きっと、当時はここに薪が積み上げられており、残ったスペースで薪割りをしていたのであろう。
「これ、閂で扉が開かなかったって言いますけど、しっかり鍵がかかっていたのかも微妙なところですね」
率直な感想を呟く。当時の記録では、閂により扉が開かないということになっていたが、本当にそうだったのか怪しくなってきた。
「――実際に閂がここにありますわ。中から閂をかけてみますわね」
コトリはそう言うと、実に楽しげに小屋の中へと入り、勝手に扉を閉めてしまった。寺山が慌てて「お、お嬢様……」と止めに入るが、こうなったコトリはもう止まらない。思う存分、事故物件を堪能するのであろう。寺山の慌てぶりを見るからに、普段のコトリはまだ大人しいらしい。
「いいですわよー! さぁ、セバスチャン、開けてご覧なさい!」
中から楽しそうなコトリの声。まるで隠れんぼをしている子どもであるかのごとく、その声は弾んでいた。
「仕方がねぇなぁ――。勢い余って壊しても文句言うんじゃねぇぞ」
鯖洲はそう言うと扉に手をかける。思ったよりもしっかりと閂が噛み合っているらしく、扉はびくともしない。構造的な欠陥があると踏んでいた様子の鯖洲は、扉を持って上下に揺すってみるが、しかし扉はびくともしなかった。それに苛立ちを覚えたのか、とうとう扉を思い切り蹴るという蛮行に出た。けれども扉はびくともしない。
「こいつは思ったより、しっかり鍵として機能してるな」
呼吸を整えながら漏らす鯖洲。中で音がして扉が開く。閂を手に勝ち誇った表情を見せるコトリが姿を現した。
「ね、閂の部分は構造的に、かなり頑丈に作られているみたいなの。それこそ、簡単に外から開けることができないくらいに。だからね、これ――密室殺人というやつになりますわね」
さらりと物騒なことを口にするお嬢様。うっすらと浮かべた笑みに、寺山はただ苦笑い。いつものお嬢様ではない――とでも思っているのだろうか。
掘立て小屋は思ったよりも簡素であり、床なんてものはない。柱となる太い木が数本、直接地面に打ち付けてあるだけで、地面が丸出しなのだ。地面は文字通り地続きなのだから、雨だって滲みたりするだろう。
「そりゃ、これだけ適当な作りならそうなるだろうな。さすがは素人仕事だぜ。とりあえず支柱となる木を数本打ち込んで、壁を張って屋根を取り付けた感じだな。よくも朽ちずに残っていたもんだ」
作業小屋は思った以上に狭い。きっと、当時はここに薪が積み上げられており、残ったスペースで薪割りをしていたのであろう。
「これ、閂で扉が開かなかったって言いますけど、しっかり鍵がかかっていたのかも微妙なところですね」
率直な感想を呟く。当時の記録では、閂により扉が開かないということになっていたが、本当にそうだったのか怪しくなってきた。
「――実際に閂がここにありますわ。中から閂をかけてみますわね」
コトリはそう言うと、実に楽しげに小屋の中へと入り、勝手に扉を閉めてしまった。寺山が慌てて「お、お嬢様……」と止めに入るが、こうなったコトリはもう止まらない。思う存分、事故物件を堪能するのであろう。寺山の慌てぶりを見るからに、普段のコトリはまだ大人しいらしい。
「いいですわよー! さぁ、セバスチャン、開けてご覧なさい!」
中から楽しそうなコトリの声。まるで隠れんぼをしている子どもであるかのごとく、その声は弾んでいた。
「仕方がねぇなぁ――。勢い余って壊しても文句言うんじゃねぇぞ」
鯖洲はそう言うと扉に手をかける。思ったよりもしっかりと閂が噛み合っているらしく、扉はびくともしない。構造的な欠陥があると踏んでいた様子の鯖洲は、扉を持って上下に揺すってみるが、しかし扉はびくともしなかった。それに苛立ちを覚えたのか、とうとう扉を思い切り蹴るという蛮行に出た。けれども扉はびくともしない。
「こいつは思ったより、しっかり鍵として機能してるな」
呼吸を整えながら漏らす鯖洲。中で音がして扉が開く。閂を手に勝ち誇った表情を見せるコトリが姿を現した。
「ね、閂の部分は構造的に、かなり頑丈に作られているみたいなの。それこそ、簡単に外から開けることができないくらいに。だからね、これ――密室殺人というやつになりますわね」
さらりと物騒なことを口にするお嬢様。うっすらと浮かべた笑みに、寺山はただ苦笑い。いつものお嬢様ではない――とでも思っているのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
妹のために愛の無い結婚をすることになりました
バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」
愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。
婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。
私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。
落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。
思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜
長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。
朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。
禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。
――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。
不思議な言葉を残して立ち去った男。
その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。
※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる