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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【プロローグ】
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一里之が引っかかったのは、匿名のクレームという点だった。たかだか、それだけで市というものは動くのだろうか。
「匿名のクレームが毎日ですか。しかし、それくらいで市のお金を出して建物を取り壊しますかね。まぁ、良く言えば市民の声をしっかりと汲み上げているということになるけど」
一里之と同じ部分に引っ掛かりを覚えたのであろう。斑目は「食後の一服に行きますか」とくわえて立ち上がる。一里之もそれに続いた。
喫煙所は道の駅から少し離れた場所にあった。今や屋外の喫煙ですら、色々と制限があったりするから、本当に喫煙家は肩身の狭い世の中になってしまった。先客がいると不思議と親近感さえわく。そこに肩を寄せ合うようにして、喫煙者は今日も世間の目に耐えているのだ。ならば煙草をやめたらいい
――は正論すぎるので勘弁して欲しい。
「さっきの話だけど、その匿名のクレーム――匿名なだけじゃなくて、声色もボイスチェンジャーで変えられたものだったらしいんだ。最初は悪戯扱いされていたみたいなんだけど、実際に建物が壊されることが決定されたってことだね」
一里之が調べ上げることができたのは、ここが限界だった。物件が取り壊された経緯を辿り、わざわざ当時の市職員のところを訪ねて仕入れた情報である。やろうと思えば、ここまで調べ上げることができるのだから、自分には才能があるのではないかとさえ思う。多分、たまたま運が良かっただけなのであろうが。
「つまり、そのクレームが直接的な原因かは定かではないと」
「あぁ、ただ取り壊しが決定される前に、連日クレームがあったということも確かみたいだ。当時のお偉いさんに話を聞ければ良かったけど、もう他界していたみたいで。結局、調べることができたのはそこまでなんだ」
斑目に言葉を返しつつ、食後の一服をする。なぜゆえに、食事をした後の煙草はこんなにもうまいのだろうか。理由を知っている人がいたら教えて欲しい。
「まぁ、興味深い話ではあるか。事故物件で起きた事件とやらが未解決なのは、警察の人間として不甲斐ないけど」
斑目は吸い殻を灰皿に入れると「その辺りのことも含めて、彼女がどんな意見をくれるんでしょうかね」と漏らし、自分の車のほうに向かって歩き出した。一里之が車に乗り込んだのを確認すると、エンジンをかける斑目。目的地はもう目と鼻の先。別に車ではなく、徒歩でもたどり着けるような距離だ。
「匿名のクレームが毎日ですか。しかし、それくらいで市のお金を出して建物を取り壊しますかね。まぁ、良く言えば市民の声をしっかりと汲み上げているということになるけど」
一里之と同じ部分に引っ掛かりを覚えたのであろう。斑目は「食後の一服に行きますか」とくわえて立ち上がる。一里之もそれに続いた。
喫煙所は道の駅から少し離れた場所にあった。今や屋外の喫煙ですら、色々と制限があったりするから、本当に喫煙家は肩身の狭い世の中になってしまった。先客がいると不思議と親近感さえわく。そこに肩を寄せ合うようにして、喫煙者は今日も世間の目に耐えているのだ。ならば煙草をやめたらいい
――は正論すぎるので勘弁して欲しい。
「さっきの話だけど、その匿名のクレーム――匿名なだけじゃなくて、声色もボイスチェンジャーで変えられたものだったらしいんだ。最初は悪戯扱いされていたみたいなんだけど、実際に建物が壊されることが決定されたってことだね」
一里之が調べ上げることができたのは、ここが限界だった。物件が取り壊された経緯を辿り、わざわざ当時の市職員のところを訪ねて仕入れた情報である。やろうと思えば、ここまで調べ上げることができるのだから、自分には才能があるのではないかとさえ思う。多分、たまたま運が良かっただけなのであろうが。
「つまり、そのクレームが直接的な原因かは定かではないと」
「あぁ、ただ取り壊しが決定される前に、連日クレームがあったということも確かみたいだ。当時のお偉いさんに話を聞ければ良かったけど、もう他界していたみたいで。結局、調べることができたのはそこまでなんだ」
斑目に言葉を返しつつ、食後の一服をする。なぜゆえに、食事をした後の煙草はこんなにもうまいのだろうか。理由を知っている人がいたら教えて欲しい。
「まぁ、興味深い話ではあるか。事故物件で起きた事件とやらが未解決なのは、警察の人間として不甲斐ないけど」
斑目は吸い殻を灰皿に入れると「その辺りのことも含めて、彼女がどんな意見をくれるんでしょうかね」と漏らし、自分の車のほうに向かって歩き出した。一里之が車に乗り込んだのを確認すると、エンジンをかける斑目。目的地はもう目と鼻の先。別に車ではなく、徒歩でもたどり着けるような距離だ。
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