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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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ここは寺山に運転をお願いして、千早を迎えに行くのが得策であろう。寺山の逃走を防ぐことにもなるだろうし、これほどの最善手はない。ロジックで寺山を追い詰めることができなかったコトリ達にとっても、悪い話ではない。
千早との電話を終えると、足早に千早の元へと向かう。何事かと振り向いた彼女に「ちょっと失礼」と耳打ちをした。内容はもちろん、千早を迎えに向かう算段についてだ。
「あら、それは大変ね。猫屋敷さんが、わざわざこちらに出向いてくださるのであれば、せめて迎えに行かねばなりませんわね」
コトリは斑目の意図を汲み取ってくれたのであろう。寺山にも聞こえるように声を上げた。
「おい、お嬢。あいつの車に乗って大丈夫なのかよ? あいつに口封じとかされかねないぞ」
鯖洲が口を挟むが、コトリに代わって冥が口を開く。
「彼はあくまでも犯行を認めていません。このまま逃げ切るつもりであるのならば、下手に私達の命を狙うより、平常運転を続けたほうがいいです」
「運転手なだけに平常運転ってか――誰がうまいことを言えと……」
鯖洲としては、多少冗談混じりにしたつもりだったのであろうが、残念なことに笑いは起きなかった。鯖洲の一言はなかったかのようにコトリが続ける。
「誰もが理解していることでしょうが、人を殺して、それを隠蔽するというのは簡単ではありませんわ。それに、こちらにはセバスチャンと警察の方がいる。どう考えたって多勢に無勢ですわ。まぁ、やるとしたら事故を装って――という可能性もゼロではないけれども、それは寺山にとってもリスキーだし、どう転んだって責任問題に発展するだろうから、決して得策とは言えませんわ。だから、あくまでも無罪だと言い張るのであれば、この場面は何もしないのが正解ですわね」
「それに、ここから徒歩で下山というのは勘弁願いたいですね。どちらにせよ、私達は彼の運転する車に乗らねばならないということですね」
コトリと冥に言いくるめられた形の鯖洲は、渋々と納得したようだった。もし仮に、寺山がここまで完璧な犯罪をやって退けた頭脳を持っているならば、まずこちらに手は出してこないだろう。とりあえずは安全だと考えてもいい。
「それにしても皮肉なもんだなぁ。この事件を解決するために駆けつけた人間を、犯人かもしれないやつの運転する車で迎えに行くわけだからよ」
いや、鯖洲はまだ納得するにいたっていないらしかった。その後、寺山の運転する車は、何事もなく千早を迎えに行ったのであるが、やはり車内はどことなく落ち着かないのであった。
千早との電話を終えると、足早に千早の元へと向かう。何事かと振り向いた彼女に「ちょっと失礼」と耳打ちをした。内容はもちろん、千早を迎えに向かう算段についてだ。
「あら、それは大変ね。猫屋敷さんが、わざわざこちらに出向いてくださるのであれば、せめて迎えに行かねばなりませんわね」
コトリは斑目の意図を汲み取ってくれたのであろう。寺山にも聞こえるように声を上げた。
「おい、お嬢。あいつの車に乗って大丈夫なのかよ? あいつに口封じとかされかねないぞ」
鯖洲が口を挟むが、コトリに代わって冥が口を開く。
「彼はあくまでも犯行を認めていません。このまま逃げ切るつもりであるのならば、下手に私達の命を狙うより、平常運転を続けたほうがいいです」
「運転手なだけに平常運転ってか――誰がうまいことを言えと……」
鯖洲としては、多少冗談混じりにしたつもりだったのであろうが、残念なことに笑いは起きなかった。鯖洲の一言はなかったかのようにコトリが続ける。
「誰もが理解していることでしょうが、人を殺して、それを隠蔽するというのは簡単ではありませんわ。それに、こちらにはセバスチャンと警察の方がいる。どう考えたって多勢に無勢ですわ。まぁ、やるとしたら事故を装って――という可能性もゼロではないけれども、それは寺山にとってもリスキーだし、どう転んだって責任問題に発展するだろうから、決して得策とは言えませんわ。だから、あくまでも無罪だと言い張るのであれば、この場面は何もしないのが正解ですわね」
「それに、ここから徒歩で下山というのは勘弁願いたいですね。どちらにせよ、私達は彼の運転する車に乗らねばならないということですね」
コトリと冥に言いくるめられた形の鯖洲は、渋々と納得したようだった。もし仮に、寺山がここまで完璧な犯罪をやって退けた頭脳を持っているならば、まずこちらに手は出してこないだろう。とりあえずは安全だと考えてもいい。
「それにしても皮肉なもんだなぁ。この事件を解決するために駆けつけた人間を、犯人かもしれないやつの運転する車で迎えに行くわけだからよ」
いや、鯖洲はまだ納得するにいたっていないらしかった。その後、寺山の運転する車は、何事もなく千早を迎えに行ったのであるが、やはり車内はどことなく落ち着かないのであった。
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