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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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これまで表情ひとつ変えなかった寺山が、やや苦笑いのようなものを浮かべた。まさか、今回の事件から飛躍して、過去の事件についてまで疑われるとは思ってもみなかったのであろう。
「とんだご冗談を――。この寺山が、過去の事件にすら関与している? いくらお嬢様とて、それ以上の言葉は聞き捨てなりませんよ」
コトリは真相に迫ったのか。それとも、ちんぷんかんぷんな方向へと舵を切ってしまったのか。どちらにせよ、確実に言えることがある。寺山は執事として窓辺野家に仕えてきたみたいだが、これ以上は無理であろう。コトリに過去の事件――姉が殺された事件についてまで疑われてしまったのだから。
「なんだ? やんのか? ちょうどいい。合法的にお前をぶん殴る機会をよ、ずっと伺ってたんだよ」
鯖洲が指の骨を鳴らそうとするが、ついさっき鳴らしたばかりだったのか、一切音が鳴らなかった。
「いいや――ヤクザとやり合うなんて馬鹿な真似はしない。さぁ、ここにいる必要はもう皆無でしょう? 馬鹿な妄想ごっこはそろそろやめて、家に帰りましょう」
コトリは事故物件に異常な執着を見せるという、いわば心の病のような癖がある。それを妄想ごっこと揶揄するのはどうかと思うが、どうやら寺山は、コトリの推測を全て妄想で片付けてしまいたいらしい。
――決定打がない。それは、途中から駆けつけた斑目でさえ分かることだった。確かに、この辺に詳しいであろうことは証明できたが、しかしだからと言って犯人だと断定できるものではない。
「お嬢様……」
冥がコトリのほうへと視線をやる。この決定打が抜けているという状況、おそらく初めてではないのだろう。そう、彼女の推測には多少なりとも穴があるし、完璧とはいえない。もちろん、そこにたどり着けるだけ大したものであるのだが、しかし決定打に欠けているのだ。
「おいおい、ここまで追い詰めておいて、逃す気かよ――。なんかないのかよ」
鯖洲もコトリの追撃を待っているようだった。それを尻目に、さっさと寺山は車に向かって歩き始める。
その時のことだった。斑目の携帯電話が鳴る。一言「失礼」とだけ断ってスマホを取り出した。着信相手は、まさしくこの状況を予測していたかのごとく、千早だった。
「はい」
斑目は焦る気持ちをおさえつつ電話に出る。ワンテンポ遅れてから「猫屋敷です」と返答があった。この状況での彼女から電話には、もはや運命的なものを感じる。
「とんだご冗談を――。この寺山が、過去の事件にすら関与している? いくらお嬢様とて、それ以上の言葉は聞き捨てなりませんよ」
コトリは真相に迫ったのか。それとも、ちんぷんかんぷんな方向へと舵を切ってしまったのか。どちらにせよ、確実に言えることがある。寺山は執事として窓辺野家に仕えてきたみたいだが、これ以上は無理であろう。コトリに過去の事件――姉が殺された事件についてまで疑われてしまったのだから。
「なんだ? やんのか? ちょうどいい。合法的にお前をぶん殴る機会をよ、ずっと伺ってたんだよ」
鯖洲が指の骨を鳴らそうとするが、ついさっき鳴らしたばかりだったのか、一切音が鳴らなかった。
「いいや――ヤクザとやり合うなんて馬鹿な真似はしない。さぁ、ここにいる必要はもう皆無でしょう? 馬鹿な妄想ごっこはそろそろやめて、家に帰りましょう」
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――決定打がない。それは、途中から駆けつけた斑目でさえ分かることだった。確かに、この辺に詳しいであろうことは証明できたが、しかしだからと言って犯人だと断定できるものではない。
「お嬢様……」
冥がコトリのほうへと視線をやる。この決定打が抜けているという状況、おそらく初めてではないのだろう。そう、彼女の推測には多少なりとも穴があるし、完璧とはいえない。もちろん、そこにたどり着けるだけ大したものであるのだが、しかし決定打に欠けているのだ。
「おいおい、ここまで追い詰めておいて、逃す気かよ――。なんかないのかよ」
鯖洲もコトリの追撃を待っているようだった。それを尻目に、さっさと寺山は車に向かって歩き始める。
その時のことだった。斑目の携帯電話が鳴る。一言「失礼」とだけ断ってスマホを取り出した。着信相手は、まさしくこの状況を予測していたかのごとく、千早だった。
「はい」
斑目は焦る気持ちをおさえつつ電話に出る。ワンテンポ遅れてから「猫屋敷です」と返答があった。この状況での彼女から電話には、もはや運命的なものを感じる。
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