ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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「妙ですね。気は進みませんが、女性用のほうも少し調べて参ります。おふたりはここでお待ちを」

 何かが引っかかるらしい冥。彼女がどこに疑問を抱いているのか、薄々ながらコトリは気づいていた。もし、これで女性用のトイレにも使用の痕跡がなかったとしたら――。そんなことを考えている間に冥が戻ってきた。

「やはりおかしいですね。女性用のトイレのほうも、赤水が出ました。つまり……」

「トイレが一度も使用されていない可能性が高いということですわね」

 冥の言葉を奪うような形になって申し訳なかったが、しかしコトリは言わずにはいられなかった。

「でもよ、炊事場の水は赤水じゃなかっただろ? ってことは、炊事場は使用された痕跡があるってことか?」

 炊事場の配管に関しては、もしかするとトイレと別物になっているだけなのかもしれない。しばらく使用していなかったがゆえに、トイレのほうの配管で腐食が進み、それが赤水として出たと思われるが、問題なのはトイレが一度も使用されていないという点だった。

「確か、一里之君と社長がいた倉庫は、トイレなどついていない建物だったはず」

 外装さえもいじっていない倉庫へと視線をやりつつ呟くと、資料を確認した冥が「少なくとも、そのような記載はありませんね」と漏らした。

「そして、少なからずトイレを使用された形跡がなかった。これから、ある可能性が導き出されますわ。まぁ、あくまでも偏見のようなものになってしまうけれども」

 コトリはそこで言葉をやや詰まらせてしまった。これは、あくまでも偏見から推察されることであり、必ずしもそうだというわけではない。他の可能性だって考えられるし、推測の材料にはならないだろう。しかしながら、数少ない情報の中で、この気づきは大きなものになるのではないだろうか。コトリがどう説明しようかと考えあぐねていると、汚れ役を冥が進んでやってくれた。

「例えば、この場で用を足そうとするとしましょう。けれども、トイレは使用できそうにない。だとしたら、どうしますか? 男性という立場から教えていただきたいのですが」

 冥の問いかけは鯖洲へと向けられた。鯖洲は苦笑いを浮かべると、あえてコトリと冥とは目を合わせないようにして口を開く。

「男ってのはなぁ、やろうと思えばどこでも用を足せるんだよ。まぁ、さすがに大きいほうとなれば、ところ構わずってわけにはいかねぇがな」

 ある程度、こちらが期待する答えをくれたと思われる。もちろん、抵抗がある男性だっているだろうが、例えば緊急時で、トイレなどが使えない場合、ほとんどの男性が外で用を足してしまうのではないか。
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