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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
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感傷に浸っている場合ではなかった。しかしながら、こうして事件のことをひっくり返している場合でもない。簡単な葬儀はすでに済ませたものの、曲がりなりにも社長という立場だった父が死んだのだ。会社のことは良く分からないが、後釜となる人材の選定や、株主への対応、また業務上で問題となってくる部分の対処など、やることは山ほどにある。
娘であるコトリとて、こんなことをやっている場合ではないのだ。けれども、娘だからこそ、この事件を放り投げるわけにはいかなかった。
かつて事件が起きた事故物件を掘り下げることで、自身を辛うじて保とうとする。そんなことは、誰よりも自分が自覚しているのだ。分かってはいるが、どうしていいのか分からず、これまではなかば道楽のように過去の事件に首を突っ込み、それを解決したつもりになってきた。そのツケが、今になって回ってきたのではないかと思う。
殺害されたのは実の父。しかも、殺人の疑いがかけられたのは、道楽と呼ばれても仕方のない儀式を手助けするために、父の会社から引っ張ってきた一般社員。これまでは無関係の人達が巻き込まれてしまった事件ばかりをほじくり返してきたわけだが、それが一気に身内ばかりになってしまった。
「事件現場となったのは――かつてキャンプ場として経営されていた芦田野キャンプ場。そのキャンプ場の倉庫として使われていた建物の中か」
資料を拾い上げた手を止める鯖洲。誰かが口火を切らないと、いい加減話が進まないと考えたのであろう。さすがはコトリが認めた執事である。その辺り、実にするどい。
「現場の話を引っ張り出す前に、事件全体の概要を洗い出してみましょう」
今回の事件は色々と複雑だ。資料に目を通すだけではなく、実際に口にしてもらったほうが整理しやすいだろう。被害者が被害者なだけに、今のコトリには客観的な視点が必要とされる。それを実現するためにも、読み合わせという手段は悪くない。
「まずは事件の発覚から――ですわね」
コトリの言葉を待っていたかのように、ある程度の資料をまとめていた冥が口を開いた。
「事件の発覚は今から数日前の朝でした。その前日、窓辺野不動産社長は会合に出かけており、その会合に顔を出したことは確認が取れています。しかしながら、そこからの足取りが不明です。普段ならば運転手の寺山さんが迎えに行くのですが、時と場合によってはタクシーで帰宅されることもあったようですね。しかし、社長を乗せたというタクシーは見つかっていません」
娘であるコトリとて、こんなことをやっている場合ではないのだ。けれども、娘だからこそ、この事件を放り投げるわけにはいかなかった。
かつて事件が起きた事故物件を掘り下げることで、自身を辛うじて保とうとする。そんなことは、誰よりも自分が自覚しているのだ。分かってはいるが、どうしていいのか分からず、これまではなかば道楽のように過去の事件に首を突っ込み、それを解決したつもりになってきた。そのツケが、今になって回ってきたのではないかと思う。
殺害されたのは実の父。しかも、殺人の疑いがかけられたのは、道楽と呼ばれても仕方のない儀式を手助けするために、父の会社から引っ張ってきた一般社員。これまでは無関係の人達が巻き込まれてしまった事件ばかりをほじくり返してきたわけだが、それが一気に身内ばかりになってしまった。
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