ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

16

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【2】

 千早を迎えに駅へと到着した頃には、正午を少し回っていた。寺山が駅の駐車場へとリムジンを乗り入れる。このような公共の場所であっても、リムジンサイズの車を停める場所が用意されているのだから、世の中というのは案外気が利いているのかもしれない。

「それでは、昼食をとって参ります。おそらく、人殺しと一緒にいたくない方が大多数を占めているでしょうから」

 皮肉混じりに言うと、寺山は頭を下げ、さっさと駐車場の外へと消えてしまった。その後ろ姿を眺めつつ、誰かの腹の虫が鳴ったのを聞いた。

「まだ、彼女が到着するまで時間がありますから、どこかで昼食でもいかがですか?」

 世のお嬢様がどんなものをお召し上がりになるのかは知らないが、幸いなことに駅前には飲食店が多く並んでいる。さすがに高級レストランなどはないが、昼を済ますには申し分ない。

「そうだな。食える内に食っておかねぇと、確実に食いそびれるからな」

 職業柄、食事をとり損ねることは多く、それには慣れている斑目。一応、お嬢様含む女性陣へと気を遣ったつもりだった。

「お嬢様、お口には合わないかもしれませんが、この辺りには飲食店も多くございます。ご希望のものがあれば、私達はそれに合わせます――」

 冥の言葉を聞いて、なぜだか駅前の光景に目を輝かせるコトリ。もしかすると、庶民の食事というのは逆に新鮮なのかもしれない。

「えーっと、セバスチャン。あれ、なんでしたっけ? あなたが買ってきてくれた、牛と玉ねぎを甘いお出汁で煮付けたものを、遠慮することなくご飯の上にぶちまけた……」

「あー、牛丼か。あれな、そこに生卵を落としてな、ぐちゃぐちゃにかき混ぜたところに、紅生姜をふんだんに乗せて食うと美味いんだよ。よっぽど気に入ったんだなぁ」

 鯖洲の言葉を聞いて「それですわ、それ! それを食べに参りましょう!」と、明らかにご機嫌になるコトリ。ついさっきまで殺人事件の話をしていたというのに、切り替えられるのが羨ましい。

「ならば、あちらに店舗がいくつかございます。人によっては店舗にさえこだわりがあるのですが、いかがいたしましょう?」

 冥の案内を受け、本気でしばらく悩んだ様子のコトリ。ようやくひとつのお店をチョイスした。そして、コトリは鯖洲の背中に隠れるかのように入店。少し大きめのテーブル席を作ってもらって全員が着席した。珍しいのか、コトリは辺りをキョロキョロと見回している。
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