299 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
16
しおりを挟む
【2】
千早を迎えに駅へと到着した頃には、正午を少し回っていた。寺山が駅の駐車場へとリムジンを乗り入れる。このような公共の場所であっても、リムジンサイズの車を停める場所が用意されているのだから、世の中というのは案外気が利いているのかもしれない。
「それでは、昼食をとって参ります。おそらく、人殺しと一緒にいたくない方が大多数を占めているでしょうから」
皮肉混じりに言うと、寺山は頭を下げ、さっさと駐車場の外へと消えてしまった。その後ろ姿を眺めつつ、誰かの腹の虫が鳴ったのを聞いた。
「まだ、彼女が到着するまで時間がありますから、どこかで昼食でもいかがですか?」
世のお嬢様がどんなものをお召し上がりになるのかは知らないが、幸いなことに駅前には飲食店が多く並んでいる。さすがに高級レストランなどはないが、昼を済ますには申し分ない。
「そうだな。食える内に食っておかねぇと、確実に食いそびれるからな」
職業柄、食事をとり損ねることは多く、それには慣れている斑目。一応、お嬢様含む女性陣へと気を遣ったつもりだった。
「お嬢様、お口には合わないかもしれませんが、この辺りには飲食店も多くございます。ご希望のものがあれば、私達はそれに合わせます――」
冥の言葉を聞いて、なぜだか駅前の光景に目を輝かせるコトリ。もしかすると、庶民の食事というのは逆に新鮮なのかもしれない。
「えーっと、セバスチャン。あれ、なんでしたっけ? あなたが買ってきてくれた、牛と玉ねぎを甘いお出汁で煮付けたものを、遠慮することなくご飯の上にぶちまけた……」
「あー、牛丼か。あれな、そこに生卵を落としてな、ぐちゃぐちゃにかき混ぜたところに、紅生姜をふんだんに乗せて食うと美味いんだよ。よっぽど気に入ったんだなぁ」
鯖洲の言葉を聞いて「それですわ、それ! それを食べに参りましょう!」と、明らかにご機嫌になるコトリ。ついさっきまで殺人事件の話をしていたというのに、切り替えられるのが羨ましい。
「ならば、あちらに店舗がいくつかございます。人によっては店舗にさえこだわりがあるのですが、いかがいたしましょう?」
冥の案内を受け、本気でしばらく悩んだ様子のコトリ。ようやくひとつのお店をチョイスした。そして、コトリは鯖洲の背中に隠れるかのように入店。少し大きめのテーブル席を作ってもらって全員が着席した。珍しいのか、コトリは辺りをキョロキョロと見回している。
千早を迎えに駅へと到着した頃には、正午を少し回っていた。寺山が駅の駐車場へとリムジンを乗り入れる。このような公共の場所であっても、リムジンサイズの車を停める場所が用意されているのだから、世の中というのは案外気が利いているのかもしれない。
「それでは、昼食をとって参ります。おそらく、人殺しと一緒にいたくない方が大多数を占めているでしょうから」
皮肉混じりに言うと、寺山は頭を下げ、さっさと駐車場の外へと消えてしまった。その後ろ姿を眺めつつ、誰かの腹の虫が鳴ったのを聞いた。
「まだ、彼女が到着するまで時間がありますから、どこかで昼食でもいかがですか?」
世のお嬢様がどんなものをお召し上がりになるのかは知らないが、幸いなことに駅前には飲食店が多く並んでいる。さすがに高級レストランなどはないが、昼を済ますには申し分ない。
「そうだな。食える内に食っておかねぇと、確実に食いそびれるからな」
職業柄、食事をとり損ねることは多く、それには慣れている斑目。一応、お嬢様含む女性陣へと気を遣ったつもりだった。
「お嬢様、お口には合わないかもしれませんが、この辺りには飲食店も多くございます。ご希望のものがあれば、私達はそれに合わせます――」
冥の言葉を聞いて、なぜだか駅前の光景に目を輝かせるコトリ。もしかすると、庶民の食事というのは逆に新鮮なのかもしれない。
「えーっと、セバスチャン。あれ、なんでしたっけ? あなたが買ってきてくれた、牛と玉ねぎを甘いお出汁で煮付けたものを、遠慮することなくご飯の上にぶちまけた……」
「あー、牛丼か。あれな、そこに生卵を落としてな、ぐちゃぐちゃにかき混ぜたところに、紅生姜をふんだんに乗せて食うと美味いんだよ。よっぽど気に入ったんだなぁ」
鯖洲の言葉を聞いて「それですわ、それ! それを食べに参りましょう!」と、明らかにご機嫌になるコトリ。ついさっきまで殺人事件の話をしていたというのに、切り替えられるのが羨ましい。
「ならば、あちらに店舗がいくつかございます。人によっては店舗にさえこだわりがあるのですが、いかがいたしましょう?」
冥の案内を受け、本気でしばらく悩んだ様子のコトリ。ようやくひとつのお店をチョイスした。そして、コトリは鯖洲の背中に隠れるかのように入店。少し大きめのテーブル席を作ってもらって全員が着席した。珍しいのか、コトリは辺りをキョロキョロと見回している。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
幸せな人生を目指して
える
ファンタジー
不慮の事故にあいその生涯を終え異世界に転生したエルシア。
十八歳という若さで死んでしまった前世を持つ彼女は今度こそ幸せな人生を送ろうと努力する。
精霊や魔法ありの異世界ファンタジー。
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【その断罪、待っていました!】
私は侯爵令嬢オフィーリア・ドヌーブ。王太子アシル・バスチエの婚約者だった。良い国母になる為、日々努力を怠らなかった。そんなある日、聖女を名乗る女性ソネットが現れ、あっという間にアシルは彼女に夢中になってしまう。妃の座を奪われることに危機感を抱いた私は、ありとあらゆる手段でソネットを陥れようとして失敗。逆に罰として侯爵家から除籍され、辺境の地へ幾人かの使用人達と共に追放されてしまう。追放先の村での暮らしは不便だったが、人々は皆親切だった。けれど元侯爵令嬢というプライドから最後まで私は素直になれなかった。そんな自分に後悔しながら長い時を孤独に過ごしていたある日。不思議な懐中時計の力によって、何故か断罪の真っ最中に時が巻き戻っていた。聖女への嫌がらせは無かったことに出来ない。それなら今世はおとなしく追放されて和やかに過ごそう。今度こそ幸せに暮らす為に——
※他サイトでも投稿中
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる