ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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「なんて顔をしているの? もう少しシャキッとしたらいかがかしら?」

 コトリだった。彼女は不敵な笑みを浮かべてはいるが、目が若干腫れているように見える。実の父を失ってしまったのだ。おそらく泣き腫らしたのであろう。

「あの、大丈夫――ですか?」

「心配無用ですわ。それに、その言葉はこっちの台詞でしょうに」

 心配されるべきは一里之の立場であろうが、泣き腫らしたであろうコトリの顔を見て、不意にそんな言葉が出た。それを遮るようにしてコトリは無理矢理笑顔を作った。表向きでは、一里之がコトリの父親を殺害したことになっているというのに。

「先ほども言いましたが、あなたに人を殺すような度胸はございません。今はご自身の冤罪を晴らすことを最優先としたほうが良いかと思います」

 面会時間はわずか15分。どうやら、その15分はかなり濃密なものになりそうだ。

「その前にほら、差し入れだ」

 鯖洲はそう言いながらビニール袋を掲げる。どのような手続きで差し入れをするのかは分からないが、警察官と目が合ったのを確認したのか、鯖洲は中央仕切り版の、申し訳程度のテーブルの上にビニール袋を置いた。

「あ、ありがとうございます」

 ビニール袋の外側しか見えていないが、質感からして着替えが入っているようだった。なんともありがたいことだ。

「――そもそもお世話係は出社しませんから、特別な対処はしていませんわ。マスコミに対しても、少しばかり圧力をかけたから、数日程度ならば時間が稼げるでしょう」

 コトリとて大変だろうに、色々と手回しをしてくれたようだ。それだけ信頼してもらっているのであろうが、実にありがたいことだ。

「マスコミは疑いがあるだけでも犯人扱いして報道するからな。お前の名誉を守るのも並大抵のことじゃねぇってことだ」

 鯖洲がコトリの言葉に乗っかる。後ろで警察官が全ての話を聞いているわけだが、こんなことまで話をして大丈夫なのだろうか。まぁ、止められてはいないから問題はないのだろうが。

「それで、俺は具体的に何をすれば――」

 一里之が問うと、椅子に座っていたコトリが姿勢を正す。鯖洲と冥も立ち位置を改めたような気がした。

「念のために確認だけ先にしておきますわ。一里之君はお父様を誘拐していなければ、殺害もしていない。それは間違いありませんわね?」

 コトリ達は信じてくれているが、言葉として確たるものにしておきたいのであろう。一里之は小さく息をのむと、力強く頷いた。
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