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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
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そこはただ闇に包まれていた。まるで扉から先が切り取られてしまったかのごとく、見渡す限り闇、闇、闇。果敢にもその中に冥が足を踏み入れる。
「確か資料によると、辛うじてこの辺りまで電気が引っ張ってあるとのこと」
半身を闇の中に埋めつつ、手探りで電気のスイッチを探りあてた様子の冥。こんな山奥の、しかも現在は使われていない施設に電気が通っているとは驚きである。街中では当たり前のように整備されているインフラであるが、このようなところにまで電線が張り巡らされているとは、これいかに。
「どうやら、このキャンプ場からさらに上にのぼったところに、かつての集落があったようです。ほんの数軒程度ですが、その名残でこちらまで電気が来ているのでしょうね」
まるでコトリの心を見透かしたかのごとく冥が教えてくれる。彼女が半身を埋めていた闇は、眩い幾度かの点滅の後、そこに光をもたらした。
「真っ昼間から電気を点ける必要がある倉庫とか、マジで使いもんになんねぇな」
中を覗き込みながら鯖洲が言った。倉庫の中に最高窓のようなものはなく、唯一の出入り口は、ついさっき冥がピッキングで鍵を開けた扉のみ。扉を開けた時に見えた暗闇が、他に外界と通じる場所がないことを物語っていた。
「内装も特別いじってあるわけではありませんね。まぁ、一応フローリングの床にはなっていますが、壁は外から見たまんまですね」
冥の言う通り、内装も特別に何かをしているわけではないようだ。外から見ると、丸太を積み上げてできているように見える壁であるが、中から見てもまんま同じである。丸太が積み上げられて壁を形成していることが分かる。
「さてさて、でもこうなると完全な密室ってことになるなぁ……」
鯖洲は土足のまま倉庫に上り込む。倉庫という名前がついているから、靴を脱ぐか否かの境界線が難しいのかもしれない。
「しかも、この扉ですが、どうやら内側からは鍵を開けることができないタイプだったようですね」
内側から扉を眺めていた冥が、ドアノブに顔を近づけつつ呟く。倉庫として使うことが前提となっていたから、外から鍵がかかれば充分だったということなのだろうか。
「まぁ、人を監禁してたんだ。簡単に内側から鍵が開くようじゃ使えねぇだろうな。それにしても、仮に一里之じゃねぇ誰かが社長を殺ったとして、どうやってここを密室にしたんだ? この状況じゃ、あいつが疑われても仕方がねぇな」
身も蓋もないことを言ってくれる鯖洲。その密室の謎が分かれば苦労はしない。
「確か資料によると、辛うじてこの辺りまで電気が引っ張ってあるとのこと」
半身を闇の中に埋めつつ、手探りで電気のスイッチを探りあてた様子の冥。こんな山奥の、しかも現在は使われていない施設に電気が通っているとは驚きである。街中では当たり前のように整備されているインフラであるが、このようなところにまで電線が張り巡らされているとは、これいかに。
「どうやら、このキャンプ場からさらに上にのぼったところに、かつての集落があったようです。ほんの数軒程度ですが、その名残でこちらまで電気が来ているのでしょうね」
まるでコトリの心を見透かしたかのごとく冥が教えてくれる。彼女が半身を埋めていた闇は、眩い幾度かの点滅の後、そこに光をもたらした。
「真っ昼間から電気を点ける必要がある倉庫とか、マジで使いもんになんねぇな」
中を覗き込みながら鯖洲が言った。倉庫の中に最高窓のようなものはなく、唯一の出入り口は、ついさっき冥がピッキングで鍵を開けた扉のみ。扉を開けた時に見えた暗闇が、他に外界と通じる場所がないことを物語っていた。
「内装も特別いじってあるわけではありませんね。まぁ、一応フローリングの床にはなっていますが、壁は外から見たまんまですね」
冥の言う通り、内装も特別に何かをしているわけではないようだ。外から見ると、丸太を積み上げてできているように見える壁であるが、中から見てもまんま同じである。丸太が積み上げられて壁を形成していることが分かる。
「さてさて、でもこうなると完全な密室ってことになるなぁ……」
鯖洲は土足のまま倉庫に上り込む。倉庫という名前がついているから、靴を脱ぐか否かの境界線が難しいのかもしれない。
「しかも、この扉ですが、どうやら内側からは鍵を開けることができないタイプだったようですね」
内側から扉を眺めていた冥が、ドアノブに顔を近づけつつ呟く。倉庫として使うことが前提となっていたから、外から鍵がかかれば充分だったということなのだろうか。
「まぁ、人を監禁してたんだ。簡単に内側から鍵が開くようじゃ使えねぇだろうな。それにしても、仮に一里之じゃねぇ誰かが社長を殺ったとして、どうやってここを密室にしたんだ? この状況じゃ、あいつが疑われても仕方がねぇな」
身も蓋もないことを言ってくれる鯖洲。その密室の謎が分かれば苦労はしない。
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