ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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「それは分かりませんわね――」

 冥の言葉にコトリが答えると、なかば反射的に「いいえ、おそらくですが」と口を挟む千早。一同の視線が自分に集まっていることに気づいたのか、慌てて「あ、今はまだ結論を出すのは早いですね」と付け足す。

「前回の事件は、そういう成り行きがあって、最初は誘拐事件として扱われた。だが、今回はどうだった? どうして誘拐事件として扱われたんだ?」

 鯖洲という男。もしかすると他人の話をあまり聞かないタイプなのであろうか。それとも、事件そのものに関心がないのか。

「今回の事件に関しては、身代金の要求がありましたわ。結局のところ、身代金を受け渡す前に、残念な結果になってしまったのだけど」

 誘拐という犯罪ほど、悪質で憎むべき犯罪もないだろう。犯人の目的はあくまでも金であり、誘拐する対象や、身代金を要求する相手に恨みなどはない。ただ、金を持っている家の子だからと誘拐され、最悪の場合は殺害される。これほど身勝手で自己中心的な犯罪はないと思う。

「なんだか、身代金ってはポーズだけなんだよなぁ。前もちょっと話したけどよ、今回に関しては、どう考えたって社長の殺害が目的だったとしか思えねぇ」

 前回の事件は犯人からの要求もなく、しかし辛うじて誘拐事件として扱われた。今回は犯人からの要求があり、誘拐事件として扱われている。この双方の事件で共通しているのは、どちらも被害者が死亡しており、身代金の受け渡しが実現していないということだ。

「まぁ、そう考えても構わないでしょうね。ただ、前回の事件に関しては、ちょっとだけ込み入った事情がありそうですが」

 車は動いているのか止まっているのか分からないくらい静かだ。不安になって窓にかけられていたカーテンをめくってみる。外の景色が過ぎ去っていくのを見て安堵した。ふと、まるで斑目が外を確認するのを待っていたかのごとく、車速がゆっくりになった。

「じきに到着いたします」

 運転席と後部座席を隔てる仕切り板が開くと、相変わらず冷静な口調が飛んできた。犯人扱いをされてしまっているにも関わらず、仕事として調査に同行している寺山。果たしてどんな気持ちなのであろうか。

「思ったよりも近かったみたいですわね。近所の方が昔のことを覚えてくれているといいけど」

 コトリの言葉と同時に、外から寺山がドアを開けた。ドアの向こうに広がる景色は、どこぞの住宅街だ。
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