ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 いまだにコトリと固い握手を交わしたままの千早。戸惑いを隠せないまま「あ、よろしくお願いします。猫屋敷です」と冥に返す。

「お嬢、それくらいにしておいてやれよ。困ってんだろうが」

 見ていてさすがにしつこいと思ったのか、鯖洲がコトリに注意を促す。ようやく千早から離れたコトリは、改めて千早の顔を見てニコリと笑った。単純に人との距離が近いだけなのかもしれないが、初対面で之をやられたら、ちょっとしたホラーである。

「や、なんとかたどり着けましたね。猫屋敷さん」

 見知らぬ顔の中に唯一ある見知った顔。斑目の言葉に千早は安堵の溜め息らしきものを漏らした。

「こういった大きな駅は初めてで――」

 長距離の移動のせいなのか、妙に気疲れした様子の千早。今日はもう休ませてやりたいくらいだ。

「改めまして猫屋敷千早と申します。えっと、一里之君とは同じ学校の同級生です」

 コトリから解放され、ようやく一息つくことができたのだろう。周囲を見回し、千早は頭を下げた。会釈を返したのは冥だけだった。格好だけを考えるに、冥もかなりぶっ飛んではいるのだが、この中では唯一の常識人に見える。

「それで、早速ですが事件の概要を詳しく。資料だけでは分からないことも多いですから、実際に現場を見ることが可能であれば――」

 到着するなりスイッチを入れた千早。どうやら、先に事情を伝えてやらねばならないようだ。

「あの、猫屋敷さん。実はですね」

 千早にだけ聞こえるように、やや声のボリュームを絞って事情を簡単に話す。

「……え? 犯人だと思われる方も同行しているのですか? なぜ、そんなことに」

 まさか犯人だと思われる人間が同行しているとは思っていなかったのであろう。これに関しては、斑目も奇妙なことだとは思う。それだけ寺山に自信があるのか、それとも寺山は事件に無関係なのか。

「話すと長くなるんですがねぇ」

 それでも簡潔に千早へと伝える。寺山はコトリお抱えの運転手であること。決定打がないため、それを認めずに、仕事として同行しているということ。犯人を追い詰めきれないことは予測できていたが、しかし犯人とおぼしき人物が同行しているとは予測できなかったに違いない。

「というわけで、そろそろ車で待っていそうなんですよねぇ。その、疑わしき人物が」
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