ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【出題編】

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「ほら、ここをご覧なさい? 昨日の雨がね、小屋の地面にまでみてしまっていますわ」

 掘立て小屋は思ったよりも簡素であり、床なんてものはない。柱となる太い木が数本、直接地面に打ち付けてあるだけで、地面が丸出しなのだ。地面は文字通り地続きなのだから、雨だって滲みたりするだろう。

「そりゃ、これだけ適当な作りならそうなるだろうな。さすがは素人仕事だぜ。とりあえず支柱となる木を数本打ち込んで、壁を張って屋根を取り付けた感じだな。よくも朽ちずに残っていたもんだ」

 作業小屋は思った以上に狭い。きっと、当時はここに薪が積み上げられており、残ったスペースで薪割りをしていたのであろう。

「これ、閂で扉が開かなかったって言いますけど、しっかり鍵がかかっていたのかも微妙なところですね」

 率直な感想を呟く。当時の記録では、閂により扉が開かないということになっていたが、本当にそうだったのか怪しくなってきた。

「――実際に閂がここにありますわ。中から閂をかけてみますわね」

 コトリはそう言うと、実に楽しげに小屋の中へと入り、勝手に扉を閉めてしまった。寺山が慌てて「お、お嬢様……」と止めに入るが、こうなったコトリはもう止まらない。思う存分、事故物件を堪能するのであろう。寺山の慌てぶりを見るからに、普段のコトリはまだ大人しいらしい。

「いいですわよー! さぁ、セバスチャン、開けてご覧なさい!」

 中から楽しそうなコトリの声。まるで隠れんぼをしている子どもであるかのごとく、その声は弾んでいた。

「仕方がねぇなぁ――。勢い余って壊しても文句言うんじゃねぇぞ」

 鯖洲はそう言うと扉に手をかける。思ったよりもしっかりと閂が噛み合っているらしく、扉はびくともしない。構造的な欠陥があると踏んでいた様子の鯖洲は、扉を持って上下に揺すってみるが、しかし扉はびくともしなかった。それに苛立ちを覚えたのか、とうとう扉を思い切り蹴るという蛮行に出た。けれども扉はびくともしない。

「こいつは思ったより、しっかり鍵として機能してるな」

 呼吸を整えながら漏らす鯖洲。中で音がして扉が開く。閂を手に勝ち誇った表情を見せるコトリが姿を現した。

「ね、閂の部分は構造的に、かなり頑丈に作られているみたいなの。それこそ、簡単に外から開けることができないくらいに。だからね、これ――密室殺人というやつになりますわね」

 さらりと物騒なことを口にするお嬢様。うっすらと浮かべた笑みに、寺山はただ苦笑い。いつものお嬢様ではない――とでも思っているのだろうか。
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