ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【プロローグ】

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「あの、大丈夫ですか?」

 うつ伏せのま前倒れている人物の背中を揺すってみる。その時点で、全身から血の気が引くのが分かった。その背中はあまりにも冷たく、そして硬かった。普通の人間の背中を触った時の感触ではない。

「あの――」

 明らかに様子がおかしかった。背中を何度も揺すったところで、それに合わせて体をよじらせるだけであり、倒れた人物が自立的に動く気配がまるでない。

「あのっ!」

 目が覚めたら、どこだか分からないところにいて、そこで唯一自分と同じような境遇であろう人を見つけた。けれども、その人はどれだけ声をかけても反応しない。揺すっても同様。まるで――まるで死んでしまっているようだ。いや、体の冷たさから察するに、おそらくは……。

 焦りばかりがつのる。強く揺すった勢いで、うつ伏せだった人物が体を反転させて仰向けになった。あくまでも無機質物が、強く揺さぶったがゆえにひっくり返ったという感じだった。そこに生命は感じられない。

「――な、なんで」

 そこには実に見覚えのある顔があった。よく知る人物であっても、普段は誰よりも遠い人物なのかもしれない。ただ、コトリのお世話係という立場から考えれば、実に近い人物なのかも。

「社長……。社長っ!」

 そのうつろな目は、濁りながらも天を仰ぎ、ひきつった頬の色は真っ白だ。口は半分ほど開いているが、呼吸している雰囲気はない。肩を掴んで揺さぶってみたが、とうとう一里之は認めた。認めるしかなかった。

「死んでる……。どうして? なにがどうなってんだ?」

 自分に聞いたところで分かるわけもないのだが、いちいち言葉にしなければ状況を把握できない程度には混乱していた。

 ふと、その時のことだ。外から足音らしきものが聞こえた。それは徐々に近くなり、扉の前で止まった。

「GPSの信号はこの辺りで発信されているみたいです!」

 誰かに報告するような声が聞こえてきた。そこで我に返った一里之は胸を撫で下ろす。こんな訳の分からない状況から、誰かが助け出しにきてくれたらしい。

 思わず扉のほうに駆け寄ろうとしたが、遠慮のないノックに足を止めた。いいや、ノックというより、乱暴に扉を殴ったような音だった。

「警察です! どなたか中にいらっしゃいませんか? すいませんが、少しばかりお邪魔しますよ!」

 乱暴なノックにくわえて、やっつけ仕事のような乱暴な言葉。中に人がいると想定して喋っているとは思えない。
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