ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

文字の大きさ
168 / 391
ケース3 山奥の事故物件【エピローグ】

ケース3 山奥の事故物件【エピローグ】1

しおりを挟む
 木を基調とした店内に染み付いたコーヒーの匂い。時間が夕方ということもあってか、客入りは少ない。だが、それが変に落ち着く。

 案の定、コトリを送り届けた後に解散の流れとなった。その後、冥と連絡を取り合い、彼女の案内で近くの喫茶店に入って今にいたる。

 体力には自信があるつもりだったが、やはり歳をとったということなのだろうか。下山してからでも大丈夫だと思っていたものの、気持ちとは裏腹に体は疲れているらしい。文字通りの眠気覚ましとなったコーヒーを口に運ぶ。

「それで――話って」

 同じようにホットコーヒーを頼んだ冥。シュガーポットから角砂糖を掴むと、カップに投入。スプーンでかき混ぜると、続けてミルクポットからミルクを垂らした。惰性に従ってミルクが渦を巻く。

「単刀直入に伺います。お嬢様について、どこまでお調べになりましたか?」

 冥に核心を突かれてしまったような気がして、一里之は言葉に詰まった。コトリの過去を調べたことなんて、冥には言っていなかったはずだ。遅かれ早かれ、こちらからコトリについて聞こうと思ってはいたが、彼女の勘の鋭さには恐れ入る。

「えっと……ちょうど良かったです。お嬢様のことについて玄界灘さんに聞きたいことがあったので」

 あえて冥の質問からそれるような返しをしてみる。どこまでも見透かされてしまっているのかもしれない――そう考えると怖かった。

「左様ですか。ならば、もう一度だけ問います。どこまでお嬢様のことをお調べに?」

 きっと、冥としては情報に制限をかけたいのであろう。つまり、知っていることを全て話すつもりはないようだ。むろん、一里之が彼女以上にコトリのことを調べ上げている可能性だってあるわけだが。

「それについては――」

 一里之は素直に自分の知っていることを冥に話した。過去に窓辺野不動産に対する事件が起きたこと。その事件でコトリは姉を亡くしてしまっていること。冥は相槌を打つように頷きつつ話を聞いてくれた。

「なるほど。そこまで調べておられましたか。でしたら話は早いです。あなたと話したかったのは、お嬢様が事故物件に固執するようになった理由についてでしたので。そこまで把握しておいていただけるとありがたいです」

 冥はそう言うと、ようやくコーヒーカップを口に運んだ。表情ひとつ変えずにカップを置くと、実に小さな声で「熱っ……」と呟いた。どうやら猫舌らしい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-

設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt 夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや 出張に行くようになって……あまりいい気はしないから やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀ 気にし過ぎだと一笑に伏された。 それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない 言わんこっちゃないという結果になっていて 私は逃走したよ……。 あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン? ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 初回公開日時 2019.01.25 22:29 初回完結日時 2019.08.16 21:21 再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結 ❦イラストは有償画像になります。 2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載

氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ
恋愛
彼とは長年付き合っていた。もうすぐ薬指に指輪をはめると思っていたけれど、久しぶりに呼び出された寒い日、思いもしないことを言われ、季節外れの寒波の中、帰途につく。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

公爵令嬢ジュスティーヌ・アフレは美しいモノが好き

喜楽直人
恋愛
学園の卒業式後に開かれたパーティーの席で、王太子が婚約者である公爵令嬢の名前を呼ぶ。 その腕に可憐な子爵令嬢を抱き寄せて。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

ワシの子を産んでくれんか

KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。 「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。 しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。 昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。 ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。 救いのような笑顔と、罪のような温もり。 二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。

処理中です...